1996年点検評価(抜粋)

自己評価 - 課題と将来構想 -
第三者による評価

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宇多文雄(上智大学)
木村 崇(京都大学)

自己評価 −課題と将来構想−


 この2年間に、センターは専任研究員の拡充、国際交流の拡大、重点領域研究と連動して展開されつつある共同研究の拡大などで、かなり大きな成果をみるこ とができた。しかし、なお満たされなかった問題は少なくないし、またこの2年間で新たに生じつつある問題もある。それらの問題の概要はすでに、本報告書の T−1−b.「スラブ地域研究の発展のための課題」で述べたとおりである。
 以下では、センターの活動にたいするセンター研究員自身による自己評価をいくつかの項目に限定して記述する。

@ 研究支援体制
 1)事務体制
 前回の点検評価報告書でも、事務定員の不足が指摘されている。1995年度にセンターの専任研究員を中心とする重点領域研究が開始され、それにともなっ て2名の非常勤職員が採用されたが、これは重点領域研究にともなって著しく増大した事務量の一部分を補うものにすぎず、従来の3名の事務定員(庶務・会 計・図書)にかかる事務量は2年前よりもさらに増加している。
 また、やはり1995年度からCOEプロジェクトによる非常勤研究員3名がセンターの活動に加わり、外国人研究員の研究活動、各種出版活動、共同研究の 組織業務などの補助にあたっている。しかし、これも増大した出版活動やCOEプロジェクトによる外国人研究員の増加、共同研究プロジェクトの拡大などにと もなう研究活動の著しい増加の一部を補うものにすぎない。したがって、本来は研究支援要員が担うべき業務のかなり大きな部分を専任研究員が直接担当しなけ ればならないというこれまでの状況はさらに深刻なものとなっている。

 2)図書事務
 図書購入量はなお増加傾向にあり、また電子情報などの新しいメディアによる情報集積という作業も加わりつつある。従来からの図書担当事務官1名に加え て、1990年からは講師1名(1994年からは助教授)が図書業務にあたり、1995年度はさらに講師をもう1名配置したが、人員配置の都合上、 1996年度からは図書担当事務官1名、講師1名という人員で図書業務を継続しなくてはならない。

 3)情報資料活動
 現在、情報資料部には助教授1名、講師1名、助手2名が配置されているが、そのうち助教授および講師はもっぱら図書業務にあたっているため、2名の助手 がそれ以外のすべての情報関連業務をこなさなくてはならない状況にある。
 *従来の出版業務としては、和文紀要、欧文紀要、研究報告シリーズ、シンポジウム報告書、和文ニュースレターがあったが、1994年度からは年1回の 英文ニュースレター の発行が加わった。国際的な情報発信という面で、この英文ニュースレターの発行は海外で好評を得ているが、情報資料部の業務量という観点からは従来にもま してその増加という結果を生みだしている。
 *センターが全国共同利用施設に改組されたあと、全国の研究者からは通信メディアを利用する情報提供がセンターに期待されてきた。センターでは、 情報資料部でスラブ研究者名簿、スラブ研究文献目録の作成が行われ、また生産環境部門と社会体制部門でもデータベース作成が進行 している。今後は、これらの情報をインターネットなどをとおして公開していくことが重要な課題となっている。しかし、現在の人員ではそうした需要に充分に 答えられない状況が継続している。
 *センターでは英語、ロシア語、東欧諸国語、中国語などきわめて多様な言語を母語とする外国人研究員が研究活動を行っている。また、外国人研究員がコン ピュータを使用して研究活動を行うことは常態となっている。しかし、これらの多様な言語でのコンピュータ使用にさいしては、かなりの量の技術的支援が必要 で、情報資料部ないし専任研究員が本来の業務の時間をさいてそれにあたらなければならい。

 4)外国人研究員 の受け入れ
 外国人研究員の増加によって、外国人研究員の日常的世話にかかわる仕事はさらに増加している。前述したように、COEプログラムによる非常勤研究員は、 外国人研究員の研究活動の補助以外に、そうした日常生活面での補助にも携わっているが、なお、専任研究員が担わなければならないこの種の仕事量は減少して いない。


A 研究活動
 1)専任研究員セミナー
 センターの研究員の活動を点検する場として、専任研究員セミナーが設けられ、そこで各自の研究活動に対する相互批判が行われている。これは、専任研究員 の個々の研究活動の水準を高め、かつ研究レベルでの相互理解を深め、センターの研究活動の学際性を強化するうえできわめて重要な役割をはたしている。しか し、研究員の増加にともない、各研究員が1年に1回という報告義務をはたすための日程調整が困難になりつつある。これは、研究員が本来は研究支援業務に属 する仕事を大量に負担していること、また近年は共同研究の組織面での業務が増加していることとも関連している。今後も現在の状況が継続するならば、研究員 の研究活動の質という側面でも問題が生じる可能性すらある。

 2)現地調査
 近年の研究活動における新しい展開としては、これまで以上に現地調査を重視した研究が展開されつつあることであろう。センターの専任研究員は共同研究員 との共同作業によって、スラブ地域での企業の実態に関する聞き取り調査、地方エリートに関する聞き取りもしくはアンケート調査を進めており、また、東中欧 地域を中心とする国際協力に関する実態調査も準備されつつある。また、この地域における選挙に関連する資料収集なども継続して行われつつある。こうした調 査にもとづく研究成果は、今後のセンターの研究業績の重要な部分となると思われる。


 3)史料調査
 旧ソ連・東欧地域ではこれまで外国人研究員には閲覧が許されなかった多くのアルヒーフの資料が利用可能となっている。従来も、これらの史料にもとづく歴 史研究はセンターの研究員によって行われており、またそこでの研究成果は高い水準にあると自負している。しかし、それらの利用可能となった史料の収集と分 析には長期間の海外研究が必要となるが、現在のセンターでの日常業務量の増大にともなって、長期研修がしだいに困難になっている。現時点よりも、柔軟な業 務分担が可能となるという側面からも、専任研究員の増員が必要といえる。

 4)シンポジウム
 夏期と冬期のシンポジウム開催はセンターの共同研究活動の中心をなすものといえる。比較的長時間の率直な討論を重視するセンターのシンポジウムは、学会 などでの研究報告会とは異なる独特の雰囲気をもつものとして、多くの研究者から高い評価を受けている。また、夏期シンポジウムは海外の研究者を招聘して国 際シンポジウムとして開催されているが、これは国内と国外の研究者の定期的な交流の場として、その価値を内外で認められつつある。

 5)成果の発表
 これまでの研究成果の出版としては、和文紀要、欧文紀要、研究会・シンポジウムの報告集などが発行されてきた。さらに、1994年11月からセンター 創設40周年記念として 『講座スラブの世界』(弘文堂) の出版が開始され、1995年度中には全8巻の刊行が終わる予定となっている。今後も一定期間をおきつつ、研究成果を叢書形式で出版する活動を継続する予 定である。


B 国際交流
 1)外国人研究員プログラム
 センターはこれまで毎年3名の外国人研究員を10ヶ月間受け入れてきた。このプログラムはセンターの国際交流で中心的な役割をはたしてきた。外国人研究 員との滞在期間におけるセンターでの共同研究の実施のみならず、広く日本の研究者と外国人研究員の交流という側面でもこのプログラムは有益であるし、また 外国人研究員が帰国した後も、センターとの研究面での交流が継続している。
 著名な欧米の外国人研究者でセンターでの研究を望むものは少なくなかったが、10ヶ月の長期滞在は困難であるという声があった。しかし、1995年度か ら開始されたCOEプログラムによる外国人招聘では、3ヶ月以上であれば滞在期間を柔軟に設定できるようになり、これまで以上に多彩な国際交流が可能に なった。

 2)交流協定に基づく交流
 現在、センターはロシアの2つの研究機関と研究者の交換を行っている。センターはロシアの研究者の旅費と滞在費に充当するための資金を、委任経理金等で 確保する努力を継続している。しかし、ロシア側の研究機関は資金難のため、センター側のロシア派遣のための旅費と滞在費はセンターの負担となっている。現 地とのこうした交換プログラムはセンターの研究活動に益するところは少なくないが、それにともなう財政負担はセンターにとってかなりの重荷となっている。 また、最近の政治変動の過程で、ロシアにおける研究機関の位置づけにも変化があり、より有利な条件でセンターとの交流を希望する研究機関も少なくない。諸 般の事情を考慮しながら、長期的には交流計画の見直しも必要となっている。
 ロシア以外では、米国のハーバード大学ロシア研究センター、オランダのライデン大学東欧法律・ロシア研究所、フランス国立東洋語・東洋文化研究所ロシ ア・ユーラシア研究センター、中国社会科学院東欧・ロシア・中央アジア研究所とのあいだでも交流協定が締結されている。これらの協定は定期的な研究者の交 換を行うための資金的な裏付けをもつものではない。したがって、これらの機関との交流は不定期な相互の研究者の訪問や出版物・情報の交換にとどまってい る。こうした、各国の主要な研究機関との交流協定の拡充と、交流資金の確保は今後もセンターにとっての課題である。

 3)教官の海外派遣
 現在、センターの研究活動のなかで現地調査がしめる比重は著しく高まっている。また、近年の特徴としては、複数の地方都市での調査やいくつかの国境にま たがる地域での現地調査が増えている。しかし、現在のところ、本学では外国出張ないし海外研修旅行の許可には多くの場合、現地の研究機関の招聘状が必要と されており、このことは渡航準備を煩雑なものにしている。また、センターの専任研究員の数が少ないために、各研究員は数多くの管理運営事務の役割を担って いる。そのため、現地調査のための海外渡航によって管理運営事務に支障をきたしたり、逆に管理運営面での責任ゆえに現地調査を控えなくてはならないという 事態も生じている。こうした問題は従来からあったが、その頻度は近年さらに高まっている。
 センターには外国主張の費用として外国旅費72万2000円が予算化されている。これは、上述の交換プログラムの実施、各国の研究機関との不定期な交 流、国際学会への派遣、さまざまな現地調査の補助などにきわめて有効に使われている。現地調査にはおもに科学研究費補助金やその他の委任経理金などが使わ れており、センター全体の派遣費用のなかにしめる外国旅費の割合はわずかなものにすぎないが、この費用は他と比べるとセンターの判断でかなり柔軟に使用で きるという利点をもつ。しかしながら、この支給額は1978年度から据え置かれており、その増額が望まれる。
 センターは、1990年の全国共同利用施設への改組のときから、モスクワに海外出張研究所を設置したいという要求を行っている。現在、モスクワでは治安 上の理由から安価で安全な宿泊先を確保することが困難な状況にある。また、電話、ファクス、パソコンなどの確保も問題で、そうした設備を備えた宿泊施設の 設置は、今後の研究活動にきわめて有益といえる。また、そうした施設は共同研究員の利用も見込まれる。この施設設置の努力は今後も続けたい。

 4)海外の研究者の受け入れ
 センターはこれまで、外国人研究員プログラムによる3名の外国人研究員を受け入れてきたが、1995年からはCOEによる外国人研究員の受け入れも始 まった。また、 夏期シンポジウム は国際シンポジウムとして開催されることが慣例化したのにともなって、夏期シンポジウム開催期には、まとまった数の外国人研究者が来訪している。これらの 外国人研究員のなかにはロシアなど、招聘者のビザ取得手続きがかなり煩雑な国が含まれている。その結果、専任研究員はビザの取得、航空券の購入などで多く の時間をさかなくてはならない状況にある。さらに現状では外国人の研究者の送迎、外国人宿舎の入居と退去手続き、健康保健加入手続き、銀行口座の開設など は情報資料部を含む専任研究員が立ち会うことになっている。COEによる非常勤研究員は外国人研究者の生活面での補助の一端を担っているが、それをもって しても専任研究員の負担の軽減にはなっていない。
 国際交流の促進は、センターの活動にとってきわめて重要なものであり、またその意義はセンターのみならず日本のスラブ地域研究に益するところがきわめて 大きい。しかし、それにともなって生じるさまざまな事務処理は、現在のセンターの能力の限界を超えるものとなっている。
 そうした問題を軽減するためには、引きつづき次の努力が必要である。
 *招聘手続きを含む外国語によるさまざまな事務的書類の作成、外国人との連絡などを行うことができる専門の事務職員をセンターに配置する。
 *外国人の受け入れ事務や、その他の生活面での問題に関しては、専任研究員が直接かかわらなくてもよい体制を整備する。
 *大学の外国人宿舎の拡充と改善も急務である。現在の宿舎はかなり老朽化し、暖房効率が悪く、また衛星放送施設等の設備がないなど、外国人にとって必ず しも利用しやすい施設とはいえない。この点での改善も求められる。
 *また、外国人宿舎とは別に数日間の短期宿泊が可能な施設の整備も必要である。


C 教育活動
 センターではこれまでも長い間、大学院教育への参加を検討してきた。センター内でも、将来のスラブ地域研究の発展を支える若手研究者の育成は重要な課題 と考えられているし、またそうした期待は学内、学外からも寄せられている。
 大学院教育に参加する場合、やはりセンターがもつ学際的特色を教育にも反映させるものでなくてはならないと考える。従来の学問的専門区分を横断した学際 的なスラブ地域研究を基礎とする高度な教育こそがセンターにおける大学院教育の意義といえるからである。しかし、現在のセンターの規模では、それ自身が独 立研究科を構成することは不可能である。したがって、北大の他の部局の大学院のなかで協力講座を構成するといった方策が、当面はもっとも現実的なものと思 われる。しかし、その場合も、センターの学際性を生かせる教育環境を確保することがもっとも重要な条件となる。また、大学院教育への参加がセンター本来の 研究業務や全国共同利用施設としてのサービス業務を阻害するものとはならないよう、十分に配慮されなければならない。
 1995年度からCOEプログラムによって大学院博士課程修了者を非常勤研究員として受け入れる制度が開始された。この非常勤研究員はセンターの業務の 一部分を担ってもらうものであり、本来の大学院教育とは異なる。しかし、この制度は一定の教育機能を持つものといえる。大学院教育への参加が実現するまで のあいだは、こうした制度を教育という側面からも活用する必要がある。


D 共同利用
 全国共同利用施設としてのセンターにとって、共同利用活動はその活動の根幹をなすものであることはいうまでもない。しかし、全国共同利用施設への改組後 も、共同利用活動は必ずしも円滑には進展していなかった。共同研究プロジェクトを推進するための資金の確保が容易ではなかったためである。しかし、 1995年度にセンターの専任研究員を中心とする
重点領域研究「スラブ・ユーラシアの変動−自存と共存の条件−」 が開始され、当面の共同研究のための資金は確保され、活発な共同研究プロジェクトが進行している。科学研究費補助金による研究はあくまで研究に参加してい る研究者個人によるプロジェクトで、センター自身の事業とはいえない側面をもつが、この重点領域は領域研究代表のみならず、9計画研究のうち8研究の代表 をセンターの専任研究員が務めるなど、実質的にはセンターの研究活動ときわめて密接に連動しながら展開されている。また、センターの事務局もこのプロジェ クトの進行に配慮して非常勤職員を配置するなどの措置をとっている。
 しかしながら、この重点領域研究は3年間のものであり、センターとしてはこのプロジェクト終了後の共同研究の在り方を、引き続き検討していかなくてはな らない。また、このプロジェクトでは覆いきれない研究分野の研究者との共同研究も、プロジェクトの遂行と並行して一定範囲で継続していかなくてはならな い。
 また、センターが共同利用施設としての機能をさらに高めるためには、これまで以上にスラブ地域研究に携わる学会ないし研究会との恒常的な提携も検討され るべきであろう。そうした要請は学会側からも寄せられている。具体的な方法はなお今後の課題ではあるが、シンポジウムの共同企画や共同開催、いくつかのス ラブ地域研究を主目的とする学会や研究会による共同企画の支援などが、その内容としては考えられよう。
 センターでは、大学院生を中心とした若手研究者の招聘プログラム( 鈴川基金 )が、鈴川正久氏の寄付に基づく基金によって運営されている。これによって、大学院生がセンターに滞在し、施設・資料を利用したり、研究会へ参加すること が可能となっている。また、このプログラムは、センターにとっても若手研究者との交流の拡大という側面で有益なものといえる。
 しかしながら、最近はこのプログラムで招聘できる若手研究者の数が著しく減少している。このプログラムは基金(約2000万円)の利子によって運営され ているが、近年の金利の低下によって利用可能な資金が減少しているためである。若手研究者がセンターを利用する機会をこれ以上狭めないためにも、何らかの 方法で基金の拡充の努力をしなければならない。


E 図  書
 センターはスラブ関係図書を長年にわたって収集し、その蔵書数は10万点をこえている。国内にはこれほどの規模でスラブ関係図書を所蔵する機関はなく、 わが国のスラブ研究にとって貴重な存在といえる。また、 蔵書 の質の高さは外国人訪問者からも高い評価を受けている。しかしながら、同様の外国研究機関の蔵書と比較すると、蔵書数の面でも、また蔵書の構成の面からも なお一層の充実をはかる必要がある。とくに、蔵書の構成には偏りがみられるし、1993年度に増設された民族環境部門(民族学、地理学、文化人類学)にか かわる基礎資料に関してはなお充分なものとはいえない状況にある。
 センターにおけるスラブ関係図書の収集と、その蔵書の構築は、いうまでもなくセンターに与えられた重要な任務である。センターは、通常の図書予算、歳出 概算要求による基本図書整備計画、文部省科学研究費などによる、一層の図書資料充実に務めなくてはならない。
 また、近年は電子化された情報の収集、新しいメディアによるリファレンスサービスの提供など、新しい課題も生じている。そうした、課題についても引き続 いて努力を継続する必要がある。
 センターの図書業務に関しては、これまでも大きな困難を抱えていたが、この2年間でそうした困難はさらに増加している。その主なものはつぎのとおりであ る。

 1)図書業務の人員不足
 図書業務における人員の不足は前回の『点検評価報告書』でも指摘され、未整理図書の増加は図書利用のうえで大きな問題となっていた。その後も、図書担当 の事務官は1名のままであるが、1995年度には情報資料部の助教授1名に加えて、講師1名をさらに図書業務に専従するものとした。ただし、上述したよう に、人員配置の関係で1996年度からは、事務官1名と講師1名でこの業務を継続しなければならない。また、92〜93年度に2名であった臨時用人を 94〜95年度には6人に増員して、図書業務の補助に当てた。こうした措置にもかかわらず、未整理図書数はさらに増加している。1993年度末で1万点ほ どの未整理図書があったが、その後、1995年度から始まった 重点領域研究 などによる図書購入が増加したため、現時点では未整理図書点数は1万5000点に達している。
 センターは、年間平均で5000点前後の図書購入を購入し、その受け入れ、登録、管理換えなどの作業を行い、あわせて蔵書管理、リファレンス関連業務を こなしている。購入図書の数もさることながら、その図書はきわめて多様な言語のものであるため、整理作業はかなり高度な専門知識を必要とする。今後も図書 職員の補充はなお重要課題である。また、従来から北大が設けている臨時用人雇用に関する6ヶ月という時間枠の緩和も、図書業務の効率化には不可欠といえ る。

 2)蔵書スペースの不足
 現在、センターの図書のうち、参考図書、新着定期刊行物、マイクロフィルムなどを除く大部分は北大附属図書館に管理換えされ、同図書館のなかの専用ス ペースに配架され、その貸し出し業務などは附属図書館で行われている。しかし、1995年度には収蔵能力の限界に達してしまったため、臨時措置として蔵書 のなかの和文雑誌を図書館所蔵の他の雑誌と混配し、和書および英文博士論文コレクションをセンター内に移動することで、当座の収容スペースを確保した。し かし、こうした一時的な措置にも限界があり、蔵書スペースの確保はより緊急度の高い問題となっている。センターは、附属図書館の新館建設構想にあわせて、 充分な専用の蔵書スペースを確保できるよう今後も努力を続ける必要がある。

 3)附属図書館との統合の問題
 これまでも、上述のようにセンターの図書は整理の終えたものから逐次、附属図書館に管理換えされている。また、それ以外の図書業務の附属図書館への統合 も引き続いて検討されてきた。しかし、今後の統合には、現在もなお残る未整理図書の解消や、統合にともなう人員の再配置に対応した定員の補充、臨時用人雇 用のための予算措置の取り扱いなど、解決されなければならない問題は少なくない。また、統合問題の如何にかかわりなく、今後もセンターがその蔵書構築の任 務を担っていかなければならない。きわめて多様な言語で構成されるセンターの図書の効率的な整理、管理方法については、全国共同利用施設としての図書サー ビスの継続という側面を十分に配慮しながら、蔵書スペースの確保とあわせて新しい方策を見いださなければならない。

 これらのセンターの図書業務にかかわる問題は、すでにセンターのみでの対応では解決が不可能な段階にある。センターの図書業務に関する理解を求めつつ、 全学的な対応を今後も働きかけていかねばならない。