スラブ研究センターニュース 季刊 2008 年夏号 No.114 index
6 月21 日(土)、東京大学駒場キャンパスにて上記シンポジウムが開催された。日本での スロヴェニア関係のシンポジウムは、2000 年に開催されたフランツ・プレシェレン生誕200 年記念シンポジウム以来、2 回目である。今回のシンポジウムを組織されたのは、前回同様、 柴宜弘氏(東京大)、山本真司氏(東京外国語大)及びイェリサヴァ・ドボウシェク=セスナ 氏(東京外国語大)である。
まだ日本人にあまり知られていない小国スロヴェニア、しかもさらに馴染みのないトゥルー バル(しかしスラヴィストには馴染みある名である)の記念ということもあり、参加者は発 表者10 人、聴衆40 人前後と比較的少数ではあったが、日本人研究者とスロヴェニア人研究 者各5 名による熱のこもった発表、旧ユーゴスラ ヴィアや他の東欧諸国に関心を持つ聴衆も参加し た質疑応答が活発におこなわれた。尚、会場には 旧ユーゴスラヴィアを代表する歌手ヤドランカさ んの姿もあった。
研究発表のようす
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研究発表は3 部から構成されていた。第1部の テーマはトゥルーバルを巡る歴史と言語の問題が 中心となり、他に日本の隠れキリシタンとスロ ヴェニア人プロテスタントの比較研究、スロヴェ ニア語と日本語の文語形成史の諸問題についての 報告があった。第2 部は、日本におけるスロヴェ ニア語教育史とその現状、スロヴェニア言語学史、スロヴェニアと俳句、新スロヴェニア芸 術運動について発表された。第3 部はスロヴェニアとEU の歴史と現状についての議論がな された。研究発表の後は、柴氏を中心にしたパネルディスカッションでシンポジウムは締め くくられた(当日のプログラムはhttp://www.desk.c.u-tokyo.ac.jp/j/d_080621.html を参照さ れたい)。
上述の発表テーマからもわかるように、このシンポジウムは多様な研究分野で活躍する研 究者が「スロヴェニア」という共通テーマで会し、お互いの知識と親交を深める貴重な機会 であった。また、駐日スロヴェニア大使もシンポジウムに出席され、柴氏からは東京大学とリュ ブリャナ大学の学術協定締結が報告されるなど、日本とスロヴェニアの友好にとっても実に 意義深い1 日となった。
余談ではあるが、組織者の一人であるセスナ先生は、私が駒場の学生だったときに、初め てスロヴェニア語の手ほどきをして下さった方である。先生は今回のご発表の中で私のこと を何回か言及され、また私の発表の時には、自分の教え子として会場に紹介して下さった。 シンポジウム後には「これからもスロヴェニア語を続けるように」とトゥルーバルの本を渡 された。学生の時分にはセスナ先生とシンポジウムでご一緒する日が来るとは夢にも思わな かったが、出来の悪い教え子ほど先生の記憶に残り、また可愛がられるものだということを 実感した日であった。