スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年夏号 No.114 index
6月19 日に、「北海道とロシア極 東地域の持続可能な開発に向けた 環境フォーラム」が、北海道大学、 北海道、北海道経済連合会、北海 道開発局、北海道新聞社の主催で おこなわれました。会場は、北海 道が札幌ドームで開催した「環境 総合展2008」の一角をお借りしま した。事前に、北海道新聞にも広 告を掲載していただきましたので、 定員100 名の出席者のうち、70 名 が学外からの出席者でした。
意見交換のようす
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このフォーラムでは、ロシア極 東(沿海地方、ハバロフスク地方、 サハリン州)と北海道から、自然科学と社会科学の研究者に加え、環境行政担当者が結集して、 オホーツク海とその沿岸の環境について現状を確認し、今後の対策のための意見交換をおこ ないました。フォーラムは二部から成り、セッション1 では、自然科学者が、アムール川の 汚染、温暖化の影響を受けるオホーツク海の循環の変化、海洋資源、メタンハイドレードに ついて報告しました。アムール川の汚染については、ハバロフスクの水・生態学研究所から、 リュボフィ・コンドラチェワ教授をお招きしました。セッション2 では、上記のロシア極東 地域から行政官各1 名、北海道庁から1 名をお招きし、行政と開発の立場から議論を進めま した。社会科学者の立場としては、スラブ研究センターの劉旭氏(院生)が、極東の石油パ イプライン建設に関わる環境問題について報告しました。
会場のようす
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今回のフォーラムの意義は、最新の研究成果を持ち寄った研究者と地域の環境問題の実務 に携わる行政官との意見交換ができ、な おかつ、これらの情報を多くの一般の方々 にも共有していただいた点にありました。 とりわけ、日本の研究者の国際的な共同 研究体制は、ロシア側の参加者にも、一 般の方々にも深い印象を与えたようでし た。ハバロフスク地方行政府からの参加 者が、中国の黒龍江省とおこなっている 地域レベルでの行政官・研究者の往来に ついて報告した際には、日本人研究者が 参画する可能性も模索されました。サハ リン州からの参加者は、道の「環境宣言」 が住民への動機付けを含んでいる点に高 い関心を示しました。アムール川の汚染とそのサハリン島に沿った拡散によって、当該地域 の先住民の生活が脅かされていることについては、対応の難しさが、ロシアの行政官の言葉 ににじみ出ていました。
センターは、北海道大学の低温科学研究所と北見工業大学とともに、ロシア極東の研究機 関と連携して、「環オホーツク環境研究ネットワークの構築」に取り組んでいますので、今後 もこのような国際的・学際的な協議が続いていくと思います。しかし、今回のフォーラムでも、 アムール川の汚染とオホーツク海の問題を扱うには中国の参加は不可欠との認識は、一般の 参加者にも共有されていました。ロシア側は、「アムール川の汚染の9 割は、中国の松花江の 問題」と主張していますので、中国を議論に巻き込む別の問題設定を模索することが、今後 の大きな課題です。