岩下明裕がメキシコ自治工科大学にてボーダースタディーズの集中講義を実施
メキシコティのメキシコ自治工科大学(ITAM)で8月12日か26日までボーダースタディーズの集中講義を実施しました。これは国際交流基金の吉田茂チェアー・プログラムとして、ITAMのウリセス・グラドナス教授が主催したものです。およそ2週間で計21時間にわたる講義を、北海道大学グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」のDVD「知られざる国境シリーズ」を教材に、中露、中央アジアのユーラシアの国境問題から、日本をとりまく領土問題、ボーダースタディーズの諸理論、ボーダーツーリズムなど様々なテーマで行いました。参加した学生は40人を越え、全員がルートリッジ社から最近出版された
最終日は9組に分かれてグループ・プレゼンテーションを行いましたが、これは本ユニットで実施しているサマースクールの手法を応用したものです。一番人気は、時節を反映してか、尖閣問題。中国組と日本組に分かれて議論を闘わせました。その他、日米同盟、日中関係、朝鮮半島問題など戦略的なテーマがあるかと思えば、ボーダースタディーズの理論的動向を追跡した秀逸な発表もありました。日本人の留学生も3名おり、熱心に学んでいました。個人的にびっくりしたのは、中露関係のプレゼンテーションで、旧著『中・ロ国境4000キロ』(英語版)を参考にした報告があったことでした。最終日、学生のほとんどが興奮状態で、それぞれの報告に対して質疑応答が飛び交い、最高のフィナーレを迎えました。
これまでボーダースタディーズは、メキシコではシウダー・ファレスなど国境地域でしか知られていなかったように思いますが、南シナ海問題を専門とするグラナドス教授のイニシャティブにより、今後はアジア研究やボーダースタディーズそのものがメキシコ全体で発展していくものと期待します。またITANの学生が近い将来、北大サマーインスティチュートに参加することになるのではないかと楽しみにしています。
今後はグラドナス教授との連携で、ITAMを拠点に、キューバやグアテマラなどで調査やセミナーを実施する予定です。ボーダースタディーズの中南米展開にどうぞご期待ください。
(文責: 岩下明裕)