2015年11月1日(日)、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(以下、AA研)にて、2015年度地域研究コンソーシアム(JCAS)年次集会が開催された。午前中は総会が行われ、1.加盟状況と運営体制、2.各活動分野の進捗状況と課題、3.来年度に向けての総括と展望などが報告された後、第5回地域研究コンソーシアム賞の授賞式が行われた。この中で、UBRJも加盟している境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)が実施する「境界地域を結ぶ『公・学・民』の研究・実務連携と社会貢献」が社会連携賞を受賞した。なお、授賞理由としては、第一に我が国のボーダースタディーズ(境界研究)を通じて教育・研究機関のみならず、自治体、公益法人、NPOなど多様な境界域のステークホルダーを包摂する活動であること、第二に地域研究の醍醐味であるフィールドワークや国際会議及びセミナーなどによる研究や「学び」とボーダーツーリズムなど地方活性化につながる社会実践とを見事に結び付けていること、第三に地域を超えた共通課題を共有しつつ、国際的にも開かれた活動によって我が国の地域研究の地域横断的、国際的展開を行っていることなどがあげられた。その上で、JIBSNの今後の持続的展開、新たな挑戦への期待が授賞理由に込められていることも表明された。これに対し、受賞者を代表して、根室市副市長の石垣雅敏さん(JIBSN代表幹事[根室市長]の長谷川俊輔さんの代理)がJCASからの授賞に対する謝意とともに今後の活動に対する抱負を述べられた。
午後は一般公開シンポジウムが開催された。シンポジウムのタイトルは「境界領域への挑戦と『地域』」と題し、日本エネルギー経済研究所の保坂修司さんが「まっすぐな国境線―アラビアのロレンスとイスラム国」、AA研の錦田愛子さんが「見えない境界をめぐるパレスチナとイスラエルの攻防―国家承認、エルサレム、和平分割案」、東京大学の松里公孝さんが「ボーダーを堅牢化しない紛争―ウクライナほか環黒海地域の経験から」、JETROアジア経済研究所の武内進一さんが「アフリカの国境は紛争の主因か?」、AA研の床呂郁哉さんが「ボーダーの形成と越境のダイナミクス―東南アジア海域世界の事例から」と題する報告をされた。そしてこれら中東、ユーラシア、アフリカ、東南アジアの境界問題に関する報告を受けて、国際移住機関(IOM)駐日事務所の清谷典子さんと北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕さんがコメントをされた。特に岩下さんの各報告者に対する「皆さんの研究地域において『国境』は必要なのでしょうか」という問いは日本国内におけるボーダースタディーズのグローバルな展開を考えさせるものであった。
主催者によれば、今回のシンポジウムには例年以上の80余名が参加し、「境界」に関する関心の高さが窺えた。最後に、この年次集会の準備や当日の開催に奔走されたJCAS関係者に心から感謝を申し上げて本参加記を締めくくりたい。
(文責: 古川浩司)
公開シンポジウムでの岩下明裕・UBRJユニットリーダー