去る5月7日から28日にかけて、以下のプログラムでセンターの2001年度公開講座が開催されました。
第1回 | 5月 7日(月) | 中央ユーラシアの「民族」問題と「民 宇山智彦(センター)族史」の創造 |
第2回 | 5月 10日(木) | 静かな反乱? 受洗タタール人の棄教 西山克典(静岡県立大) |
第3回 | 5月 14日(月) | ロシア帝国西部諸県のポーランド人 松里公孝(センター) |
第4回 | 5月 17日(木) | 極東ロシアにおける日本人社会 イーゴリ・サヴェリエフ(新潟大) |
第5回 | 5月 21日(月) | つくられた歴史と「民族」:マケドニ 佐原徹哉(東京都立大)アをめぐって |
第6回 | 5月 24日(木) | 新たな民族の誕生:スロヴァキアのル 長與 進(早稲田大)シーン人の場合 |
第7回 | 5月 28日(月) | 極小民族の「声」:サハリン・ウイル 井上紘一(センター)タの場合 |
第3回・松里の講義のもよう |
聴講風景 |
今回の講座は「声なき者の復権:スラブ・ユーラシア圏における民族と歴史」と題して、受洗タタール、(ロシア領内の)ポーランド人、マケドニア人、ルシーン人、ウイルタ人のような、国家性とはあまり縁のない小民族を通してスラブ・ユーラシア圏の歴史を再考しようというものでした。特に異色なテーマとして、新潟大学のイーゴリ・サヴェリエフ先生により、ロシア革命以前の極東における日本人コロニーの社会史が紹介されました。
企画に携わった者として、我ながら驚かされたことがあります。それは、一見、広大なスラブ・ユーラシア地域に散在する島のような存在(小民族)を扱う企画でありながら、また講師の間で稠密な打ち合わせをしたわけでもないのに、ほぼ一貫したテーマに基づいて講義が連なっていったことです。そのテーマとは、民族概念の近代性、人為性、操作性、政治性という問題です。
本講座の内容は、今年8月より『しゃりばり』に連載されます。[松里]
今年度の大会が6月1〜2日に北海道大学(会場はクラーク会館とスラブ研究センター)で予定通り開催された。今年の共通論題は「移行経済の諸類型」で、中兼和津次(東大)、大津定美(神戸大)、田中宏(立命館大)、上垣彰(西南学院大)の4氏による報告がなされた。自由論題については、分科会方式が初めて取られ、「ロシア経済・社会構造分析」、「中央アジア経済」、「移行経済の数量経済分析」、「ロシア極東経済と日ロ関係」の分科会が開かれた。共通論題、自由論題を通じて、既に10年を経た移行経済諸国を類型化し、そこに違いが現れる要因を探ろうとする報告が多かったように思われた。
会員総会でおこなわれた役員の改選を受けて、新しい代表幹事に中兼和津次氏(東大)、事務局担当の幹事に吉野悦雄氏(北大)が就任した。また、学会ホームページを充実させるために今年から設けられた広報担当の幹事には田口雅弘氏(岡山大)が任命された。
総会では、今年からレフェリー制を導入する『比較経済体制学会年報』(従来の『会報』を改名)の投稿規程なども承認された。投稿者の範囲は原則として学会会員とされ、投稿締切は2001年8月末日とされている。投稿規程は、学会ホームページ(http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/comparative/index.html)に掲載されている。
『年報』編集委員会の委員長は引き続き久保庭真彰氏(一橋大)が務めており、そこに編集事務局が置かれている。なお、同学会では、『比較経済体制学会会報』のバックナンバーの一部について、学会会員以外の方にも、送料のみ有料で配布する方針である。詳しくは、学会事務局に問い合わせられたい。
来年度の全国大会は、2002年6月7〜8日に岡山大学で開催される予定である。[田畑]
2001年7月22-25日 | 第38回野尻湖クリルタイ(日本アルタイ学会) 於野尻湖・藤屋旅館 |
7月28日 | 木二会(ロシア語研究会)例会 於東京外国語大学 問い合わせは:latulipe@super.win.ne.jp |
9月29・30日 | 第51回日本ロシア文学会総会・研究発表会 於新潟大学 問い合わせは:153-8902東京都目黒区駒場3-8-1東京大学教養学部9号館ロシア語研究室内日本ロシア文学会事務局Tel.&Fax.03-5454-6424 (rus@boz. c.u-tokyo. ac.jp) |
10月6-8日 | ロシア・東欧学会2001年度大会 於愛媛大学 共通論題テーマ「21世紀のロシア・東欧:グローバリゼーションと地域変容」問い合わせは:上野俊彦(uenot@mc.neweb.ne.jp) |
10月27・28日 | ロシア史研究会大会 於大東文化大学 問い合わせは:豊川浩一(toyokawa@kisc.meiji.ac.jp) |
11月15-18日 | AAASS(米国スラブ研究促進学会)第33回全国大会 於ヴァージニア州アーリントン 詳しい情報は:http://www.fas.harvard.edu/~aaass/ |
11月17日 | ウクライナ研究会第15回研究報告会 於東京大学(駒場) 問い合わせは:阿部三樹夫(abe@cec.mii.kurume-u.ac.jp) |
12月1日 | JSSEES(日本スラブ東欧学会)シンポジウム「21世紀のロシア・東欧:ソ連崩壊10年とヨーロッパの再編」 於法政大学(市ヶ谷)問い合わせは:木村崇(tkimura@ip.media.kyoto-u.ac.jp)、佐藤昭裕(j52396@sakura-kudpc.kyoto-u.ac.jp) |
2002年1月31日〜2月1日 | スラブ研究センター2001年度冬期シンポジウム |
4月19・20日 | コンファレンス "The Over-Examined Life: New Perspectives on Tolstoy" 於ハーヴァード大学 問い合わせは:Julie A. Buckler (buckler@fas. harvard.edu) |
6月5〜8日 | コンファレンス "The Baltic States in the Era of Globalization"於ジョンズ・ホプキンズ大学/ボルチモア 問い合わせは:Steven Young (young@ umbc.edu) |
6月7〜8日 | 比較経済体制学会第42回全国大会 於岡山大学 問い合わせは:田口雅弘(taguchi@cc.okayama-u.ac.jp) ) |
7月 | シンポジウム "Hierarchy and Power in the History of Civilizations"於サンクトペテルブルク 主催:The Institute of Oriental Studies, RAS他 問い合わせは:Dr. Serguei A. Frantsouzoff (invost@mail. convey.ru |
8月15-21日 | "13th International Congress of Slavicists"於リュブリャナ/スロヴェニア 詳しい情報は:http://www2.arts.gla.ac.uk/Slavonic/13thics.htm |
8月26-29日 | 第5回国際ウクライナ学会 於フェディコヴィチ名称チェルニフツィ大学(チェルニフツィ市/ウクライナ)問い合わせは:Ukraine, 01001 Kyiv-1, vul.M.Hrushevs'koho, kimn.214, O.I. Petrovs'kyi Tel.&Fax. (380-44)229-76-50 |
センターのホームページ(裏表紙参照)の学会カレンダーにはこの他にも多くの海外情報が掲載されています。[大須賀]
◆ Rare Ukrainian Serial Publications ◆
スラブ研究センター図書室では、上記のマイクロフィルムセット、全513リールの収集に着手し、その一部を購入した。
これは、19世紀後半から第一次世界大戦にかけての時代に、ハプスブルク帝国治下にあったウクライナ西部で刊行された新聞・雑誌類を主としており、199タイトルを収録する。
ウクライナ語出版物が中心であるが、ハンガリー語、ドイツ語、ロシア語による出版物も含むこの資料は、東ガリツィアを中心に、ブコビナ、ザカルパチエなど、ウクライナ西部地域の当時の言論を分析する上での基本資料として役立つものと考えられる。ウクライナ・ナショナリズムの源流を探り、多民族社会としてのウクライナの実相を考える上で、興味深い材料を提供してくれることであろう。今回購入した分は、このセットの冒頭からアルファベット順に、AからKarpatskii kraiまでの220リールであるが、今後2-3年のうちに全体を揃えたいと考えている。[兎内]
2001年4月から5月までの約2ヵ月間における、センターのホームページへのアクセス統計は以下のとおりです。
国内から342,786件(41.3%)
不明119,308件(14.4%)
1日平均アクセス数 12,960件
これまでの数値は、gif、jpg等画像へのアクセスが別個にカウントされ、この値も加算されていた為、実質的なアクセス件数より多めになっていました。今後は統計方法を再考し、実件数を反映した数値にしてゆきたいと考えております。
ちなみに、6月14日から、表紙ページ(邦語・英語とも)を全面刷新いたしました。今後ともどうか宜しくお願いいたします。[山下]
和文レフェリーズジャーナル『スラヴ研究』第49号(2002年3月発行予定)の投稿申し込みおよび原稿を受け付け中です。申し込みフォームは、センターのインターネット・サイトから入手するか、センター大須賀みか宛ご請求ください。投稿規定・執筆要領・引用注の様式も同様の方法で入手してください。原稿締め切りは2001年8月末で、レフェリー審査によって採否が決められます。多数の投稿をお待ちしています。[宇山]
2001年末に刊行予定の第19号への投稿はすでに締め切られ、現在、複数レフェリーによる審査がおこなわれています。[松里]
◆ 研究報告シリーズNo.80 ◆
『東欧・中央ユーラシアの近代とネイションT』の刊行
本書は林忠行編、以下の章から構成されています。[大須賀]
第1章「歴史学、民族、中央ユーラシア:今後の研究のための問題提起」宇山智彦;第2章「ネイションにおけるメンバーシップと領域」月村太郎;第3章「ボスニア・ムスリム民衆叙事詩の成立とムスリム民族意識の形成」栗原成郎;第4章「中央ユーラシアの叙事詩に謡われる『ノガイ』について」坂井弘紀;第5章「政治的集団行動の社会範疇とその解釈について:1998年ブリヤーチア国会議員選の分析」渡邊日日;第6章「民族をめぐる実践:ブルガリアにおけるポマクの事例から」松前もゆる
2001年度第1回(6月26日)
議題
1.2000年度歳出予算決算について
2.2001年度歳出予算(案)について
3.2002年度外国人研究員候補者の選考について
4.2002年度外国人研究員候補者に対する客員教授および客員助教授の称号付与について
5.教官の兼業について
6.その他
報告事項
1.部門改組について
2.2001年度夏期国際シンポジウムについて
3.2001年度科学研究費補助金について
4.教官の海外渡航について
5.2001年度外国人研究員の着任状況について
6.2001年度鈴川奨励研究員の決定について
7.その他
本号からセンター協議員会ならびに運営委員会の開催日時と議題・報告事項を箇条書きにしたものを載せることにします。これは、国立学校設置法の一部改正により、「教育及び研究並びに組織及び運営の状況」の公表が義務づけられたことに関連するものです。[編集部]
◆ ロシア科学アカデミー極東研究所若手研究員グループの訪問 ◆
5月24日(木)日本外務省日露青年交流センターを通じてパヴリャチェンコ・ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センター長・主任研究員を団長とする11名の若手研究者グループがセンターを訪問しました。中国及び日本の歴史、文化、経済を専門とする20代から30代の研究者達でした。主として日露関係の現状と将来について意見交換をおこないました。訪問者リストは「人物往来」コーナーに掲載してあります。[村上]
ニュース85号以降のセンター訪問者(道内を除く)は以下の通りです(敬称略)。[村上]
4月 16日 | ホスタド(Disa Hastad)(『世界経済』記者/スウェーデン) |
4月 25日 | 長谷川毅(カリフォルニア大/アメリカ合衆国) |
5月 24日 | ロシア科学アカデミー極東研究所若手研究員グループ一行 パヴリャチェンコ(Viktor Pavliachenko)(日本研究センター長・団長)、アニシムツェフ(Nikolai Anisimtsev)(同研究員)、ジェレズニャク(Oksana Zhelezniak)(同)、ベロクロヴァ(Galina Belokurova)(同)、ヴォロビエフ(Andrei Vorob弾v)(東アジア精神文明センター研究員)、デミド(Nina Demid)(同)、カルカエフ(Evgenii Kalkaev)(同)、アンドレエヴァ(Nataliia Andreeva)(中国社会経済問題センター研究員)、ボリソフ(Andrei Borisov)(同)、グラヴェヴァ(Diana Glaveva)(哲学博士) |
7月 9日 | ガイヴォロンスキー(Viacheslav Gaivoronskii)(音楽家/ロシア)、ペトロヴァ(Evelina Petrova)(同)、ドミートリエフ(Nikolai Dmitriev)(音楽評論家/ロシア) |
7月 10日 | ルドゥイク(Emil N.Ruduik)(労働開発省・労働研究所/ロシア) |
松里公孝研究員は2001年6月4日〜7月8日の間、科学研究費研究「ベラルーシ・ウクライナの体制転換開始過程での経済・社会・政治構造の微視的総合研究」に係る実態調査のためロシア他に出張。
林忠行研究員は6月14日〜7月1日の間、科学研究費研究「旧ソ連東欧地域における農村経済構造の変容」に係る資料収集のためチェコ他に出張。[畑]