対馬・釜山「国境観光」モニターツアーが盛況のうちに終了(12/14, 15)
2013/12/18
2013年12月14日と15日の二日間、福岡から対馬と釜山を一度に訪れる国境観光のモニターツアーが行われました。このモニターツアーは、北海道大学グローバルCOE「境界研究の拠点形成」、九州大学韓国研究センター、および九州経済調査協会が今年度から共同で行っている「対馬・国境観光プロジェクト」の一環として、JIBSN、対馬市、JR九州高速船およびANAの協力のもと、JR九州旅行が企画募集して行われたものです。
韓国と海を接する国境離島・対馬には、現在、年間約20万人もの韓国人観光客が訪れ、島の経済は韓国人観光客から得られる収入に依存せざるを得ない状況となっているとともに、対馬を訪れる日本人観光客が少なすぎることが対馬の最大の課題であるという問題意識が、多くの対馬市民の関心事となっています。他方で、対馬と釜山の間の海域は、日韓で海の境界が画定している数少ない場所であり、国境を越えた交流を行う上で、日本で最も安定した地域のひとつとなっています。そこで、日本人観光客が対馬を縦断しながら島内の観光地を回り、そのまま国境を越えて釜山に渡るという、国内旅行と海外旅行を組み合わせた国境観光(ボーダーツーリズム)の発展可能性を調査するために、今回の1泊2日のモニターツアーを実施しました。福岡と釜山の間ではすでに多くの日本人観光客が海外旅行として行き来する中で、対馬を経由した「国境観光」とするところに、今回の試みの新しさがあります。
今回のツアーには、子供からお年寄りまで31名の方々が参加しました。当初は、主に女性をターゲットとして、神話の島・対馬に数多くあるパワースポットを巡り、釜山では自由行動で買い物や食事を楽しんでもらうことを狙いとしていましたが、最終的に参加者の男女比率は半分ずつとなり、多様な層の方々に参加いただきました。
初日、福岡からのANA始発便で対馬空港に到着した参加者は、その後観光バスに乗り込み、古事記や日本書紀に登場する豊玉姫にゆかりのある鴨居瀬住吉(かもいせすみよし)神社と和多都美(わたつみ)神社、また日本でも有数のリアス式海岸である浅芽(あそう)湾を一望できる烏帽子岳展望台を見学しました。昼食で対馬の魚を使った寿司を堪能したあと、天道信仰ゆえに社殿がなく山全体がご神体となっている天神多久頭魂(あめのかみたくずたま)神社、ツシマヤマネコの保護活動を行っている対馬野生生物保護センターを訪れました。この日は天候にも恵まれ、最後に立ち寄った上対馬の韓国展望台では、釜山の街並みが肉眼でもうっすらと確認でき、参加者からは驚きの声が上がっていました。また、移動中や訪問先でガイドを担当していただいた対馬観光ガイドの会「やんこも」の方によるガイド、さらに対馬野生生物保護センターの担当員によるツシマヤマネコの解説は素晴らしく、参加者は対馬の自然と歴史の魅力を存分に満喫しました。
その後、参加者は、対馬の北の玄関・比田勝港からJR九州高速船・ビートルの最終便に乗り込み、わずか1時間の越境航路を体験しながら釜山に到着しました。2日目は、釜山港での昼過ぎの集合時間まで釜山市内の自由観光となり、中には旅行会社が用意したオプショナルツアーに参加して、チャガルチ市場や免税店で食事や買い物を楽しんだ方々もおられました。帰路は再びJR九州高速船のビートルに乗り、3時間の船旅を経て夕方に博多港で解散となりました。
参加者の反応は概ね良好で、関係者の予想を上回るものになりました。中には、「対馬の滞在時間が少なかった。もっと対馬を見たかった」、「対馬で1泊するツアーがあれば是非参加したい」、「また対馬と釜山をあわせて訪れたい」といった声も聞かれました。一方で、「対馬のお土産を買える場所が少なかった」、「(対馬で)途中で食べ歩きができる機会がほしかった」という意見もあり、観光地としての魅力を上げていくための課題も浮き彫りになりました。さらには、対馬観光に大変満足しつつも、「対馬に来るのは一度で十分かな」といった声もいくつか聞かれ、対馬を訪れる観光客が増えようになれば、今度はリピーターをどのように確保するかが課題となるでしょう。ただ、このような問題はありつつも、今回の参加者の満足度をみると、対馬と釜山を一度に訪れる国境観光の可能性を十分に感じることができたモニターツアーでした。
今回は実験的な試みということで、参加者全員に詳細なアンケートおよびヒアリング調査にご協力いただきましたが、その集計および分析の結果は、2月中旬に行われる北海道大学大学院共通授業(境界研究)などにおいて報告する予定となっています。(GCOE研究員 花松 泰倫)
韓国と海を接する国境離島・対馬には、現在、年間約20万人もの韓国人観光客が訪れ、島の経済は韓国人観光客から得られる収入に依存せざるを得ない状況となっているとともに、対馬を訪れる日本人観光客が少なすぎることが対馬の最大の課題であるという問題意識が、多くの対馬市民の関心事となっています。他方で、対馬と釜山の間の海域は、日韓で海の境界が画定している数少ない場所であり、国境を越えた交流を行う上で、日本で最も安定した地域のひとつとなっています。そこで、日本人観光客が対馬を縦断しながら島内の観光地を回り、そのまま国境を越えて釜山に渡るという、国内旅行と海外旅行を組み合わせた国境観光(ボーダーツーリズム)の発展可能性を調査するために、今回の1泊2日のモニターツアーを実施しました。福岡と釜山の間ではすでに多くの日本人観光客が海外旅行として行き来する中で、対馬を経由した「国境観光」とするところに、今回の試みの新しさがあります。
今回のツアーには、子供からお年寄りまで31名の方々が参加しました。当初は、主に女性をターゲットとして、神話の島・対馬に数多くあるパワースポットを巡り、釜山では自由行動で買い物や食事を楽しんでもらうことを狙いとしていましたが、最終的に参加者の男女比率は半分ずつとなり、多様な層の方々に参加いただきました。
初日、福岡からのANA始発便で対馬空港に到着した参加者は、その後観光バスに乗り込み、古事記や日本書紀に登場する豊玉姫にゆかりのある鴨居瀬住吉(かもいせすみよし)神社と和多都美(わたつみ)神社、また日本でも有数のリアス式海岸である浅芽(あそう)湾を一望できる烏帽子岳展望台を見学しました。昼食で対馬の魚を使った寿司を堪能したあと、天道信仰ゆえに社殿がなく山全体がご神体となっている天神多久頭魂(あめのかみたくずたま)神社、ツシマヤマネコの保護活動を行っている対馬野生生物保護センターを訪れました。この日は天候にも恵まれ、最後に立ち寄った上対馬の韓国展望台では、釜山の街並みが肉眼でもうっすらと確認でき、参加者からは驚きの声が上がっていました。また、移動中や訪問先でガイドを担当していただいた対馬観光ガイドの会「やんこも」の方によるガイド、さらに対馬野生生物保護センターの担当員によるツシマヤマネコの解説は素晴らしく、参加者は対馬の自然と歴史の魅力を存分に満喫しました。
その後、参加者は、対馬の北の玄関・比田勝港からJR九州高速船・ビートルの最終便に乗り込み、わずか1時間の越境航路を体験しながら釜山に到着しました。2日目は、釜山港での昼過ぎの集合時間まで釜山市内の自由観光となり、中には旅行会社が用意したオプショナルツアーに参加して、チャガルチ市場や免税店で食事や買い物を楽しんだ方々もおられました。帰路は再びJR九州高速船のビートルに乗り、3時間の船旅を経て夕方に博多港で解散となりました。
参加者の反応は概ね良好で、関係者の予想を上回るものになりました。中には、「対馬の滞在時間が少なかった。もっと対馬を見たかった」、「対馬で1泊するツアーがあれば是非参加したい」、「また対馬と釜山をあわせて訪れたい」といった声も聞かれました。一方で、「対馬のお土産を買える場所が少なかった」、「(対馬で)途中で食べ歩きができる機会がほしかった」という意見もあり、観光地としての魅力を上げていくための課題も浮き彫りになりました。さらには、対馬観光に大変満足しつつも、「対馬に来るのは一度で十分かな」といった声もいくつか聞かれ、対馬を訪れる観光客が増えようになれば、今度はリピーターをどのように確保するかが課題となるでしょう。ただ、このような問題はありつつも、今回の参加者の満足度をみると、対馬と釜山を一度に訪れる国境観光の可能性を十分に感じることができたモニターツアーでした。
今回は実験的な試みということで、参加者全員に詳細なアンケートおよびヒアリング調査にご協力いただきましたが、その集計および分析の結果は、2月中旬に行われる北海道大学大学院共通授業(境界研究)などにおいて報告する予定となっています。(GCOE研究員 花松 泰倫)