グローバルCOE プログラム「境界研究の拠点形成:スラブ・ユーラシアと世界」は、スラブ・ユーラシア地域に関わる研究成果を様々な角度から、本ブースを通じてお伝えして きました。第5期展示では、ロシア・東欧の中でも境界とゆかりの深い作家6名を取り上げます。これらの作家が体験したさまざまな境界や、作品に描かれる境 界への眼差しに ついて、文化・社会・歴史・宗教的背景と照らし合わせながら再考し、文学と境界の関係をさぐります。また、境界が作家たちに迫った言葉の選択という側面に 注目し、言葉から見た新たな作家像を浮かび上がらせます。第5期展示 の第一部では、ヴラジーミル・ナボコフとゲンナジイ・アイギという、二人の作家が取り上 げられています。「境界」というテーマから連想される重要な問題の一つに、「言語の越境」があります。ナボコフとアイギは、複数の言語を用いて創作 を行い、また、複数の言語・文化に精通する作家です。
主な展示物
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ウラジーミル・ナボコフ(1899-1977)は、亡命によって母語ロシア語から英語に乗り換えた作家です。ナボコフのパネルでは、代表作『記憶 よ、語れ』『賜物』『ロリータ』が、ナボコフ自身の手で別の言語へ翻訳され、幾度も書き直されてきたことが示されます。また、ナボコフは、蝶のコレク ター・研究者としても有名で、亡命中、その膨大なコレクションを幾度も失っていました。彼が愛してやまなかった蝶を実際の標本で目にすることができます。 |
■ バイリンガル作家ナボコフ(.pdf)
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ゲンナジイ・アイギ(1934-2006)も、ロシア語とチュヴァシ語という二つの言語の境界を跨いだ作家です。15歳からチュヴァシ語で、20代
半ばからはロシア語で創作するようになりました。チュヴァシが生んだこの偉大な詩人の詩の手稿(コピー)や、チュヴァシ語文芸誌およびロシア語新聞に掲載
された紹介記事が展示されています。また、アイギがこだわった、ロシア語の「ざらざらした手触り」を、展示ブースに流れる詩の朗読からも感じてください。
また、展示スペースの一角では、アイギが来日した2002年、東京で開かれたプレトーク「ロシア現代詩と音楽」の一部を視聴することができます。 |
■ アイギの言語と表現(.pdf)