UBRJセミナー「根室からみた北方領土問題」盛況裏に開催!
6月27日(土)、UBRJセミナー「根室からみた北方領土問題:人々の「想い」と「本音」にせまる」が開催されました。土曜日午後の開催だったにもかかわらず、50人もの来場があり大盛況でした。
本セミナーは「DVD『北方領土を望んで:人々の想いは今』完成記念特別セミナー」と銘打たれ、冒頭でDVDの上映が行われました。その内容は、根室振興局内に住む北方領土の元島民およびその子孫(島民「二世」)の方々、根室市長や標津町長など行政当局者などの、北方領土問題の現状と展望に関する率直な発言が収められたものです。国から押し付けられた「固有の領土」観や四島一括返還論の膠着性、また返還運動の担い手の世代交代による意見の変化などが感じ取れるものでした。
セミナーの後半では、昨年、一昨年と根室市役所でインターンを行い、今回もつい先日まで根室市で調査にあたっていたフランス人留学生ファベネック・ヤン氏による講演が行われました。ヤン氏は冒頭で、北方領土問題の解決を阻んでいるものは、根室という境界地域に対する国民世論や国家行政の無関心に他ならないと断罪します。そして、ロシア議会がさけ・ます流し網漁禁止法案を可決したことを、根室が直面するであろう新たな危機として紹介しました。オホーツク海域ではサハリン州北クリル諸島(北千島)の漁民も流し網漁でさけ・ますを獲っており、同海域での漁船の移動と操業が国内法により規制されているカムチャツカ州が本法案をバーゲンニングしたとの由です。カムチャツカ州の漁民は同海域で便宜置籍船を活用した違法操業を行ってきたわけですが、今回の法案により立場が逆転した北クリルの漁民が同様の途に走るのではということが危惧されています。そして、北方領土が何らかの形で解決した場合、多くのロシア人が日本国に編入されるということ以外に、根室の漁業者が流し網漁をオホーツク海域で展開できない一方で、便宜置籍船による違法操業は編入された自国領海でも続くことになり、北洋漁業の混乱はむしろ悪化するのではというショッキングな展望が示されました。その後の質疑応答セッションは、岩下明裕・UBRJユニット代表とヤン氏によるトーク形式で行われ、非常に盛り上がりました。
セミナー全体の印象として、北方領土問題解決後のグランドデザインを早急につくる必要があること、そして、北千島やカムチャツカも含めた形で地域研究を進展させる必要があること、この二点を強く感じさせました。
(文責:地田 徹朗)