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大陸棚開発関連の危機管理体制の比較研究: ロシア、ノルウェー、日本
皆川 修吾(北海道大学スラブ研究センター)
外国との流出油除去活動協力協定
ロシアは現在、ノルウェー、フィンランド、米国、カナダとこの種の協力協定を結んでおり、ノルウェーと米国との協定は前述の北極海航路での油流出緊急防
災計画に組み込まれている(1/2/5,
p.6)。つまり、緊急事態の時は、ノルウェーはバレンツ海で、米国はベーリング海で協力することになっている。ここでは、特にロシア・ノルウェー政府間
協定「バレンツ海における油流出防除計画」について触れることにする。この協定の全文をここに添付(別添1参照)した理由は、サハリン大陸棚での石油・ガ
ス開発と同じような開発が国境をはさみ、両国の大陸棚で行われていることである(本協定は1992年に締結され、1998年に若干の修正とかなりの付帯事
項が盛り込まれたが、後者は資機材に関する技術的な部分がほとんどを占めているためここでは1992年時の協定のみ添付)。両国の大陸棚での国境線を未画
定のまま、このような協定を結んでいるところに、本協力協定の環境保護上の重要性と、両国間の政治的意義が潜んでいると言える。また、オホーツク海での日
ロ間油汚染防除協力関係の参考になるであろう。
ロシア・ノルウェー政府間協定であるが、ロシア側の監督官庁は運輸省国家海洋汚染防除・救難管理部であり、ノルウェー側は環境省国家汚染管理局である。
この協定締結の背景には、ノルウェーの国営石油開発会社「スタトオイル」がネネツ自治管区沖合の大陸棚で原油生産しており、それを輸送タンカーでバレンツ
海ノルウェー領沿岸までシャトル輸送していることと、海流がノルウェー領からロシア領の方向に流れているため、原油流出防除の共同計画に両国の国益が一致
したことが考えられる。油流出発生の場合は相互の所管省の責任者にFaxで報告し、連絡担当官(リエゾン・オフィサー)を直ちに相互に送り込むことになっ
ている。本協定の最大の特徴は、原油流出の緊急時にお互いの領海内で共同防除活動ができることである(2/1/2;
2/2/16; 2/2/17)。
1999年9月28日「サハリン2」の掘削基地「モリクパック」で発生した原油流出は幸いにも小規模な事故で収拾したものの、流出事故に関する緊急連絡
体制の不備がいみじくも露呈し、日ロ2国間で事故対策と環境汚染防止体制作りが緊急の課題となった(1/2/16)。