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山村報告「地理情報システムによるサハリンの地域環境概要」
山村:
昨年、サハリンのデータ収集がほとんど出来なかったものですから、統計資料その他を分析しまして、サハリンがどういう状態になっているのかということを地域環境的な観点からお話申し上げたいと思います。
村上先生と10日間くらいサハリンに行った時、唯一頂いたのが自然保護区の地図です。すぐ分かることですが、地図には禁猟区が記載されています。その他特別天然記念物というふうになっておりまして、サハリンはたいへん大きな島ですが、これが唯一の資料であります。これでは報告は難しいということで少し統計書が手に入りましたので、統計書を用いて地理情報システム、GISを使って少し分析を試みようということになりました。サハリン州についてですが、地区に分かれておりまして、1990年の人口ですがユジノ・サハリンスク市を行政区の中に加えまして、ユジノ・サハリンスク市が中心になっています。その他、皆さんご存知のホロナイスク、ノグリキがあります。1990年の人口分布と最近の状態を重ねてみますと、人口がユジノ・サハリンスク市に集中してるというのが分かります。全体としましてはやはり人口は減少しておりましてグラフで表しますとよく分かります。1990〜1998年間にユジノ・サハリンスク市以外は減っております。ユジノ・サハリンスク市では増加を示しています。都市化が進んでるという形ですけれども州全体としては人口減少です。一部周辺からユジノ・サハリンスク市に人口が集まっているということになります。それでアーバン・ポピュレーション、都市地域の人口の状態がどうなっているのかということで、やはり都市人口がユジノ・サハリンスク市に集まってきてるということが言えます。石油を開発して操業が行われるところを中心に10キロごとに見ますと人口の広がり具合が分かります。所得がどうなってきてるかということですが、1997年と1995年との比較ですが、これが極端でありまして、地区別に見ますと1995年時点ですと、1家庭当たりの所得がほとんどの地区で平均化していたという感じがいたします。わずか2年間で極端に変わっています。ユジノ・サハリンスク市と石油開発がなされているところの家庭所得が平均に増加したという形を示しています。2年間ですがこういう形態になってるということです。だんだん深刻な話になってくるのですが、この所得格差は地区的な所得格差の広がりを示していて、多分いろいろなところで本当の地域行政区同士が深刻になっています。
それから産業ですけどもこういうところで産業が大変盛んだったわけですが、これは前年度に対する増加を示しています。地域によっては2年間で衰退して平均的以下ということで、産業の衰退というのは大変深刻な状態になってるというのが分かります。馬鈴薯の生産を見て分かりますが1990年にはあまり差はないんですが土地単位の生産高について、へクター当たりどれだけ取れるかが、生産性です。農業の生産性ということで調べています。比較しますとまた極端な差が出てきております。すなわち生産性の高いところが減少して、平均化されています。ほとんど産業的なものではなく家庭菜園的な農業に変わってしまったことが分かります。それから汚染の状態ですが、これはあんまり変わっていません。大気汚染とエネルギーの関係であまり大きな変化はありません。ユジノ・サハリンスク市に集中して汚染が起きてるというのが分かります。人口集中によりまして廃棄物の汚染、私達が行った時に野焼きがされておりまして、大変汚染が深刻な状態になっているのが分かります。
実は南米のボリビアのラパスという海抜4000メートル、5000メートルというところですが、高山病に苦しみながら国際会議を行いましたが、その時に国連はじめいろんな機関から来てた人が私の話にびっくり仰天したわけです。人口当たりの医者の数ですが、それが千人当たり医者の数が各地域で急激に減ってきております。極端に減ってる理由が分かります。それは医療資源といいますか医療環境が悪化してるということなのです。悪化した時に一体どのようなことが起こっているのだろうかということで分析してみました。千人当たりの死亡率と出生率を比較してみますと、地区によっては死亡率が高く、病気になって若くて死ぬ方が多い地区があります。良く比べてみますとやはり医者が極端に減少しているところで差が大きい、すなわち死亡率が大変高くなってるということで、やはり医療環境の悪化がその地区の死亡率を高めてるということではないかと思います。そこで統計分析を致しまして、死亡率から出生率を引いてみますと死亡率がすごく高い地域と医者の減少率の相関係数が明らかになります。0.66くらいで大変高い値になっています。0.78という大変高い値のところもあります。そういうことで今まで医療資源の極端な減少が起きて死亡率が増加したというのは世界では例がないという話です。統計分析でこういう結果が出ております。
先ほどの自然保護区とオーバーラップさせてみたのですが、この保護区になってるところ、また漁業区の保護になってるところがサハリンとしては一番危険な地域になるんのではないのかなということが考えられます。ここであまりデータがないのですがサハリンの地図を取得できましたので、サハリンの地形図から保護区になってるところの状態をどう把握するかということで、環境容量という考え方を取り入れまして、その環境容量を考えています。保護区になっているところですが、石油開発現場近くのノグリキが保護区になっています。地形から見ますと相当の湿地帯であるというのが分かります。そういういろいろな地形の表示がありますのでこの辺を見ながら少し環境容量的なところを把握できればと思っております。地形を見ますと、海岸が急になっている地域もあります。ほとんど内陸からはちょっと入ったところに、林道があります。先ほどのお話にあるように除去作業が大変難しいというところではないかと思います。それから漁業区の保護になってる部分ですが、湿地帯をはじめ鴻湖になって河川が流れておりまして大湿地帯になってる地域であります。ということで地域のいろいろ地図を表示して環境容量の分析が出来ればと思っております。まず地図のいろんな精度もありますので、どれくらい出来るか分かりませんが、研究途中ですがお話申し上げました。