2月19日の全学評議会で図書館長の選考がおこなわれました。候補者となったのは文系4学部長の推薦をうけたセンターの原暉之教授のみで、投票の結果、同教授が選出され、4月1日に就任されました。センターは北大の中で最小の部局であり、また重点領域研究も最終年度を迎え、まさに正念場にあります。ここで、原教授が学内の重職に就かれることは、センター内の研究活動にとってはかなりの痛手となります。しかし、館長就任は原教授の人柄、研究者としての業績、部局長(センター長)および図書館委員としての経験が高く評価されたもので、センターにとって名誉なことであるのみならず、今後の本学図書館の発展のためにも大いに喜ばしい出来事といわなければなりません。みなさんの新図書館長への応援をお願いいたします。[林]
1997年度は、次の方々に客員教授をお願いすることになりました。
宇多文雄氏(上智大学・外国語学部)
外川継男氏(上智大学・外国語学部)
廣岡正久氏(京都産業大学・法学部)
田畑伸一郎助教授は、1997年3月1日付けで教授に昇任されました。
今年度の大会が6月5〜7日に旭川大学経済学部で開催される。今年度の共通論題は「システム転換における国際関係」で、岡田裕之(法政大)「世界市場型国際連関の進化と社会主義世界体制の分裂・崩壊・転換」、須川宏之(旭川大)「ソビエトがキューバ経済に残したもの」、木村英亮(横浜国大)「中央アジアの経済改革とロシア−中央アジアのロシア人について−」、長岡貞男(一橋大)「旧ソ連諸国の世界経済への統合と地域間貿易動向」、名島修三(横浜商大)「コメコン崩壊による国際分業の再編成」、徳永彰作(札幌大)「旧ユーゴスラヴィアにおける民族関係」、矢吹晋(横浜市大)「中国経済と香港・華人資本」の7報告が予定されている。6月5日の数量経済研究会でも、国際経済関係の統計に関するラウンド・テーブルが予定され、上垣彰(西南学院大)、田畑伸一郎(北大)、薛進軍(大分大)、岳希明(日本学術振興会)、田口雅弘(岡山大)が報告する。このほか、自由論題の報告としては、稲川順子(常葉学園浜松大)「チェコ共和国における体制転換の現状と問題点−転換政策・安定化政策・発展政策−」、金秀日(京大大学院)「戦後経済政策の国際比較−社会的市場経済から見た西独・日本・韓国−」が予定されている。[田畑]
◆ ICCEESの太平洋地域大会
ICCEES(中・東欧研究世界学会)は、これまで5年ごとに計5回の世界大会を開いてきたが、ワルシャワで第5回大会が開催された1995年とタンペレ(フィンランド)で第6回大会が開催される2000年との中間年に当たる1998年に、第1回の地域大会をメルボルンで開く準備を進めている。同学会のニューズ・レター37号、38号に掲載された情報によると、この太平洋地域大会は次の要領で開催される。ロシア極東が中心テーマとされており、日本人の積極的な参加が期待されている模様である。
1. 開催日:1998年7月7〜10日
2. 場所:メルボルン大学(オーストラリア)
3. 中心テーマはロシア極東であるが、同学会のカバーする領域であれば、どんなテーマでも認められる。とくに、ロシア、他のCIS諸国、中・東欧の最近の情勢に関するラウンド・テーブルなども組織される。
4. 会議使用言語:英語、露語(事務局用語は英語)
5. 参加登録費:150豪ドル(現在のレートで約120米ドル)
6. パネル、ラウンド・テーブル、個人ペーパーの提案の募集締め切り:1997年5月15日
なお、詳しい情報と提案の送り先などについて知りたい方は、インターネット上のICCEESのページ
(http://adhocalypse.arts.unimelb.edu.au/Dept/RussCent/ic38c.htm)をご覧下さい(センターのホームページからもリンクされています)。[田畑]
第9回西日本地区ロシア・東欧研究者集会(これまでは西日本地区ソ連・東欧史研究者集会という名称であったが、今集会で改称された)が、3月1日に神戸の甲南大学で開催された。つぎの3報告、寺山恭輔(東北大学)「1930年代初頭のソ連極東−前線の形成」、阪本秀昭(天理大学)「革命前シベリアの秋季の祭り−祝祭の社会的機能をめぐって」、石川達夫(広島大学)「ロシアの無抵抗主義とチェコの抵抗主義−比較文化論的考察」をめぐって、活発な討論がおこなわれた。また、研究会の前に、阪神大震災で甲南大学が受けた被害状況を見学する学内ツアーが、研究会の後には神戸の中華街での懇親会が、また翌日には幹事の小島修一の案内で神戸の異人館を見物するエクスカーションがおこなわれた。
この研究会は、九州、中四国、関西の3地区の持ち回りでおこなわれ、今回で3巡目が終了。来年には10周年を迎える。よくもここまで続いたものだ、というのが発起人のひとりとしての感想だが、東京や札幌(もしくは北海道)とは異なる雰囲気を持つ、西日本でのロシア・東欧研究者の交流の場として、この研究会のさらなる発展を期待したい。次回は中四国地域で開催。問い合わせは冨岡庄一氏(広島大学総合科学部)まで。[林]
1997年5月17〜18日 日本国際政治学会・春季研究大会。於筑波大学。
6月5〜7日 比較経済体制学会第37回全国大会。於旭川大学。共通論題は「システム転換における国際関係」。
連絡先:学会事務局
〒101千代田区三崎町1-3-2日本大学経済学部 栖原学研究室、
tel: 03-3219-3394, fax: 03-3219-3328,
e-mail: msuhara@eco.nihon-u.ac.jp
6月13〜14日 日本西洋史学会第47会大会。於北海道大学。
連絡先:大会準備委員会(北大文学部西洋史研究室)
tel: 011-706-3041, fax: 011-706-5347
8月22日〜24日 第8回日ロ北海道極シンポジウム。共通テーマ「変貌する北東アジア:21世紀への展望」。於北海学園大学。連絡先:同大学経済学部 大沼研究室
7月17〜19日 スラブ研究センター夏期国際シンポジウム。
連絡先:センター・井上
e-mail: kinoue@slav.hokudai.ac.jp
9月3〜11日 ウラジオストク極東諸民族歴史・考古・民族学研究所国際シンポジウム「北東アジアにおける歴史体験と諸人種、文化、文明の相互作用のパースペクティヴ」。
問い合わせ先:センター・井上
e-mail: kinoue@slav.hokudai.ac.jp
9月23〜25日 「ヨーロッパのロシア研究と現代」第4回国際会議。於ポーランド。「ロシアの文学と文化におけるIudaica」「新しい情報伝達の要請のもとでのロシア語」「ロシア語教育におけるロシアの民族・社会・文化学的realia習得の諸問題」(使用言語はロシア語)
連絡先:Prof.
Vojcech Kaminski, Instytut Filologii Rosyjskiej, Uniwersytet im.
Adama Mickiewicza, al.
Niepodleglosci 4, 61-874 Poznan, tel: 52-11-91 w.141
(参加申込書はセンターにもあります)。
10月3〜4日 日本ロシア文学会。於富山大学。
10月4〜5日 ロシア・東欧学会。於京都大学。
連絡先:溝端佐登史研究室
tel: 075-753-7144, fax: 075-753-7148,
e-mail: mizobata@kier.kyoto-u.ac.jp
10月25〜26日 ロシア史研究会・大会。於東京工業大学。
連絡先:ロシア史研究会・大会事務局
〒114 東京都北区西ヶ原4-51-21
東京外国語大学外国語学部 鈴木義一
e-mail: ysuzuki@fs.tufs.ac.jp
11月20〜23日 AAASS(米国スラブ研究促進学会)第29回年次大会。於シアトル。
連絡先:AAASS, 8 Story St., Cambridge, MA 02138, USA
学術振興会の招きで埼玉大学に滞在中のビクトル・ハルラーモフ氏をお招きして、『革命前ロシアにおける図書、検閲、読書』と題する研究会をおこなったのは、昨年1月24日のことでした。
今にして思えば、通訳をはさんで1時間半という予定時間は、ハルラーモフさんにあまりにも短すぎました(佐々木照央氏が通訳をしてくださいました)。ノビコフとエカチェリナ2世に始まって、アレクサンドル1世の検閲改革、ルミャンツェフ伯の歴史編纂事業から、結局ソビエト時代にまで話は及びました。尽きるところを知らない、熱気を帯びた話ぶりでした。
ハルラーモフ氏は、モスクワのロシア国立図書館にお勤めであり、若くして図書史部長、副館長といった要職にあった方です。しかし、その雰囲気は飾りのなく人なつこい純真な学者そのものでした。研究会がはねたあとのお酒の席で、乾杯の音頭を取るのに、「ロシア国立図書館の未来のために」と言ったところ、顔を曇らせていらしたのを、今も覚えています。
ところが、昨年の暮れになって、氏が交通事故により急逝したとの連絡が入りました。 1948年11月生まれの氏は48才の誕生日を迎えたばかりでした。
年が明けて、新聞記事をチェックしていると、かつて彼の同僚だったロシア書籍史学の長老ネミロフスキーによる追悼文が目に入りました(『図書評論』紙1997. 1. 21付)。
それによると、レーニン図書館のネミロフスキー稀本部長は、稀本部図書史課が課題としていた革命後のソビエト図書史編集のために、歴史家が必要と考えていました。そこで、ボリス・イテンベルク(ソ連邦科学アカデミー歴史研究所)とミハイル・セドーフ(モスクワ大教授)から、ハルラーモフ氏を推薦されたということです。イテンベルクとセドーフはともにナロードニキの研究者であるが、その一方でイテンベルクは、『19世紀ロシア非合法・発禁印刷物総合目録』(1971年刊)の編集を指導し、セドーフもその仕事の助言者として重要だったとのことです。2人とも、図書館の事業に深い関心と理解を持って関わっていたわけです。
彼らの推薦状を携えて、ハルラーモフ氏はネミロフスキーと出会いました。1980年5月のことです。そして以後、ハルラーモフ氏は『ソ連図書史』シリーズの編集・執筆者としてネミロフスキーともに働き、82年にネミロフスキーの退いた後も事業の継続に力を注いだのでした。 既にニュース67号(Oct. 1996)でお知らせしたように、センターではイテンベルク氏の蔵書の一部を購入しています。
われわれのところでの研究会の後、ハルラーモフ氏は数日札幌に滞在し、センターと北大附属図書館を利用していかれました。帰国後、これらの印象について、イテンベルク氏に語ることがあったのかどうかはわかりません。しかし、これらの資料を見ていると、イテンベルクとレーニン図書館との関わり、ハルラーモフ氏との交わりが想起され、そしてセンターにイテンベルクの蔵書があるということで、センターがこれらの世界とつながっていることが感じられるのです。[兎内]
前号でもお知らせしましたように、1996年度は、前年度に引き続き、TsKhSD(同時代文書保存センター)のフォンド6(統制委員会)の部分を購入してきましたが、このフォンドについて既作成分の収集を完了しました。さらに同じ文書館のフォンド89(裁判にかけられた共産党)についても、目録および文書本体の購入を終えました。
現在、RTsKhIDNI(ロシア現代史文書保存・研究センター)のフォンド17(党中央委員会)の文書の購入を始めたところです。
いずれも、購入後1, 2ヶ月で利用可能になっております。[兎内]
第1期分を購入したことについては、ニュースNo. 64(Jan. 1996)で既にお伝えしましたが、1996年度は第2期分を購入しました。
内容は、第5回大会(1923-1924)及び第6回大会(1927-1929)です。 全て利用可能な状態にあります。[兎内]
この資料は、UCLAの所蔵するユーゴスラビアの主に歴史と文化に関する2,075点のパンフレットとモノグラフを109リールのマイクロフィルムに収めたもので、言語はセルボ・クロアチア語が多く、時代的には中世から1960年代までをカバーします。
付録のガイドブックによると、このコレクションは1961-62年にかけてUCLAが、ユーゴスラビア資料を将来充実させていく基礎にするため、現地で収集したもので、保存のためにマイクロフィルム化することとなったとのことです。
東欧諸国、特にバルカン地域の資料が手薄なセンターにとっては、非常に有用なものと考え、96年度の学内緊急経費で要求したところ、関係者の理解を得て購入することができましたのでお知らせします。
付録のガイドブックにはタイトル、著者、件名の索引があり、アプローチが容易になっています。 現在、利用可能です。[兎内]
一昨年、伊藤清久氏のご遺族から寄せて頂いた蔵書の内、選択をおこない、584冊を受け入れました。ほとんどがロシア語の資料です。
内容的には、歴史、文学から、経済、石油に関する技術的なものまで含まれていましたが、特に際だったのは第2次大戦関係の資料が豊富なことで、ソ連の軍人によるメモワールや、戦争にまつわる文学作品を多く補充することができました。[兎内]
『スラヴ研究』第44号は次のような内容で発行されました。[田畑]
[論文]
宇山智彦「20世紀初頭におけるカザフ知識人の世界観―M.ドゥラトフ『めざめよ、カザフ!』を中心に―」
三浦清美「『聖グレゴリオス講話』伝承史のテキスト学的研究(前編)」
大須賀史和「ベルジャーエフにおける宗教哲学の導因と問題」
斉藤 毅「民の声、詩人の眼差し―O.マンデリシタームの戦争詩より―」
中村唯史「『騎兵隊』論:その成立過程と構造について」
村上 隆「ハバロフスク地方および沿海地方における機械工業企業の動態分析」
[研究ノート]
岩崎一郎「体制移行期におけるロシア・中央アジア諸国間分業関係の経路依存性:試論」 来年3月刊行予定の『スラヴ研究』次号(第45号)の受付が開始されています。投稿規程は次のとおりです。
1. 投稿は、論文、資料、研究ノート、書評論文の4種とします。原則として、論文は400字詰80枚以内、それ以外は40枚以内とします。なお、論文には、英露仏独語のいずれかによる4〜5枚(A4、ダブルスペース)の要旨を添付して下さい。
2. 投稿の範囲はスラブ地域(旧ソ連・東欧地域)に関する人文・社会科学分野の研究とします。
3. 投稿原稿の採否は、編集部の委嘱する審査委員の審査に基づき編集部で決定させていただきます。
4. 投稿を希望される方には、投稿申込用紙と執筆要綱をお送りしますので、編集部までお申し込み下さい。
編集部住所
〒060 札幌市北区北9条西7丁目
北海道大学スラブ研究センター『スラヴ研究』編集部
電話(011)706−2385 ファクス(011)709-9283
メールsrc@slav.hokudai.ac.jp
投稿申し込みの締め切りは6月30日、原稿の締切は9月30日です。なお、次号の編集長は松里に代わりますが、5月末までは田畑が代行します。[田畑]
Next