日本ロシア・東欧研究連絡協議会
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第1回スラブ・ユーラシア研究・東アジア・コンファレンス開催される 松里公孝(SRC) 2月5-6日、第1回スラブ・ユーラシア研究・東アジア・コンファレンス(以下、東アジア学会)が開催されました。前回のニュースでもお伝えしましたが、24パネルが組織され、75ペーパーが発表されました。国別では、韓国から24、日本から19(そのうち6は日本在住外国人)、中国から16、台湾から1、モンゴルから1、ロシアから3、マレーシアと米国から1人ずつ報告者が参加しました。これとは別に、3国のスラブ研究の創成世代に属する和田春樹、李鳳林、ハ・ヨンチュル3氏が東アジアにおけるスラブ研究の黎明期の思い出と今後の展望について語りました。 ICCEESのホームページがこの催しを宣伝してくれたおかげで、アジア外からの報告希望は、実現されたものよりずっと多かったです。ロシアからだけで7提案、ベラルーシから1提案、マレーシアからも2提案ありました。アジア外からの参加者を資金援助する仕組みがなかったので、残念ながら、これら希望者の多くは参加を断念しました。ロシア極東やオセアニアからの参加を増やしてゆくことは、今後の課題となるでしょう。 あるパネルのようす スラブ研究センターの援助で、プログラムはネット上でも公表され、そこからペーパーをダウンロードする仕組みが作られましたが、何と75ペーパー中の69(92%)は事前に提出され、ダウンロードに付されました。これらペーパーの欧米査読誌での掲載を促進するために、『デモクラチザーツィヤ』誌からクリストファー・マーシュ・バイロン大学教授がお目付け役として招かれました。このほかにも、Europe Asia Studies がこの催しに大きな関心を寄せました。 歴史上最初の東アジア学会は、当初の目論見どおり、アジアのスラブ研究者の世界への貢献を増大するための飛躍台となりました。特に、韓国と上海の同僚は、2010年のICCEES世界大会(ストックホルム)に大挙して登録しました。東アジア学会に続いて、日本はストックホルムへの参加者でも韓国に追い抜かれるかもしれません。コンフェレンスの前夜に恒例の東アジア3学会長サミットが開かれましたが、慎重に話し合った結果、第2回目の東アジア学会は、2010年2~3月、ソウルで開催されることが決まりました。 今回のコンフェレンスの問題点は、まず、自発的に組織されたパネルが少なかったことです。パネルの半分以上は、個人提案を束ねてプログラム委員会が作ったものでした。それぞれに若手研究者を「オーガナイザー」として貼り付けて、パネル・プロポーザルを代筆してもらいました。私は冗談で、彼らをナカズヌィー・アタマンと呼びました。第2の問題点は、主催国・主催組織の負担が大きすぎることです。息ながくこうした行事を続けるには、当面の参加規模を大きくするための便法ではなく、主催者の負担を小さくし、パネル提案者がより大きな責任を負う放任主義(つまり、欧米の学会運営のあり方)に移行する必要があると思います。実際、二順目(つまり3年後)からはそうなると思います。 東アジア3国スラブ学会の協力については、センターニュースでも適宜お伝えしてきましたからここでは繰り返しませんが、やはり、日中韓のスラブ研究者が知り合い、コミュニティ意識を持ち、仲良しになったことが最大の成果でしょう。これは職業的な友情であり、相互刺激も大きかったと思います。たとえば、中国の同僚たちは、伝統的に、ペーパーを書くことにあまり力を割いてきませんでした。日本の研究者が「彼は、あんな報告繰り返してると、この世界でキャリアはないぜ」などと言うと驚きます。教授だろうと若手だろうと、ペーパーの1本1本が死活のテストなのだという感覚がないのです。研究者は、政府に対する政策提言がどの程度採用されたかなどの別の基準で評価されます。しかし、今回のコンフェレンスで感じたのですが、日本と交流歴の厚い中国人研究者は意識的にこの伝統を破りました。まともなペーパーさえ書けば、「中国の対中央アジア政策」のようなテーマは欧米人が喉から手が出るほど欲しい情報なのですから、欧米の査読誌に容易に載ります。逆に中国人研究者から言われるのは、日本の研究者は具体性のあるテーマを選んで良い現地調査をしているが、高位の指導者との人脈がないということです。確かに、日本のロシア研究者で高位の指導者との人脈を重視する研究姿勢をとっているのは袴田茂樹氏くらいではないでしょうか。こうした形で互いに良いところを学び、弱いところを自覚化してゆければいいと思います。 JCREESは、基本的にアジアは若手の訓練の場であると位置づけました。ですから報告者の中で私が一番年配だったのではないでしょうか。アジアで訓練され、北米や世界に向けて飛躍するという若手育成プランそれ自体はいいと思いますが、今回主催国でありながら報告数が3国で一番少なかったという事態はあまりいいものではありません。来年はもう少し、上の世代の参加を奨励した方がいいかもしれません。ソウルは食べ物がおいしいので、それも動機になるのではないでしょうか。 「スラブ研究センターニュース」117号(2009/5)から転載 |
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