セミナー報告「日米間の領土問題とソ連のファクター」
ロ
バート・エルドリッヂ
イリノイ大学(ウルバナ-シャンペイン)
ロバート・エルドリッヂ客員准教授(Robert D.
Eldridge、大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)が、2008年8月18日、当センター主催のセミナーで、「日米間の領土問題とソ連のファク
ター:奄美、小笠原と沖縄」という題目で報告を行いました。
セミナーは、山村理人とディビッド・
ウルフ両専任研究員の司会の下で始まり、夏休みの最中にもかかわらず、センターの関係者など約10名が参加しました。エルドリッヂ氏は、10年以上前から
手がけている、ご本人の日米関係および領土問題について、その関心や研究の背景を紹介し、その後、奄美、小笠原及び沖縄の3つの島の個々の返還過程の概要
を紹介し、比較分析を行いました。今回の報告は、同氏の『奄美返還と日米関係』(南方新社、2003年)、『硫黄島と小笠原をめぐる日米関係』(南方新
社、2008年)、『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会、2003年)に依拠しており、2012年には『返還への道:戦後日米関係における沖縄、
1952-1972年』の刊行も予定されています。
今回のエルドリッヂ氏の報告の中心は、「ソ連ファクター」でした。氏の分析は、「冷戦」という一般的な観点にとどまらず、「ソ連ファクター」が実際にどの
ように、米国の占領・統治政策や日米の交渉に影響したかに踏み込みました。エルドリッヂ氏によれば、そのインパクトは次の4つの次元に整理されます。すな
わち、政治(ソ連が日本の政党や復帰運動に与えた具体的な影響)、外交(日米両国による「ソ連ファクター」の利用)、軍事(戦略、戦術、作戦、基地配備な
ど)、及び世論(日本および国際的なメディアなどへの影響)がそれです。
45分の報告の後、ディスカッションが行われましたが、特にセンターのウルフと岩下の両研究員から積極的な質疑が出ました。
(編
集部)
[研究
員の仕事の前線 indexページに戻る]
|