スラブ研究センターニュース 季刊 2009 年夏号 No.118 index
夏期国際シンポジウムの翌日、2009年7月11日(土)に、センター大会議室で新学術領域研究「ユーラシア地域大国の比較研究」の第2回全体集会 が開かれました。プログラムは以下の通りです。
第1セッションでは、この領域研究において班を超えた共同研究のテーマの一つとしている、ジェンダーの問題を取り上げました。ジェンダーは従来スラブ研究 センターが十分に研究してこなかったテーマの一つで、これを大きな研究会のテーマとしたのは今回が初めてだと思われます。
ジェンダー理解には地域差があると同時に、国家の表象やナショナリズムにも関係する問題であり、比較研究のテーマとして適しています。このセッションで は、インド、中国、ロシアの例に則した報告に対し、東欧研究者からのコメントを聞くという形をとりました。いずれの報告も、ヴィジュアル資料や小説からの 引用をふんだんに使いながら、国家が女性として表象される場合と男性的な要素によって表象される場合、西洋からのまなざしが東洋の女性解放に働きかける場 合と、「神秘的」な東洋女性に対する欲望として作用する場合など、さまざまなケースを論じました。また、職業面での女性の地位向上が進んだソ連や中国にお いて、西洋フェミニズム的な意味での女性の権利よりは、職業と家庭の二重負担や男女の人間的な関係の構築が問題となっていることが指摘されました。全体と して、ジェンダーがそれ自体重要であると同時に、帝国権力やオリエンタリズムなどさまざまな問題を掘り下げる際に注目すべきテーマであることが実感されま した。
第2セッションは、歴史認識が帝国の近代化の過程でどのように変容し、現在の地域大国の意識につながっているかという問題意識から企画したものです。イラ ンとオスマン帝国に関する報告に対し、中国研究・中央アジア研究の視点からのコメントを加えることにより、比較の議論を組み立てることを試みました。両報 告とも、19世紀から20世紀初頭の西アジアにおいて、西洋の歴史学・東洋学の影響のもとで、イスラーム的伝統とは異なる新たな歴史叙述が生まれ、古代ペ ルシアの栄光や、オスマン帝国の枠に限定されないトルコ人としての民族性が再発見されたことを強調するものでした。歴史記述の枠組みが王朝史から民族史・ 国民史に移行し、それと連動して自己認識・他者認識が変化するという現象は、他の多くの地域にも共通するものであると同時に、帝国・国家の枠組みと民族の 枠組みのずれ方などによってさまざまなヴァリエーションがあります。現在の地域大国が何をもって誇りの源泉としているかを考えるうえでも、歴史記述・歴史 認識を研究することは不可欠であることが確認されました。