ファイナル・シンポジウム(2/13-15)盛況裏に閉幕
2014/02/16
2014年2月13-15日の3日間、北海道大学スラブ研究センター大会議室において本ブログラム主催による最後のシンポジウムが開催されました。
第一日目(13日)は、冒頭で本ブログラムのリーダーである岩下明裕が、境界研究をスラブ研究センターで推進する意義について述べた後、本プログラム監修DVD「知られざる国境の島・五島」が上映されました。講義では、まず高田喜博氏(HIECC:公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター)が、地方におけるシンクタンクの役割について述べ、日本の境界自治体に対してコーディネーター的役割を果たせる、と指摘する一方で、各境界自治体はこれまで互いに興味がなく、かつ予算の取り合いのライバルであり、今後は互いに共通の課題を見出して中央に声を上げ、行政以外のキーパーソンを見出す必要性があることを訴えました。午後の講義では、大西広之氏が、入管の問題を、法律面と現場の運用の両面から解説しました。ボーダーツーリズムの観点からは、国家財政の制約から入国審査を境界自治体に配置できず、外国人観光客を直接受けれることができない、という問題点が指摘されました。次いで山上博信氏が、日本の境界の移動に翻弄される島嶼地域の暮らしの現状が紹介されました。いずれの報告も、予算の制約下で、どのように離島・境界地帯の発展を設計し、国境線を管理するのか、という問題を考えさせられるものでした。
二日目(14日)は、境界地域の自治体関係者による報告がなされました。まず、DVDおよび古川浩司氏(JIBSN事業部会長・中京大学)の講義で境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)の活動が紹介しました。古川氏が、境界地域には、安全保障の最前線と国際協力のゲートという両面性があることを指摘した後、与那国町、竹富町、対馬市、五島市、稚内市、根室市の自治体関係者が、自らの取り組みと、中央からの支援の必要性を訴える報告を行いました。いずれの自治体も、かつては境界の位置を利した黄金時代を記憶しているものの、今日では地場産業の衰退、高齢化・人口流失という問題を抱えており、地場産業の育成に加え、境界という位置を地域発展に生かしたい意向を持っています。
三日目(15日)は、二日目と対応する形で、上記自治体(与那国、根室、対馬)に調査・インターン活動に関わった若手研究者による報告がなされました。いずれも、第三者の冷徹な眼による現状認識に基づいた報告で、中央に依存しない発展を考えた場合に、境界地域の官・民両者に新たな取り組みが必要であることを強く示唆するものでした。午後からは、本プログラムのアカデミックな成果に焦点が当てられました。まず本プログラム研究員によるラウンドテーブルでは、「境界」が自らの地域研究に与えた意味が強調される一方で、ユーラシアの境界事象・研究成果を世界の境界研究ネットワークに発信する場合、北米を中心とした境界研究の手法・理論の習得が必要である、との反省点が出されました。次いで、野町素己 (スラブ研究センター)、望月恒子(文学研究科)、山崎 幸治(アイヌ先住民研センター)、樽本 英樹(文学研究科)、望月哲男(スラブ研究センター)各推進員による、自らの「境界研究」の成果の一端が披露されました。
最後に、岩下拠点リーダーが報告を行い、本プログラムの成果を世界の境界研究の潮流の中で位置付け、特に海の境界の重要性や、ポスト・コロニアルとは一線を画するユーラシアの境界事象の紹介で意義があったと総括しました。そして今後の研究課題として、国境画定そのものの研究、境界のマネージメント技術の研究、我が国にあるユーラシア地域研究系のセンターとのコラボレーションによる研究推進、境界地域の意識や研究成果を市民社会、政治に届けるためのボーダージャーナリズムの確立を挙げ、UBRJ(北海道大学スラブ研究センター・境界研究ユニット)やJIBSNの今後の意義が強調されました。
5年に渡る本プログラムのファイナルシンポジウムの締めにあたり、グローバルCOEプログラムの立ち上げ・運営を強くサポートした佐伯浩前北大総長が挨拶に立ち、閉幕となりました。
三日間を通じた述べ参加人数は179名に上りました。本シンポジウムは、大学院共通授業科目を兼ねており、各研究科の院生がストレートな質問を報告者に浴びせ、活発な議論が交わされたことが特筆されます。
第一日目(13日)は、冒頭で本ブログラムのリーダーである岩下明裕が、境界研究をスラブ研究センターで推進する意義について述べた後、本プログラム監修DVD「知られざる国境の島・五島」が上映されました。講義では、まず高田喜博氏(HIECC:公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター)が、地方におけるシンクタンクの役割について述べ、日本の境界自治体に対してコーディネーター的役割を果たせる、と指摘する一方で、各境界自治体はこれまで互いに興味がなく、かつ予算の取り合いのライバルであり、今後は互いに共通の課題を見出して中央に声を上げ、行政以外のキーパーソンを見出す必要性があることを訴えました。午後の講義では、大西広之氏が、入管の問題を、法律面と現場の運用の両面から解説しました。ボーダーツーリズムの観点からは、国家財政の制約から入国審査を境界自治体に配置できず、外国人観光客を直接受けれることができない、という問題点が指摘されました。次いで山上博信氏が、日本の境界の移動に翻弄される島嶼地域の暮らしの現状が紹介されました。いずれの報告も、予算の制約下で、どのように離島・境界地帯の発展を設計し、国境線を管理するのか、という問題を考えさせられるものでした。
二日目(14日)は、境界地域の自治体関係者による報告がなされました。まず、DVDおよび古川浩司氏(JIBSN事業部会長・中京大学)の講義で境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)の活動が紹介しました。古川氏が、境界地域には、安全保障の最前線と国際協力のゲートという両面性があることを指摘した後、与那国町、竹富町、対馬市、五島市、稚内市、根室市の自治体関係者が、自らの取り組みと、中央からの支援の必要性を訴える報告を行いました。いずれの自治体も、かつては境界の位置を利した黄金時代を記憶しているものの、今日では地場産業の衰退、高齢化・人口流失という問題を抱えており、地場産業の育成に加え、境界という位置を地域発展に生かしたい意向を持っています。
三日目(15日)は、二日目と対応する形で、上記自治体(与那国、根室、対馬)に調査・インターン活動に関わった若手研究者による報告がなされました。いずれも、第三者の冷徹な眼による現状認識に基づいた報告で、中央に依存しない発展を考えた場合に、境界地域の官・民両者に新たな取り組みが必要であることを強く示唆するものでした。午後からは、本プログラムのアカデミックな成果に焦点が当てられました。まず本プログラム研究員によるラウンドテーブルでは、「境界」が自らの地域研究に与えた意味が強調される一方で、ユーラシアの境界事象・研究成果を世界の境界研究ネットワークに発信する場合、北米を中心とした境界研究の手法・理論の習得が必要である、との反省点が出されました。次いで、野町素己 (スラブ研究センター)、望月恒子(文学研究科)、山崎 幸治(アイヌ先住民研センター)、樽本 英樹(文学研究科)、望月哲男(スラブ研究センター)各推進員による、自らの「境界研究」の成果の一端が披露されました。
最後に、岩下拠点リーダーが報告を行い、本プログラムの成果を世界の境界研究の潮流の中で位置付け、特に海の境界の重要性や、ポスト・コロニアルとは一線を画するユーラシアの境界事象の紹介で意義があったと総括しました。そして今後の研究課題として、国境画定そのものの研究、境界のマネージメント技術の研究、我が国にあるユーラシア地域研究系のセンターとのコラボレーションによる研究推進、境界地域の意識や研究成果を市民社会、政治に届けるためのボーダージャーナリズムの確立を挙げ、UBRJ(北海道大学スラブ研究センター・境界研究ユニット)やJIBSNの今後の意義が強調されました。
5年に渡る本プログラムのファイナルシンポジウムの締めにあたり、グローバルCOEプログラムの立ち上げ・運営を強くサポートした佐伯浩前北大総長が挨拶に立ち、閉幕となりました。
三日間を通じた述べ参加人数は179名に上りました。本シンポジウムは、大学院共通授業科目を兼ねており、各研究科の院生がストレートな質問を報告者に浴びせ、活発な議論が交わされたことが特筆されます。