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Slavic Research Center
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司会:
どうもありがとうございました。それでは質問なり、ご意見ございましたらどうぞ。
質問:
2国間なり関係国間で防災のための法令を結びなさいという提言を条約の中でうたっているわけですね。確かにロシアは批准していないということですけれど、先生たちのお話を聞くとやはりロシアは自分たちの国で石油や天然ガスを開発しているという事情もあるのでしょうけれども、ロシアは例えばアメリカとノルウェーと3国間の協定を結んでいるとか、ノルウェーとの間に2国間の協定を結んでいるといった事実がありますね。サハリンにしても間違いなくロシアの領土の中での開発ですから、日本政府の姿勢が、何故2国間協定にまで及ばないのだろうか、その辺がちょっと判らないのです。明らかに政府は、参議院などの質問書に対する回答では、ロシア側がまだ条約を批准していないことを指摘し、ロシア側にまず条約を批准させる事が先決ではないかと公式に述べています。ですからその辺の認識で、当然我が国政府はそんなに情報がない国ではないですから、知っていながら、言葉が悪いですけれど、まやかしの答弁に終始しているではないかと疑います。最近こういうのを知って、国の姿勢に疑問を感じます。条約を批准する事は大事ですけれども、それに固執する以前の大事な問題があるのではないでしょうか。少なくともサハリンに対しては、日本政府は積極的に融資をしていますし、三井、三菱のように大手の日本を代表する企業が参加をしているわけですから。日本は全然無関係ではないというのが基本的にあるわけです。
村上:
今のところ、サハリンについて政府間の協定を結ぼうという具体的な動きは、私はないと思います。ただ、クラスノヤルスク会談で環境についての協定を結びましょうという事になっていて、それはサハリンという特定なものでなくて、他の大気圏汚染の問題もありますし、原子力の廃棄物問題もありますし、そういう総括協定みたいなものを結びましょうということだろうと思います。それから地方自治体レベルでは昨年の暮れに締結しました。これも北海道側の要望と若干違って、実際には包括的な協定になってしまいました。国際的な条約がないからダメだと言うのであれば、ノルウェーや、カナダや、アラスカは実行能力がどの程度あるかという事は別にして、かなり日本よりも積極的に行っているわけです。
北川:
国会での答弁はナンセンスだと思います。例えば国際条約にしたって批准してない国同士でさまざまな2国間協定を現実に結んでいますし、国連のさまざまな条約を批准していないから云々と言うのは、おかしな話です。
質問:
たぶん質問している国会議員がその辺のことを掌握していないで質問しているのか、知っていてそう言う答弁に甘んじているのかですね。我々がいろいろな情報を知ってくると、その辺から国を動かしていけると思いますけれど。
皆川:
ロシアはまもなく批准する方向で動いています。批准していようがいまいが関係ないと思います。ノルウェーとの防災協定ではムルマンスク州がかなり積極的に動きました。それに対して、サハリン州はこれまで余り積極的ではなかったわけですから、ちょっと状況が違うのです。
村上:
ノルウェーとロシアとの場合、ロシア側では天然資源省がかなり表に出ていますね。ところがサハリン、極東の方に来ると天然資源省はもちろんライセンスを付与する力を持っていますけども、どうも影が薄いような気がします。
北川:
それはサハリン州知事の振る舞いによってもわかります。
村上:
それは地方の行政体の力関係ですか。
北川:
ええ、そうですね。それとムルマンスク州の場合には、ムルマンスク州にとって大変なメリットがあったからなんです。
質問:
日ロの本当の経済協力があれば、例えばサハリンからの天然ガスパイプラインが日本と直接結びつくというような経済関係があれば違うのではないか。国際条約は政治的な要素を含んでいます。とくに日ロの環境条約ですと政治的に大きい部分があるように思います。
村上:
しかし、それはノルウェーとロシアだって実際の経済協力はあまりありません。
質問:
実際の政治問題はほとんどないですね。
北川:
いがみあっている部分はたくさんありますけれども、日本の国際感覚にも問題があります。
村上:
サハリンと日本、領土問題もそうですけれども、ある面ではバレンツ海よりもはるかに現実に生活している人達が多いということはありますよね。
北川:
ノルウェーとの問題でも先住民の問題はまだ十分解決されていませんし、逆に先住民の生活のための捕鯨は、環境条約を結ぶための大きなファクターになったことも確かです。しかし日本にはそのような例はないですね。インパクトを与えるような大きな動きがありません。
村上:
北川先生がずっと関わり合い持っている北極海航路の研究について日本とロシアとノルウェーが中心となって膨大な資料を今までまとめていますね。いわゆるロシアの北極海周辺の港であるとか実際の経済活動であるとか民族の問題であるとかいろいろな角度からおそらく研究されていると思うのですが、一方ではサハリンと北海道の関係ではもっと現実的にいろいろなことが起こっているのに資料を積み上げたらこんなに差があるのだろうと思うのですが。
皆川:
ノルウェーとロシア間の協定では、ロシアの運輸省が窓口なんです。もうひ一つの窓口は天然資源省です。これが重要なのです。北極海航路の研究で今までとても得られなかった情報がロシアから出されています。情報関係は、昔だったらロシアでこういう細かいことまでできないでしょう。その点でもこれは画期的じゃないかと私は思うのです。いろいろな省が関係しているということも一つの長所ですね。
司会:
他に何かご質問がないようでしたらこれで終わりたいと思います。