本プログラムの特徴
国際標準のなかでの位置づけ
世界の境界研究(ボーダースタディーズ)のコミュニティのなかで「空白」となっているユーラシア及び東アジアにその拠点を形成し、関連研究を組織し て、ネットワーク連結のハブの役割も果たします。この拠点形成を梃子にして、個々に進められていた日本全国の当該地域の境界研究を集約し、当該研究に関す る学会「境界ネットワーク・JAPAN(仮称)」を創設して、日本における各研究を国際的な標準のなかで位置づけて発信を行います。学会誌に育てることを 目的とした「Border Studies」(英文)と「境界研究」(和文)を刊行し、ユーラシア・東アジアのボーダースタディーズを支援し、統合をはかります。最終的にはユーラシ アの拠点として自らを確立し、ABS、IBRU、BRITとなどの世界のボーダースタディーズのコミュニティと連携を強め、世界のボーダースタディーズのネットワークを構築し、ボーダースタディーズの新たな学問的研究領域としての確立を目指します。
比較の視点
本GCOEプログラムの中心である北海道大学スラブ研究センターは、スラブ・ユーラシア地域を中心としながらも、旧来の地域研究の地域間分業を克服
する方法論や内外研究者ネットワークを構築しており、その研究インフラの高さは評価を受けています。これに文学研究科、公共政策学連携研究部などの北大文
系の総力を結集し、スラブ・ユーラシア地域外との比較、これを跨ぐ広域分析の導入、そして地域における実態研究を越えた表象研究を推進することが可能とな
ります。この結果、単なるフィールドワークの集積や、スラブ・ユーラシア対象の地域研究ではない、理論総合的な境界研究の創出が可能となります。
表象研究の構成要素である帝国論、跨境(トランス・ボーダー)論、空間表象論などが、これまで分断されてきた専門地域別の研究者や、学問の諸ディシプリン間の垣根を低め、交流を活発化することで飛躍的に新しい知見をもたらすことが期待できます。
若手研究者の育成・教育
北海道大学は4つの基本理念、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げていますが、本プログラムが行う教育は、この 建学の精神を現代の要請に則して実現するものです。日本におけるボーダースタディーズを推進する過程で、ボーダースタディーズに関わる若手研究者を国際シ ンポジウムや各種セミナーのなかへ巻き込み、フィールドワークや海外での活動を奨励することで、国際性を涵養する教育を行います。北海道大学の研究・教 育・組織をそれぞれ担当する3人の副学長と6人のコア・メンバー(事業推進者)の指揮のもと、人文・社会系研究科を横断する境界研究の教育プログラムをた ちあげ、サーティフィケート(修了証)を発行します。そこでは英語の科目を展開し、世界の若手研究者が本拠点を通じて、ユーラシア・東アジアのボーダース タディーズを学ぶことのできる機能も担います。
社会への還元
北海道大学の基本理念の一つ、「実学の重視」に則り、知見の社会還元を行います。内外の地域研究者や各種シンクタンクのボーダースタディーズの知見の総力 を結集して、アカデミアを越える貢献、つまり、紛争地域の平和・安定・発展への貢献を行います。内外の関係機関に対する政策的提言づくりや、ワシントンな ど政策決定のプロセスに対するアドボカシーなども行います。また、北海道大学総合博物館に常設コーナーを設置するとともに、リアルタイムに発信されるホー ムページを通じて、広く境界研究にかかわる発信として活用し、成果を広く社会に開放します。