昨年度まで境界研究ユニットで助教として活躍されてこられた地田徹朗さん(名古屋外国語大学准教授)による、セミナー「越境災害:アラル海地域の復興はどうあるべきか」が開催されました。司会は地田さんの後任として4月から赴任したジョナサン・ブルさんが担当し、20人近い参加者がありました。
地田さんはもともと歴史研究者として研鑽を積んでこられた方ですが、本ユニットでボーダースタディーズの事業とかかわることにより、地理学にも覚醒され、本報告でも中央アジアの境界地域における環境問題の越境的アスペクトを、自ら考案したモデルを使いながら分析するなど、環境地理学、あるいは政治地理学を彷彿させる内容となりました。また報告は巡検での成果やツーリズムの試みなど盛り込むなど、聴衆を飽きさせない展開で構成されていました。質疑応答もフロアから鋭いものが多く、アラル海の越境災害が(チェルノブイリがそうであったように)ソ連解体に与えた影響を問うものなど活発な論議がなされました。地田さんが名古屋の新しい職場においてボーダースタディーズの旗を立て、研究コミュニティの輪を一層広げてくださることが期待されます。
(岩下明裕)