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センター長挨拶

 ご挨拶

野町 素己(SRC)


野町 素己  (SRC)

  北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターに着任してから、今年で16 年目を迎えます。着任以来、歴代の敏腕センター長および経験豊かな年長の同僚の下、素晴らしい事務スタッフに囲まれてのんびり勤務してきた私としましては、昨年4月にセンター長を拝命した時に、これまで優れた環境を提供してくださったSRCの皆さんに改めて感謝すると同時に、センター長として、SRC 職員全員がこれまで以上にやりがいを見いだせる職場の維持と発展に努めていくことを決心しました。まだ課題は多いですが、今年度もさらに努力して参ります。

 

  SRCのこれまでの維持と発展は、研究者コミュニティの多大なご支持があってこそです。今後も、スラブ・ユーラシア研究に関する共同利用・共同研究拠点として、国内外の研究者の皆様および研究コミュニティへの幅広い貢献を実現し、国内外のスラブ・ユーラシア地域研究およびそれに包含される各研究分野の発展に資するよう、さまざまな工夫をしていきたいと考えております。

 

  東欧革命やソ連崩壊から今日まで約30 年近くの月日が経ち、その間にSRCも当該地域の総合的な研究機関としての自らの存在意義に危機感を覚えることもありました。しかし、むしろ時間が経つにつれ、スラブ・ユーラシア地域研究の必要性は高まっているように感じられます。例えば、文学関係では2015 年にベラルーシ人作家スベトラーナ・アレクシエビッチが、2019 年にポーランド人作家オルガ・トカルチュクがノーベル賞を受賞し、中東欧文学から発信される普遍的な価値を改めて考える機会になりました。また、大変不幸なことではありますが、昨年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、現在もなお続いています。このような文脈を踏まえ、研究機関として、これまで以上にスラブ・ユーラシア地域研究の重要性を認識するとともに、当該地域に関する多角的な分析を行い、有意義な研究成果を発信していかなければなりません。また、スラブ・ユーラシアに隣接する国家・地域として重要な中国や中近東との関係も多元的で、今後ますます国内外の各地域研究者との連携を深め、共同研究を発展させていく必要があります。無論、得られた知見を限られた専門家の世界にとどめることなく、コロナ禍で学んだオンラインの手法も積極的に活用して、公開講座・講演会や各種セミナーを組織することで、これまで以上に幅広い成果の共有を目標とした社会連携にも積極的に取り組んでまいります。

 

  2021年にSRCは北海道大学の複数の文系部局とともに文部科学省の教育研究組織改組の一環である「領域を超えた地域研究振興のための拠点形成」のための追加予算を申請し、幸いなことに採択に至りました。これに合わせまして、2022 年4月に「生存戦略研究ユニット」が立ち上がりました。これまでSRCが促進してきたスラブ・ユーラシア地域の複数分野の研究から得られる、この混沌とした世界を生き抜くための知見を見出し、より広い学際的文脈で学術的理解を深化させ、研究成果を教育・研究コミュニティに、また実社会に有益な情報としてわかりやすく還元し、さらに世界的な問題の解決にも貢献していきたいと思っております。

 

  次世代研究者育成にもこれまで以上に力を入れていく必要が感じられています。スラブ・ユーラシア研究が包含するさまざまな分野を志す学生の数は、全国的に見ても昨今減少の一途をたどっているようで、こうした危機的状況を踏まえて、いかに次世代研究者を取り込んでいくか、これもこの拠点の重要な役割でしょう。

 

  以上に掲げた課題のいくつかは、SRCの課題であると同時に、複数の研究コミュニティにも何らかの形で共感・共有される内容であるとも考えます。したがいまして、関係者の皆様のご協力を賜りながら、少しでも実現に近づけられるようにと願っております。どうぞご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

  2023年4月1日  

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