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2014.12.25

SRC・2014年度冬期国際シンポジウム「境界(ボーダー):ユーラシアで交差する動力」開催される!

スラブ・ユーラシア研究センター2014年度冬期国際シンポジウム「境界(ボーダー):ユーラシアで交差する動力」開催される!

 2014年12月4日(木)と5日(金)の二日間、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター大会議室にて、同センター2014年度冬期シンポジウム「境界ボーダー:ユーラシアで交差する動力」が開催された。境界研究ユニット(UBRJ)を中核としてセッションが組織され、2日間で89名(延べ133名)もの多数の方の来場をいただいた。初日には札幌アスペンホテルでレセプションが行われ、6日(土)には小樽・余市方面でのエクスカーションが行われ、センター関係者と参加者との親睦が図られた。
 「ボーダースタディーズにおける実践的意義」と題するセルゲイ・ゴルノフ(スラブ・ユーラシア研究センター外国人研究員)による基調報告を皮切りに、初日のセッション1では国境観光、セッション2では災害と移住者、二日目のセッション3では北極圏、セッション4ではロシアをめぐる国際関係、セッション6では戦間期ソ連外交をテーマとした報告が行われ、初日のセッション3では地域研究における境界の問題についてパネルディスカッションが行われた。シンポジウム全体で多様なテーマでのセッションを組むことで、我が国における境界研究の現段階を知る上で今般のシンポジウムは格好の場となり、同時に、今回のシンポジウムは我が国の境界研究の新たな一歩を示すことができた。それは、(政治)地理学的な境界研究「理論」と個々のフィールドでの問題解決の「実践」の問題とをいかに架橋するのかという問題関心が強く現れたことである。グローバルCOEプログラムの時代より、境界研究ネットワークJAPAN(JIBSN)を通じての活動など、スラブ・ユーラシア研究センターでの境界研究は強い「実践」性を有してきたわけであるが、ではそれを学術的な成果として世界に問うにあたっての壁をいかに突き破るのかについて課題も残されていた。今回のシンポジウムは「理論」の側面からこの問題を真摯に考える場となった。その意味で、我が国の政治地理学の第一人者である山崎孝史(大阪市立大学)氏によるモデレートの下で、ゴルノフ氏による前述のキーノートがなされたことは素晴らしいシンポジウムのキックオフとなった。ゴルノフ氏の基調報告は、世界の境界研究「理論」のトレンドとその「実践」への応用可能性について真面目に問うと共に、その現状での限界も示した点が重要である。同時に、優れた「理論」と優れた「実践」を行うためには、地域研究としての境域現象や、人やモノ、そして環境面での越境現象について良質な「記述・分析」研究が欠かせない。このような境界研究の方向性や方法論の問題、さらには個々のスピーカーのフィールドでの境界問題の現状と比較可能性についてセッション3のラウンドテーブルでは集中的に議論がなされた。セッション1・2・4・5でも「理論」「実践」「記述・分析」の三者関係をどうするのかという問題関心は程度の差はあれ引き継がれていたように思う。今般の冬期国際シンポジウムを足掛かりとして、UBRJが主導する境界研究が今後どのような展開を示すのか、乞うご期待である。
 最後に、寒い中、道内外からシンポジウムにお越しいただき、活発にディスカッションにご参加いただいた皆様、シンポジウムの成功にご協力いただいた司会・報告者・討論者・スタッフの方々に心より感謝申し上げます。

(文責:地田 徹朗)


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