スラブ研究センターニュース 季刊 2004年 夏号 No.98 index




研究の最前線

センターでICCEES理事会とシンポジウムを開催

 5月27日、センターにおいてスラブ研究に関する唯一の世界学会である国際中・東欧研究協議会(International Council for Central and East European Studies: 略称ICCEES)の理事会メンバーを迎えて、21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」、スラブ研究センター、そして日本ロシア・東欧研究連絡協議会(JCREES)が共催する国際シンポジウム「21世紀スラブ・ユーラシア研究の行方  Where the Slavic Eurasian Studies are Headed in the 21st Century?」が開催されました。開催に先立って、理事達は中村睦男総長を表敬訪問し、日本におけるスラブ研究、北大の対外交流などについて親しく総長と懇談しました。
 今回のシンポジウムにはICCEES理事会構成員10名のうち、以下の9名の方が参加しました。

S.キルシュバウム(S. Kirschbaum)ヨーク大学、カナダ——スロヴァキア政治・歴史専攻
J.ミラー(J. Millar)ジョージ・ワシントン大学、米国——ロシア経済専攻
L.ホームズ(L. Holmes)メルボルン大学、オーストラリア——ロシア政治専攻
J.エルスワース(J. Elsworth)マンチェスター大学、英国——ロシア文学専攻
T.ブレーマー(T. Bremer)ミュンスター大学、ドイツ——ロシア史専攻
G.ミンク(G. Mink)ソルボンヌ大学、フランス——ロシア・中欧政治専攻
L.ヨンソン(L. Jonson)国際関係研究所、スウェーデン——ロシアの対中央アジア政策専攻
W.メランコ(W. Melanko)フィンランド——ウクライナ文献学専攻
木村汎、拓殖大(北大名誉教授)、日本——ロシア外交専攻

あと一名の理事はロシアの代表ですが、今回は諸般の事情で参加が叶いませんでした。


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 さて、本シンポジウムでは、主催者の21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」の研究テーマに沿って、 上記の9名がそれぞれの国におけるスラブ研究の現状と問題点、さらには今後の研究への提言を報告しました。 主要国における研究の在り方がこのようなシンポジウムの形でまとまって報告され、議論されるということは、ほとんど前例がないことです。 今回の会議により社会主義体制崩壊後の各国の研究体制の異同が明瞭になりました。 すなわち、ドイツ及び英語圏4ヵ国(英米豪加)と他の4ヵ国ではかなり対照的な事態が生まれているのです。 つまりソ連東欧研究を国家戦略としていた前者の国々では、社会主義圏の崩壊と共に研究体制が大幅に縮小し、 研究予算問題が深刻化したのに対し、後者では反対にロシア東欧研究が後押しされる(仏)、 あるいはバルト独立など新たな問題関心が生まれる(ス)、ロシアとの長くて特殊な関係が再認識される(フィ)など、 体制崩壊はむしろ新規の研究を掘り起こす方向に作用したようです。この点で日本は後者に入り、ウクライナ研究、コーカサス研究、 中央アジア研究などで大きな進展が見られるようになっています。もっとも日本人理事の木村汎氏は、英語での発信力が弱いと述べ、 日本におけるスラブ研究が抱える年来の問題点を指摘し、今後の改善を訴えました。

 共通の関心事として議論が沸騰したのは、この地域全体をめぐる新たな名称設定です。東欧拡大ないし拡大欧州、ユーラシア、 スラブ・ユーラシア、東欧及びユーラシア等、様々な案が出されましたが、いずれも分析方法あるいは分析視角の違いと結びついており、 「終わりなき議論」となりました。この問題はまさに21世紀COE「スラブ・ユーラシア学の構築」の中心的なテーマであり、 かつ現ICCEES理事会にとっても焦眉の論争点です。 またセンターの側からは現地研究者と対等な協力関係を作るための具体的な提言を含んだ議論も提示され、 予定されていた討論時間はあっという間に過ぎてしまいました。

 また今回のシンポジウムには、いま新たにロシア研究が広がりをみせている韓国から参加者があり、 日本統治時代を含めた韓国におけるロシア研究の歴史が紹介されました。センターでは昨年から韓国との研究交流を積極的に進めており、 その一環として今回のシンポジウムにも韓国研究者が参加しました。

 来年度はICCEESの5年に一度の国際大会がベルリンで開催されます。 センター及び21世紀COE「スラブ・ユーラシア学の構築」としては今回の議論なども踏まえて、 ベルリン大会で5つの独自セッションを開催する予定です。 ICCEES国際大会でこれだけの数のセッションを日本人研究者が組むのは初めてであり、是非とも成功させるべく、 十分な準備を進めていくつもりです。

 なお今回のICCEESシンポで報告された各国のスラブ研究事情は、関西でのJCREES主催による研究会でも報告されましたが、 近くセンターのホームページを含む公開の場で発信いたしますので、広く皆様方にご覧いただけることになります。

[21世紀COE拠点リーダー 家田修]







ヌルガリエフ・カザフスタン大使講演会開かれる

ph02  6月17日に、駐日カザフスタン大使のボラト・ヌルガリエフ(Bolat Nurgaliev)氏をお迎えして、 北海道スラブ研究会主催の講演会がセンターで開かれました。氏はソ連外務省・大使館勤務を経てカザフスタンの外務次官、駐米大使、 駐韓大使を歴任され、昨年12月に日本に着任された方です。着任後既に数度の講演会や各界関係者との面談をこなされ、 両国関係の強化に積極的に取り組まれていますが、大学での講演はこれが初めてとのことです。

 「カザフスタン共和国の対外政策の主な方向」と題する講演では、カザフスタンのアメリカ、EU、ロシア、中国、ウズベキスタン、 そして日本との関係を論じられ、同国ができるだけ多くの国々と友好的な関係を保とうとしていることを強調されました。 ナザルバエフ大統領の提唱によりアジアの安全保障を話し合う場として設立された「アジア相互信頼醸成措置会議(CICA)」 について特に詳しく紹介され、またカザフスタンの核兵器廃棄や外資誘致にも触れられました。 日本・カザフスタン関係のポテンシャルは多方面にわたってあるのにまだ活かされていない、と述べられたのが印象的でした。

 会には学内はもちろん北海道開発局、JICAなどからも関係者が参加し、盛況でした。 出席者からは、対米・対露外交の優先度、上海協力機構やCISに対する見方、 カザフスタン外交の組織的基盤などについて質問・コメントが出され、活発な討論が繰り広げられました。

[宇山]







連続セミナー「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」

 拠点形成プログラム「スラブ・ユーラシア学の構築:中域圏と地球化」は、 研究面のほかに若手研究者養成という教育の側面を持っており、 センターが担当する北海道大学大学院文学研究科スラブ社会文化論専修における教育の充実と、 大学の垣根を超えた若手研究者の育成と支援のために、新規の事業や従来の制度を発展させた事業をおこなうことを謳っています。 そのような取り組みの一つとしてセンターでは、 連続セミナー「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」をこれまで4回開催しました(ニュースNo.97参照)。 次回のセミナーは「サハリン・樺太の歴史」特集とし、次のようなプログラムで開催する予定です。問い合わせ先はセンターの原です。

[原]

 
第5回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会

日程:2004年7月29日(木)・30日(金) 会場:スラブ研究センター大会議室
7月29日(木)11:00–17:10
特別講演 マリーナ・イシチェンコ(サハリン国立大/ロシア)

「19世紀後半–20世紀初頭におけるサハリン島の人口」(ロシア語・通訳つき)
第1セッション: 天野尚樹(北大文学研究科博士後期課程)

「『ロシア』の範囲:19世紀後半におけるロシア人のサハリン認識」

麓慎一(新潟大教育人間科学部)

「19世紀後半における日露関係と樺太問題:幕末・維新期を中心に」
第2セッション: 倉田有佳(北大文学研究科博士後期課程)

「Kh.P.ビリチの生涯:20世紀初頭のロシア極東と日本」


7月30日(金)10:10–17:10
第3セッション: 井澗裕(センター21世紀COE非常勤研究員)

「ユジノ–サハリンスク:その都市史論的予備考察」

板橋政樹(日本ユーラシア協会北海道連合会)

「日露戦争と樺太『残留ロシア人』」
第4セッション: 池田裕子(北大教育学研究科博士後期課程)

「1930年代の樺太における実業教育:樺太庁拓殖学校を中心として」

三木理史(奈良大文学部)

「1930年代の樺太石炭業と拓殖計画」

竹野学(北大経済学研究科)

「戦時期樺太における製糖業の展開」







北海道スラブ研究会の総会・研究会

 4月28日に「北海道スラブ研究会」の総会・研究会が、スラブ研究センター大会議室で開催され、 道内の研究者・市民を含む多数の会員が参加されました。 総会では、今年度の役員について、以下のように決められました。


役員一覧
世話役代表: 田畑伸一郎(センター、新任)
世話役: 大西郁夫(北大文学部、留任)、佐々木洋(札幌学院大、留任)、杉浦秀一(北大言語文化部、留任)、 田口晃(北大法学部、留任)、所伸一(北大教育学部、留任)、松田潤(札幌大、留任)、 山田久就(小樽商大、新任)、吉野悦雄(北大経済学部、留任)
会計係: 大須賀みか(センター、留任)
会計監査: 吉田文和(北大経済学部、留任)
連絡係: 山村理人(センター、新任)

 総会の後、引き続き研究会が開かれ、井澗裕・センター21世紀COE研究員による「サハリンの日本期建築: その歴史と現況」という報告がおこなわれました。現地で撮影されたスライド写真を豊富に使った報告の中で、 現在でも日本期における建築物が予想以上に多く残っていると同時に、歴史的価値を持つそれらの建築物の多くがソ連崩壊後、 維持管理が困難になっている状況が示されました。報告後の会場内の討論でも活発な議論がかわされました。
 また、この他に、北海道スラブ研究会では、4月12日に、センター外国人研究員(21世紀COE短期滞在プログラム)のラコバ氏、 ノヴィク氏による研究報告会、6月17日に駐日カザフスタン大使のヌルガリエフ氏による講演会が実施されました。

[山村]






2004年度科学研究費プロジェクト

 2004年度のセンター教員が代表を務める文部省科研費補助金による研究プロジェクトは次の通りです。

[畑]

【基盤研究(A)】
■家田修 「東欧の地域社会形成と拡大EUの相互的影響に関する研究」(2002–04年度)
■田畑伸一郎 「ロシアの世界経済との統合に関する総合的研究」(2001–04年度)

【基盤研究(B)】
■山村理人 「旧ソ連諸国における農業インテグレーションの展開とその多面的影響」(2004–06年度:新規)
■岩下明裕 「ポスト冷戦時代のロシア・中国関係とそのアジア諸地域への影響」(2003–05年度)
■原暉之 「日露戦争期の東北アジア国際関係:未公刊文書史料を中心とする研究基盤の形成」(2003–04年度)
■望月哲男 「転換期ロシアの文芸における時空間イメージの総合的研究」(2002–04年度)

【基盤研究(C)】
■宇山智彦 「中央ユーラシアの近代化における知識人の役割の比較研究」(2004–05年度:新規)









2004年度COE=鈴川基金奨励研究員の決定

 鈴川正久氏のご寄付により1987年に発足した鈴川基金の奨励研究員制度を利用して、 これまでに多くの大学院生がセンターに滞在し、センターおよび北大附属図書館の文献資料の利用、 センターで開催されるシンポジウム・研究会への参加、センターのスタッフとの意見交換をおこない、 実りのある成果を挙げてきました。昨年度21世紀COEプロジェクトの発足にともない、今年度から2007年度までの間は、 新たに「COE=鈴川基金奨励研究員」という名称で奨学研究員の募集をおこなうことになりました(ニュースNo.96)。 選考の結果、多数の応募者の中から本年度の奨励研究員に選ばれたのは、次の9名の方々です。

[原]

井手康仁 所属 慶應大・院・法学研究科博士課程

滞在期間 2004.7.14–7.31

ホスト教官 岩下明裕

研究テーマ 現代の日ロ(ソ)外交、とりわけ80年代以降
大高まどか 所属 東京大・院・人文社会系研究科博士課程

滞在期間 2004.7.13–8.2

ホスト教官 望月哲男

研究テーマ ソ連邦崩壊後のロシア連邦および中・東欧諸国における諸宗教の衝突・共生
大山麻稀子 所属 千葉大・院・社会文化科学研究科博士課程

滞在期間 2005.1.20–2.3

ホスト教官 望月哲男

研究テーマ ナロードニキ運動の1880年代における展開と形象
長縄宣博 所属 東京大・院・総合文化研究科博士課程

滞在期間 2004.8.23–9.7

ホスト教官 宇山智彦

研究テーマ ロシア帝国末期のムスリム社会と国家
平松潤奈 所属 東京大・院・人文社会系研究科博士課程

滞在期間 2004.7.12–7.26

ホスト教官 望月哲男

研究テーマ ソ連文学、特にスターリン文化の身体表象に関する問題
福間加容 所属 千葉大・院・社会文化科学研究科博士課程

滞在期間 2004.9.1–9.21

ホスト教官 原暉之

研究テーマ ロシア近代美術史、20世紀初頭の象徴主義芸術と神秘思想
松本かおり 所属 大阪大・院・言語文化研究科博士課程

滞在期間 2004.7.14–7.31

ホスト教官 田畑伸一郎

研究テーマ 1990年代ロシアの若年層の職業意識と労働市場の変化
宮川絹代 所属 東京大・院・総合文化研究科博士課程

滞在期間 2004.7.16–7.29

ホスト教官 望月哲男

研究テーマ 20世紀ロシア文学、特にブーニン
Vassiliouk, Svetlana 所属 法政大・院・社会科学研究科博士課程

滞在期間 2004.7.1–7.21

ホスト教官 荒井信雄

研究テーマ 70年代以降の日ロ関係におけるエネルギー政治







センター第19回公開講座
「ロシアを見た日本人・日本を見たロシア人」

 今年で19回目を迎えたスラブ研究センター公開講座が、5月10日(月)から5月31日(月)までの毎月曜と金曜に、 計7回にわたって開かれました。


公開講座日程 (毎週月・金曜日 午後6時30分–8時30分)
【第1回】5月10日(月)
国家のはざまに生きた人々:北東アジア近現代史への一つの視点


原暉之(センター)
【第2回】5月14日(金)
日本からロシアへ:漂着民ゴンザとロシアの日本学


上村忠昌(鹿児島工業高等専門学校)
【第3回】5月17日(月)
根室から見える日ロ関係史:ラクスマン、ゴロヴニン、リコルド、高田屋嘉兵衛


川上淳(根室市教育委員会)
【第4回】5月21日(金)
オハ捕虜収容所:北樺太の日本人抑留者


松井憲明(釧路公立大)


西村巌(樺太関係首長・議員協議会)
【第5回】5月24日(月)
戦時下の日露漁業:「国策」を担った漁船員たち


鈴木旭(北大名誉教授)
【第6回】5月28日(金)
小野アンナの生涯:ペトログラード、東京、スフミ


小野有五(北大院地球環境科学研究科)
【第7回】5月31日(月)
「越境者」が教えてくれたこと:ソ連に残った日本人とコリアン


荒井信雄(センター)
   

 今年から来年にかけて、日露戦争開戦100周年、日露両国が国交を樹立した下田条約締結150周年、 1945年8月のソ連対日参戦から60年など、日ロ両国の関係史の重要な節目を振り返る機会が多いことから、 両国関係史を「人物史」として捉えることを公開講座のねらいとしました。 各回の講義での主題となった人物の多くは、両国関係史のうねりのなかで、いわば非自発的に、互いの国に至ったり、 あるいは、両国関係で役割を果たすことになった人びとです。

 講義の展開は、かならずしも時代の流れとは一致しませんでしたが、1918年からのシベリア出兵期にロシア極東の知日家が、 出兵した日本軍との関係でたどった複雑な運命について新しい史料も踏まえて紹介する第1回から始まり、 「ロシアを見た日本人」としては、江戸時代に漂流してロシアに至った漂着民たち、 明治時代から第2次大戦中までの時期にカムチャツカなどロシア領土・領海で漁業・水産加工に従事した人々、 1945年から北樺太の収容所生活を体験した人々など。また、「日本を見たロシア人」についても、 18世紀半ばに蝦夷地を訪れたロシアの冒険商人たち、最初のロシア遣日使として根室で越冬し、 ロシアの文物に日本人が直接触れるきっかけをつくったラクスマン一行、20世紀前半に来相次いで来日し、ヴァイオリン教育で、 また画家として、日本の芸術に大きな影響を与えたアンナ・ワルワラのブブノワ姉妹など。 いずれの場合にも、日ロ関係の正史に名を残すことが少ないものの、 それらの人々の体験が日本におけるロシア・イメージに影響を及ぼした人びとが取り上げられました。

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 閉講時のアンケートでは、「日本の西端(鹿児島)と東端(根室)からの講師の問題意識が重なり、最新の研究成果を盛り込んで、 200年前のできごとを現代につなげて理解できた」、「収容所生活を実際に体験した講師の話が貴重だった」、 「ブブノワ姉妹をめぐる家族の歴史に感銘を受けた」など高い評価を得ました。

 なお、各講義の概要は、北海道開発問題研究調査会の雑誌『しゃりばり』に近く連載されます。

[荒井]







マリーナ・イシチェンコ氏の滞在

 ロシアのサハリン国立大学のマリーナ・イシチェンコ(Марина Ищенко) 氏が国際交流基金の招聘フェローとして、本年6月初めから11月末まで6ヵ月間の予定でセンターに滞在しています。 専門は歴史民族学で、日本での研究テーマは「サハリンの日本人:問題の民族学的諸相」です。受け入れ研究者はセンターの原です。

[原]



専任研究員セミナー

 新年度にはいり、専任研究員セミナーが2つおこなわれました。


【1】5月6日 岩下明裕

"The Search for a New Exit from Japanese–Russian Territorial Deadlock: Lessons from Sino–Russian Border Negotiations"

外部コメンテーター:田中孝彦(一橋大)

【2】5月7日 松里公孝

"Islamic Politics at the Subregional Level of Dagestan: Tarika Brotherhoods, Ethnicities, Localism and the Spiritual Board" (Magomed–Rasul Ibragimov との共著)

外部コメンテーター:北川誠一(東北大)、森本一夫(北大)

 岩下報告は、なかなか解決の糸口が見つからない北方領土問題・日露国境画定問題について扱ったものです。 中ロ国境画定作業の経験などを比較参考にしながら、日露間で問題が進展しない要因と今後の展望を独自の視点で分析し、 政策的提言をおこなっています。
 松里報告は、ダゲスタンにおける政治と宗教の問題を扱ったもので、民族的対立、地域対立、 スーフィズムが支配的なイスラム内部の対立的要素などいくつも対立軸が複雑に絡み合っているダゲスタンの状況を、 サブリージョン・レベルでの現地調査を踏まえて明らかにしようとしたものです。 コーカサス地域のイスラム問題という新境地に挑戦したものということで、 報告者の強い希望により2人の外部コメンテーターを招くという異例の形でおこなわれました。

[山村]







研究会活動

 ニュース97号以降の北海道スラブ研究会およびセンター研究会の活動は以下の通りです。

[大須賀]


4月28日 井澗裕(センター)「サハリンの日本期建築:その歴史と現況」


(北海道スラブ研究会総会)(記事参照
5月17日 SES–COE「地域研究と中域圏フォーラム」第2回研究会

宇山智彦(センター)


「中央ユーラシア研究からの展望:地域概念・帝国論・グローバル化論」
5月20日 第1回東欧中域圏研究会

板橋拓己(北大・院)


「フリードリヒ・ナウマンの『中欧論』とその反響」
5月24日 第4回「ロシアの中のアジア/アジアの中のロシア」研究会

長縄宣博(東京大・院)


「日露戦争期ロシア軍のなかのムスリム兵士」

松本郁子(京都大・院)


「太田覚眠論:日露戦争とシベリア出兵をめぐって」
5月25日 V. ベロウース(ペテルブルグ林業アカデミー、ロシア)


「ペトログラード自由哲学協会(ロシア語)」(センターセミナー)
5月26日 田畑伸一郎(センター)、松里公孝(同)、家田修 (同)、岩下明裕(同)、藤森信吉(同)


「韓国・ロシア・ウクライナの学会との交流印象」(昼食懇談会)
5月27日 ICCEES研究会「21世紀のスラブ・ユーラシア研究の行方」(記事参照
6月7日 M. トシムハンマドフ(在タジキスタン日本大使館・政治アドバイザー)


「タジキスタン内戦と戦後復興(ロシア語)」(SES–COEセミナー)
6月10日 G. ジュークス(メルボルン大学、オーストラリア)


"Future Prospect of the Russian Far East in Context of Putin's Foreign Policy"(SES–COEセミナー)
6月12日 第2回東欧中域圏研究会

宮崎悠(北大・院)


「ロマン・ドモフスキのパトリオティズム:国民への政治(ポリティカ・ナロドーヴァ)は独立ポーランドの基礎となるか」
6月17日 B. ヌルガリエフ(駐日カザフスタン共和国大使)


「カザフスタンの外交政策(ロシア語)」(北海道スラブ研究会、記事参照
6月24日 SES–COE「地域研究と中域圏フォーラム」第3回研究会

岩下明裕(センター)


「国境の透明化と地域新形成:『4000キロ』と『世界政府』のあいだ」


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