第24回地方出版文化功労賞の表彰式(10/22) に岩下拠点リーダーが参加しました
2011/10/24
2011年10月22日、「ブックインとっとり2011」の会場になっている倉吉市立図書館で、第24回地方出版文化功労賞の表彰式が行われました。この賞は1987年に鳥取県で開催された「ブックインとっとり’87・日本の出版文化展」を機に創設されたもので、全国の地方出版社からの出展作品を対象に、展覧し顕彰するものです。約650点もの出展作品から、『日本の国境・いかにこの「呪縛」を解くか』が功労賞に選ばれたのはすでにお伝えしたとおりですが、執筆者を代表して表彰式に参加しました。
小谷寛実行委員長の挨拶につづき、齋藤明彦審査委員長が選評について述べられましたが、とくに本書の選考にとってチャレンジであったのが、(章によってばらつきのある)論文集であったことと(地方とはいえ小さな出版社とは言えない)大学出版会から出されたということであったそうです。しかし、にもかかわらず、本書は賞に値するという判断がなされたとのことです(詳しくは下段の「選考理由」をご覧ください)。
もともと本書の刊行は大手出版社からなされるはずでしたが、「論文集であること」を理由に断られたため、北大出版会に持ち込まれました。その意味で本書を刊行した北大出版会、その意義を見いだした選考委員会に心よりお礼を申し上げたいと思います。
受賞に際し、「国境はナショナリズムを信じない」というテーマでスピーチを行い、そのなかでDVD「知られざる北の国境:樺太と千島」の一部を会場で披露しました。120名ほどの聴衆にも境界研究の醍醐味を楽しんでいただけたと思います。なお副賞として10万円が贈られましたが、これは与那国と対馬のエトピリカ文庫に「フィフティ・フィフティ」で寄付されます。 (岩下明裕)
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第24回地方出版文化功労賞は、昨年の10月22日から10月27日、鳥取市鳥取県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2010」に出品展示された全国の地方出版物(対象約650点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票により12点を最終候補作として挙げ、12名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査し、本年6月25日の最終審査会において決定した。
<選考理由>
タイムリーな本であるが、それを狙った類のものとはまったく違う。
日本の中で国境を意識せざるを得ない3箇所(北方、対馬・竹島、八重山・尖閣)と、そうでない特殊な1箇所(小笠原)を軸に歴史、位置づけ、意識、振興、政策などさまざまな角度から国境に関した考察と情報提供をしている。
論文集的なものであるので若干全体としてのまとまりが弱かったり難しく感じさせるところもあるが、このテーマに関しては偏りや扇動を感じさせる本が多い中で冷静に整理・提案されている厚みのある本である。
したがってサブタイトルの「いかにこの『呪縛』を解くか」に明快な答えを押し付けないで、島嶼国家日本と海国境の特性や、国境地域の国際交流、個別のあるいは連携した「辺境」の活動、スウェーデンとフィンランド間のオーランド諸島問題やロシア・中央アジアの「フィフティ・フィフティ」の考え方による解決例が示される。それが、ともすれば観念的あるいは一方的な主張になりがちな国境についての議論を冷静な分析と議論に導き、また読者の情報・知識が整理されその答えをみずからしっかり考察することを促す。
この1年にここで取り上げられた3箇所で大きな動きがあったことも踏まえ、それが偏狭な意識の高まりに陥らず、よりよい解決を幅広く議論する契機とするためにも今読まれるべき本である。
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関連リンク
受賞記念特別企画「日本の境界:危機と岐路」 DVD上映&座談会(10/10)
小谷寛実行委員長の挨拶につづき、齋藤明彦審査委員長が選評について述べられましたが、とくに本書の選考にとってチャレンジであったのが、(章によってばらつきのある)論文集であったことと(地方とはいえ小さな出版社とは言えない)大学出版会から出されたということであったそうです。しかし、にもかかわらず、本書は賞に値するという判断がなされたとのことです(詳しくは下段の「選考理由」をご覧ください)。
もともと本書の刊行は大手出版社からなされるはずでしたが、「論文集であること」を理由に断られたため、北大出版会に持ち込まれました。その意味で本書を刊行した北大出版会、その意義を見いだした選考委員会に心よりお礼を申し上げたいと思います。
受賞に際し、「国境はナショナリズムを信じない」というテーマでスピーチを行い、そのなかでDVD「知られざる北の国境:樺太と千島」の一部を会場で披露しました。120名ほどの聴衆にも境界研究の醍醐味を楽しんでいただけたと思います。なお副賞として10万円が贈られましたが、これは与那国と対馬のエトピリカ文庫に「フィフティ・フィフティ」で寄付されます。 (岩下明裕)
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第24回地方出版文化功労賞は、昨年の10月22日から10月27日、鳥取市鳥取県立図書館で開かれた「ブックインとっとり2010」に出品展示された全国の地方出版物(対象約650点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票により12点を最終候補作として挙げ、12名の審査員が持ち回りで数カ月にわたって審査し、本年6月25日の最終審査会において決定した。
<選考理由>
タイムリーな本であるが、それを狙った類のものとはまったく違う。
日本の中で国境を意識せざるを得ない3箇所(北方、対馬・竹島、八重山・尖閣)と、そうでない特殊な1箇所(小笠原)を軸に歴史、位置づけ、意識、振興、政策などさまざまな角度から国境に関した考察と情報提供をしている。
論文集的なものであるので若干全体としてのまとまりが弱かったり難しく感じさせるところもあるが、このテーマに関しては偏りや扇動を感じさせる本が多い中で冷静に整理・提案されている厚みのある本である。
したがってサブタイトルの「いかにこの『呪縛』を解くか」に明快な答えを押し付けないで、島嶼国家日本と海国境の特性や、国境地域の国際交流、個別のあるいは連携した「辺境」の活動、スウェーデンとフィンランド間のオーランド諸島問題やロシア・中央アジアの「フィフティ・フィフティ」の考え方による解決例が示される。それが、ともすれば観念的あるいは一方的な主張になりがちな国境についての議論を冷静な分析と議論に導き、また読者の情報・知識が整理されその答えをみずからしっかり考察することを促す。
この1年にここで取り上げられた3箇所で大きな動きがあったことも踏まえ、それが偏狭な意識の高まりに陥らず、よりよい解決を幅広く議論する契機とするためにも今読まれるべき本である。
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