日本ロシア・東欧研究連絡協議会

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(国際中東欧研究学会)

後継者育成に関するアンケート調査集計結果(2006年10月)

田畑 伸一郎(SRC)

 北海道大学スラブ研究センターでは、『スラブ・ユーラシア研究者名簿』改訂のためのアンケートをおこなった際に、日本ロシア・東欧研究連絡協議会(JCREES)からの委託により、後継者育成に関するアンケート調査をおこないました(質問票は、この記事の最後に添付しました)。
 『名簿』改訂のためのアンケート回答者1529名のうち、「後継者育成に関する調査」には、その13.7%に当る209名の方から回答がありました。「大学院教育に携わっている方のみ回答下さい」とい うアンケートでしたので、スラブ・ユーラシア地域研究においては、全国でこのくらいの数の方々が後継者育成に携わっていることになります。
 以下に、この集計結果を記します。 表1に示しましたように、回答者が指導教員となっている院生数は、全部で999名でした(1)。 このうち、スラブ・ユーラシア地域研究をおこなっている院生数は、その40.3%に当る403名でした。回答者は平均で1人当り4.8 人の院生を指導し、そのうち、1.9人がスラブ・ユー ラシア地域研究をおこなっている院生ということになります。さらに、そのうちの社会人と 留学生を除く院生数を尋ねたところ、287名という結果が得られました(2)。
 博士後期課程以 上の者に限定すると、全国で249名、社会人と留学生を除いて174名が、スラブ・ユーラシ ア地域研究の後継者として育っていることになります。


表1.スラブ・ユーラシア地域研究の大学院生数
  修士課程 博士後期課程 オーバードクター 合 計
指導教員となっている院生数 497 351 151 999
うち:スラブ・ユーラシア地域研究の院生数 154 170 79 403
うち:社会人と留学生を除く院生数 113 111 63 287


 研究テーマについてのアンケート結果は表2のとおりです(3)。歴史が84名でもっとも多く、次いで、文学・思想(67名)、言語学(56名)、経済(44名)、政治・社会・民族(43名)などが続いています(4)。また、地域別には、ロシアが圧倒的に多く、不明を除く363名のうち、その57.7%に当る198名がロシアを研究対象とするということでした。ロシアは、文学、言語学、国際関係などで他を引き離しているのですが、歴史や政治では東欧がもっとも多くなっています。歴史と政治ではロシアを除く旧ソ連も多くなっています。逆に、政治におけるロシアの少なさが目立っています。


表2.研究テーマ
  ロシア ロシアを除く旧ソ連 東 欧 その他 合 計
文学・思想 66 0 1 0 67
言語学 29 3 2 22 56
文化・芸術・宗教 15 0 3 2 20
歴 史 29 14 30 11 84
政治・社会・民族 9 14 19 1 43
国際関係 18 1 2 0 21
経 済 16 3 7 18 44
環 境 4 0 0 1 5
教 育 3 1 2 0 6
人類学・民俗学 5 0 2 2 9
考古学 2 0 0 3 5
その他 2 1 0 0 3
不 明         40
合 計 198 37 68 60 401


 最後に、所属学会についてのアンケート結果は表3のとおりです(5)。これについては、指導教員が把握していないケースも多いようで、スラブ・ユーラシア地域研究の院生全体の4分の1に当る101名が「不明」となっています(6)。学会別に見ると、日本ロシア文学会が66名で抜きん出ており、ロシア・東欧学会、比較経済体制学会、日本国際政治学会が続いています(7)。研究テーマで歴史が多かったのと比べると、歴史関係の学会所属者が少ないのは意外な感じですが、歴史関係はいくつかの学会に分かれているためかと思われます(8)。この調査で把握されている院生(302名)のうち、43.7%に当る132名が学会に所属していないという回答でした。スラブ・ユーラシア地域研究の院生総数の38.2%が修士課程の院生ですから(表1)、学会には博士後期課程以降の院生が入会すると想定するならば、博士後期課程の院生はほとんどがいずれかの学会に所属していることになります。この表3から計算すると、学会に所属している院生は、平均で1人当り1.3の学会に所属していることになります。


表3.所属学会
日本ロシア文学会 66
ロシア・東欧学会 29
比較経済体制学会 20
日本国際政治学会 15
ロシア史研究会 9
東欧史研究会 8
その他 79
無所属 132
以上で把握されている院生総数 302
不 明 101
合 計 403


以上の調査結果が今後のスラブ・ユーラシア地域研究の後継者育成に何らかの形で役立てられることを期待しています。このアンケートに関するご質問がありましたら、田畑までお寄せ下さい(shin@slav.hokudai.ac.jp)。


【注】

  1. 以下、「院生」は、修士課程、博士後期課程の院生とオーバードクターを含むものとします。ここでのオー バードクターの定義については、質問票の設問1の注*を参照下さい。
  2. 11人の回答者については、質問票の設問3の院生数が設問2の院生数を上回っており、設問の意味を誤解した(おそらく、指導教員となっている院生全体のなかでの社会人と留学生を除く院生数を回答した)のではないかと思われますので、「社会人と留学生を除く院生数」の集計においては、この11人の回答を除きました。したがって、実際には、「社会人と留学生を除く院生数」はこの表の数値より若干多い可能性があります。
  3. 「不明」は、回答がなかった数、あるいは、複数の院生を指導している回答者が、テーマ別の人数を正確に記載していないために、分類できなかった数です。これを除いた者については、できるだけ分野別の「その他」に入れないように、それぞれの分野を広めに解釈して分類しました。また、対象地域別の「東欧」は旧東欧の意味で、バルト3国は「ロシアを除く旧ソ連」に含まれます。対象地域別の「その他」には、とくに地域を限定しないような研究テーマの者などが含まれています。
  4. 法学は、分野別の「その他」に分類しましたが、2名だけでした。
  5. 学会の定義は、厳密には難しいところがありますが、ここでは、研究会という名称のものを含めて、 回答されたものすべてを学会として数えました。
  6. 90人の院生については、学会所属が「不明」という回答がありました。また、回答者が所属学会名を挙げたものの、人数を回答しなかったので、指導する院生のうちの何名かを「不明」扱いとせざるを 得なかったケースが11人分ありました。
  7. JCREESに加盟する団体のなかで、日本スラブ・東欧学会(JSSEES)という回答はゼロでした。
  8. 「その他」のなかに入れたものとして、内陸アジア史学会(5名)、史学会(4名)などがありました。ロシア史研究会と東欧史研究会が研究会という名称であるため、所属学会として記入されなかった可 能性もあります。


「後継者育成に関する調査」質問票

設問1.あなたが主たる指導教員となっている院生数を記入下さい。
修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター* 数_名
*博士後期課程に籍はないが、常勤職に就いていない者。日本学術振興会PD、任期1~2年のポスドク研究員などを含む。博士後期課程においてあなたが主たる指導教員となっていた院生で、現在オーバードクターとなっている者の数を記入下さい。

設問2.1のうち、スラブ・ユーラシア地域研究をおこなっている院生数を記入下さい。
修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター数_名
これら院生の研究テーマを記入下さい。(例:ロシア文学、ロシア中世史)
これら院生の所属学会を1人ずつ記入下さい。無所属の人数も記入下さい。(例:1人はロシア・東欧学会とロシア文学会。もう1人はロシア・東欧学会のみ。無所属が2名)

設問3.2のうち、社会人と留学生を除く院生数を記入下さい。
修士課程院生数_名  博士後期課程院生数_名  オーバードクター数_名


「スラブ研究センターニュース」107号(2006/10)から転載

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