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● 開講にあたって
2004年10月にロシアと中国の国境問題が全面解決したのを契機に、日本とロシアの国境 問題も解決への気運が高まっています。しかし、同時に日本とロシアの言い分は真っ向から対立し、具体的な解決への展望はいまだ見いだせません。そこで今回 の講座は、日ロ交渉の昨今の動向を念頭におきつつも、あえて日ロ以外の国境問題に焦点を絞り、世界の事例を学ぶことで「北方領土問題」へ新たな光を当てる ことを目的に企画されました。
世界に眼を向ける理由のひとつは、およそ国境問題がその当事国間の歴史のなかで考察される かぎり、解決策の発見が容易ではないという点にあります。積み重なった感情的対立や歴史のわだかまりは、しばしば双方のナショナリズムに火をつけ、国境問 題をより複雑にし、解決を難しいものとします。これは昨今の竹島問題(日本と韓国)、尖閣列島問題(日本と中国)の先鋭化をみても明らかです。
今回の講座では、ユーラシア及び隣接地域を中心として、その国境問題を広い視野で学ぶこと を計画しています。ヨーロッパ、コーカサス、中央アジア、インド、パキスタン、中国、韓国など様々な地域の国境問題を、歴史・民族・国際関係などの重層的 な視点で比較・検討します。講座を通じて、いろいろな地域の内実やその困難さがあぶり出され、国境問題解決の成功例や失敗例が真摯に受け止められ、日本と ロシアの問題解決に向けてのなんらかの教訓が引き出されればとも考えています。
本講座は21世紀COEプログラム「スラブ・ユーラシア学の構築」との連携協力のもとで開 催されるため、例年より多くの参加者を募集いたします。また講師も各地域の国境問題に関して、第一人者をそろえることができました。とくに南アジア、朝鮮 半島、中国の国境問題をあわせて学ぶには、本講座は最良の機会だと確信します。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。
(スラブ研究センター)
● 開講日程
毎週月・金曜日 午後6時30分〜午後8時30分日 程 | 講 義 題 目 | 講 師 | |
第1回 | 5月9日(月) | 日本の外で「固有の領土」論は説得力を持つのか:欧州戦後史の中で考える | 北海道大学スラブ研究センター 教授 林忠行 |
第2回 | 5月13日(金) | 国境と民族:コーカサスの歴史から考える | 北海道大学スラブ研究センター 講師 前田弘毅 |
第3回 | 5月16日(月) | 旧ソ連中央アジアの国境:20世紀の歴史と現在 | 国立民族学博物館地域研究企画交流センター 助教授 帯谷知可 |
第4回 | 5月20日(金) | カシミールと印パ・中印国境問題 | 広島大学 教授 吉田修 |
第5回 | 5月23日(月) | 竹島問題と日本の課題 | 拓殖大学 教授 下條正男 |
第6回 | 5月27日(金) | 中国と日本・ASEAN間の国境問題:波立つ東シナ海と平穏な南シナ海 | 東京大学 教授 石井明 |
第7回 | 5月30日(月) | 中ロ国境問題はいかに解決されたのか?:「北方領土」への教訓 | 北海道大学スラブ研究センター 教授 岩下明裕 |