スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年冬号 No.112 index
12 月5日(水)から7日(金)まで、 スラブ研究センター冬期国際シン ポジウム「アジア・ロシア:地域 的・国際的文脈の中の帝国権力」が、 センター大会議室で開かれました。 これは、21 世紀COE プログラム 「スラブ・ユーラシア学の構築」(代 表:家田修)が主催したものです。 また、このシンポジウムの内容は センターが来年度申請予定の新学 術領域研究「ユーラシア地域大国 の比較研究」に関連しているため、 学内で配分された重点配分経費の 一部も利用しました。
第4セッションの様子
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過去10 年あまり、ロシア帝国の東方支配に関する研究は世界的に隆盛を見せ、ロシアの多 民族性・多宗教性、内政と外政の関係、ロシア人と非ロシア人の相互認識などについて、豊 かな成果が出されてきました。21 世紀の世界秩序を考える上で「帝 国」は一つのキーワードとなって いますが、異なる宗教・文化を持 つ人々の共存や、強大な権力のも とでのマイノリティの生存戦略と いった今日的な問題を考えるため にも、ロシア帝国の歴史はさまざ まな思考材料を提供してくれます。
議論に熱心に聞き入る参加者たち
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今回のシンポジウムでは、「比較 帝国論」、「ロシアの拡大と東方政策 の変容」、「アジア・ロシアにおける 帝国地理と行政」、「ロシア帝国とム スリム・ネットワーク:競争か協力 か」、「北東アジアでのロシアの戦略と策略」、「ロシア統治下の中央アジア社会の変化」、「民族 運動・革命運動の場としてのアジア・ロシア」という7つのセッションを設け、ロシア帝国期 の中央アジア、シベリア、ヴォルガ・ウラルの歴史を多角的に議論しました。話題は清朝を含 む東アジアや、イランとオスマン帝国を含む西アジアにも広がり、センターが21 世紀COE お よび今後のプロジェクトの主軸としている比較研究・跨境的研究の方向性を明確に打ち出しま した。
報告者は19 人で、国籍別では日本7名、ロシア5名、米国4名、カザフスタン2名、ドイツ 1名でした。また特別企画として、アクルベク・カマルディノフ駐日カザフスタン大使の講演 もおこなわれました。
参加者総数は90 名弱で、現状分析をテーマとするシンポジウムに比べると少なめでしたが、 歴史家同士の密度の高い議論が展開できました。外国人報告者には近年のロシア帝国史研究 をリードしてきた研究者が多く含まれ、他方日本人報告者は中央ユーラシア研究の若手を中 心とする構成でしたが、多言語史料を駆使した日本の研究水準の高さに、外国人研究者から も賞賛の声が寄せられました