リスボンでヨーロッパの国境会議が開催
2012/09/18
2012年9月12日から15日にかけて、リスボンでABS(Association for Borderlands Studies)のヨーロッパ会議が開催されました。ABSはもともと米国西海岸が発祥の地で年次集会は米国で開催されているのですが、近年、ヨーロッパの境界研究者たちがABS会議のヨーロッパ・バージョンを積極的に開催しており、前回のギリシャに次ぐ開催となりました。
約100名の参加者はアンジ・パッシ、イルカ・リッカネンらのフィンランド勢を筆頭に、デンマーク、フランス、オランダらの研究者が多数でしたが、ディヴィド・ニューマンらの中東勢、エマニュエル・ブルネイ・ジェイなど北米勢も参加し、本家ABS年次集会よりははるかに広がりと深みのある会合となりました。BRIT福岡・釜山大会の2ヶ月前ということもあり、開催の挨拶では、BRITアジア開催の意義が主催者から何度も強調されていました。この会議にはヨーロッパのBRIT学術委員会の多くが参加していたこと、実際にBRIT福岡・釜山大会にすでに登録している研究者も少なからずいたことで、11月のBRITにむけていい弾みとなる会議でした。
12日の初日は博士課程の学生による報告会として組織され、フィンランドと地元リスボンの若手研究者が多彩なプレゼンテーションを行い、シニアの専門家からコメントを受ける刺激的な機会となっていました。13日と14日の会議本体が終了した後、15日はリスボン大の主宰者の手配により、スペイン国境地域へフィールドワークにでかけました。早朝から12時間をかけての緻密なフィールドワークから学ぶものは多く、とくに両国のEU加盟でいわば「塩漬け」にされたオリベンサやその境界問題の存在(ポルトガルはいまだこの地域を正式なポルトガル・スペイン国境としては受け入れていない)は、他のヨーロッパからの参加者に大きな刺激を与えていました(写真は、ポルトガルからオリベンサに向かう「国境」の橋を視察する専門家たち)
なおアジアからの参加者は、中国とロシアが分け合って解決した島の昨今の状況(ヘイシャーズとアバガイト:日本語版を研究ノートとして「境界研究」次号に収録予定)を報告した岩下一人でしたが、これが中東からのイスラエル・パレスチナ境界問題の報告と共鳴することで、「平和」な境界問題に関心が集中しがちなヨーロッパの研究者にインパクトを与えることができたようです。
次回は、2014年夏に予定されている、ABS第1回世界大会(フィンランドとロシアの共催)がおそらくABSヨーロッパ会議を兼ねることになると思われますが、日本を始めアジアからの多数の報告が期待されています。
なお、会議の模様は以下のサイトでスライド再生できます。
http://bordersandborderlands2012.weebly.com/conference-program.html
(岩下明裕)
約100名の参加者はアンジ・パッシ、イルカ・リッカネンらのフィンランド勢を筆頭に、デンマーク、フランス、オランダらの研究者が多数でしたが、ディヴィド・ニューマンらの中東勢、エマニュエル・ブルネイ・ジェイなど北米勢も参加し、本家ABS年次集会よりははるかに広がりと深みのある会合となりました。BRIT福岡・釜山大会の2ヶ月前ということもあり、開催の挨拶では、BRITアジア開催の意義が主催者から何度も強調されていました。この会議にはヨーロッパのBRIT学術委員会の多くが参加していたこと、実際にBRIT福岡・釜山大会にすでに登録している研究者も少なからずいたことで、11月のBRITにむけていい弾みとなる会議でした。
12日の初日は博士課程の学生による報告会として組織され、フィンランドと地元リスボンの若手研究者が多彩なプレゼンテーションを行い、シニアの専門家からコメントを受ける刺激的な機会となっていました。13日と14日の会議本体が終了した後、15日はリスボン大の主宰者の手配により、スペイン国境地域へフィールドワークにでかけました。早朝から12時間をかけての緻密なフィールドワークから学ぶものは多く、とくに両国のEU加盟でいわば「塩漬け」にされたオリベンサやその境界問題の存在(ポルトガルはいまだこの地域を正式なポルトガル・スペイン国境としては受け入れていない)は、他のヨーロッパからの参加者に大きな刺激を与えていました(写真は、ポルトガルからオリベンサに向かう「国境」の橋を視察する専門家たち)
なおアジアからの参加者は、中国とロシアが分け合って解決した島の昨今の状況(ヘイシャーズとアバガイト:日本語版を研究ノートとして「境界研究」次号に収録予定)を報告した岩下一人でしたが、これが中東からのイスラエル・パレスチナ境界問題の報告と共鳴することで、「平和」な境界問題に関心が集中しがちなヨーロッパの研究者にインパクトを与えることができたようです。
次回は、2014年夏に予定されている、ABS第1回世界大会(フィンランドとロシアの共催)がおそらくABSヨーロッパ会議を兼ねることになると思われますが、日本を始めアジアからの多数の報告が期待されています。
なお、会議の模様は以下のサイトでスライド再生できます。
http://bordersandborderlands2012.weebly.com/conference-program.html
(岩下明裕)