ボーダーツーリズム(国境観光)セミナー2015 開催される
北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)、北海道大学・境界研究ユニット(UBRJ)、境界研究地域ネットワークJAPAN(JIBSN)、国境地域研究センターが主催する、ボーダーツーリズムのセミナーが70名の参加者を集めて、2015年7月24日、ホテルポールスター札幌で開催されました。主催者を代表した越前副会長の御挨拶の後、来費としてロシアのファブリチニコフ札幌総領事の登壇があり、6月15日から実施された稚内・サハリン国境観光モニターツアーのアンケート調査結果報告がHIECCの高田喜博・上席研究員からなされました。高田研究員は、2015年3月に対馬・釜山で実施されたアンケート結果との比較から、稚内・サハリンツアーのトライアウトの成功面と問題点を浮き彫りにしました。国境観光というコンセプトそのものを参加者の多くが堪能したとする一方で、そのニーズの多様性にどのように答えていくかが課題だと指摘しました。
報告を受け、パネルディスカッションでは、まず稚内商工会議所の今村光壹副会頭から、正念場の稚内に対する熱い支援へのお礼とともに、フェリー撤退の危機をチャンスとして新しい国境のまちづくりについての決意が表明されました。東京から前日、稚内に飛び早朝のスーパー宗谷で5時間かけて札幌入りされたエムオーツーリストCISロシアセンターの濱桜子グループリーダーは、初めての稚内に魅了された想いを語るとともに、稚内とサハリンをつなぐストーリーをもったツアーづくりについて触れられました。今シーズンは、日露国境と北緯50度線の2つの境界を越えるスペシャルツアーと宮沢賢治の足跡をたどるツアーの2つを手掛けており、いずれも稚内での見せ場がきちんと参加者に伝えるものにし、単にサハリンに行くといった通常の海外旅行との違いを演出したいと強調されました。これらの現場からの報告を受け、北海道教育大で観光学を教える池ノ上真一講師から、サハリンと稚内をセットで域外に魅せる観光商品づくりとサハリンと稚内の域内の相互交流の両面から地域振興を考えることの重要性を考えるべきだとの問題提起があり、観光学の知見から高田報告及び今村・濱の発言の意味を読み解いていただきました。
道、ビジネス、観光などの様々な関係者が見守るなか、フロアからも活発な質問が相次ぎ、「今年もっとも刺激をうけたセミナーだった」との声も来場者からは聞かれました。なお、高田研究員の分析結果は、近日、公開されます。
(文責:岩下 明裕)