Copyright (C) 1999 by
Slavic Research Center
,Hokkaido University.
All rights reserved.
第3回研究会
1. 日 時: | 平成11年11月26日(金) 16:00〜18:00 |
2. 場 所: | スラブ研究センター420会議室 |
3. 講 師: | 大塚夏彦氏 |
北日本港湾コンサルタント(株) | |
「原油流出に伴う被害想定」 | |
山村悦夫氏 | |
地球環境科学研究科 | |
「地理情報システムによるサハリンの地域環境概要」 | |
大塚報告「原油流出に伴う被害想定」
大塚:
本日は、オホーツク海における原油流出に伴う被害想定について報告させて頂きます。本日の報告の概要ですが、まずサハリンの原油開発に伴いまして北海道の側で原油流出事故が発生した場合を想定しまして、北海道地域への影響や経済的な被害規模について検討しましたのでその結果をご報告させて頂きたいと思います。また流氷時期に流出事故が発生するとどんなふうになるか、どのような事態が起きるか、ということについても簡単に紹介させて頂きたいと思っております。
皆さんもうすでにご存知のことですが、サハリン〜Uについてプラットフォーム・モリクパックから2キロほど海底パイプラインで原油を輸送し、その後FSO(ストレージタンカー、15万DWTクラス)に積んでさらに9万tクラスのタンカーで積み出しを行います。確か9月でしたか第一船でピリトゥン・アストフスコエ鉱区から宗谷海峡を渡って韓国の製油所に原油が運ばれたわけです。宗谷海峡付近でこれまでどのような海難事故が起きたかをまず調べてみますと、だいたい宗谷湾内、ほとんど稚内港に入った船ですが、およそ毎年一回くらいずつ海難事故が発生しております。例えばレーダー故障と暴風雪で操船を誤まって座礁したとか、あるいはレーダーの誤認と暴風雪が重なって操船を誤って座礁したとか、さらにはレーダーが故障し、悪天候のために事故につながったという機関の故障と人為的な過誤というのが大きな原因になって、ほぼ毎年のように小規模事故が発生しているという状況です。最近、新聞報道にもありましたが、稚内とサハリン間の船の航行が非常に活発になっており、今後宗谷海峡付近での事故の危険性というが高まっていくのではないかというふうに考えております。それから世界的に見て皆さん、もうすでにご存知だと思いますけれど、大規模な石油流出はほとんどタンカーの事故に起因しております。今後、原油生産に伴いまして、サハリン〜Uが本格化いたしますとだいたい9万tクラスのタンカーが年間30往復くらいするのではないかと予想してみました。サハリン・エナジー社の生産計画から逆に算すると、計画通りに生産されればだいたい年間30往復くらいになるということです。9万tクラスのタンカーと申しますと、大体船の長さが200メートルから240メートルくらい、船の幅も40メートルくらいになります。このくらいの大きなタンカーが、30回くらい宗谷海峡を往復するということですので、仮にタンカーが良いタンカーであってもほかの貨物船が先ほどのようにレーダーが故障していたり、あるいはレーダーがまともに見れないという状況であると、船同士の海難事故というのも心配しなければいけなくなります。それから原油開発サイトの問題ですが、非常に波が大きいとか、あるいは冬期の解氷によるパイプラインへの衝突とか、地震等の原因による事故が想定されます。非常に大きな地震が起き得る場所ですので、そういった意味からも原油流出事故の危険性というのは開発に伴って当然高まってくるというふうに考えております。
そこで今回はサハリン原油開発に伴いまして宗谷海峡近傍で原油流出事故が起きたらどういう影響が起きるだろうかということを想定してみました。まず事故を想定してみなければならないということで、タンカーについてはシングルハル構造の9万tクラス。これは実際に今回積み出したタンカーも9万tクラスでシングルハル構造のものが用船されています。このクラスのタンカーになりますとだいたい油槽が分割位になっておりまして、9万tDWTクラスですと大体10万キロリットルくらい満載することができます。あとはどんな事故を想定しようかということなんですが、タンカーからの流出として座礁あるいは船同士の衝突等を想定して、大規模ではなくて小規模な流出を考えたのですが、それによって二つの油槽から大体25%位が流出するだろうという想定をしてみました。結局、油槽の穴の空いた場所によって全部流れるとは必ずしも限らないわけです。概算するとだいたい流出量は7000キロリットルぐらいになります。切りの良い数字ということで想定流出量5000キロリットルとして流出後の漂流解析を行った結果を本日ご紹介させて頂きたいと思います。それから事故地点ですが、今回積み出したタンカーの航路を予測しまして、宗谷海峡を通り日本海に入ったあたりをケースAと想定したのが一つ、それからもうちょっと手前でオホーツク海内で事故が起きたらどうなるかというケースがBです。さらに、もうちょっとありそうな話として操船を誤まってアニワ岬の方で座礁してしまったらどうなるだろうかという3パターンを流出点として予想してみました。