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ICCEESに参加して浜 由樹子(津田塾大学、ITP第2期フェロー)[→プロフィール] ITPからの助成を受け、7月25日から開催されたICCEESの大会に参加させていただいた。 昨年の夏、私がこの大会への参加・発表を申請したのは、実は既にプロポーザルが締め切られた後であった。偶然、自分の報告(予定)内容にぴったりのパネルが組織されていたために、そこに飛び入り参加させてもらったという経緯がある。しかも、たまたま一緒になったはずだったそのパネルのメンバーとは、その後、ITPでのアメリカ長期派遣中に幾度も顔を合わせ、学会やシンポジウムで交互に報告したり討論者を務めたりする機会があった上に、論文集の作成にも加えていただき、頻繁に研究交流をすることとなった。そのため、ストックホルムでの「再会」は、お互いの研究内容を良く知る研究者仲間の1年の総括ともいえるものであったし、良い意味であまり緊張せず、リラックスして報告することができたように思う。 ただ、その「仲良し」ムードも一助となり、一見全員が最初から一緒に組織したかのような印象のそのパネルは、先に述べたような事情から、その実、私一人が全体テーマから微妙に外れた位置づけにあった。具体的には、パネル全体では、新旧ユーラシア主義の比較というテーマを掲げていたのだが、私は「旧」つまり古典的ユーラシア主義のみに焦点を合わせてペーパーを準備していた。しかしながら、どうもフロアの関心は「新」ユーラシア主義の方に集まっていたようで、そのため、討論へのコミットメントが少なくなるという結果になった。内実を明かせば、ここは悩んだ点である。パネル全体の統一感や、討論への積極的な絡みということを考えれば、多少は無理をしてでも報告内容をテーマに合わせてアレンジする方が良いのか、あるいは、自身のできることを堅実に出す方が良いのか。結論として私は後者の選択肢をとったわけなのだが、上のような反省をすると同時に、しかし報告の後に、「興味があるのでペーパーを送ってもらいたい」という申し出を何人もの方からいただいたという後の経緯を考えると、ペーパーそれ自体の出来として、焦点がぼやける程に議論を拡散させていなくて良かったのではないか、とも思っている。この先さらに経験を積む中で、もう少しバランスが取れるよう鍛錬していければ、と考えている。 大会全体としては、私がこの1年間で参加してきたAAASSやASNといったアメリカの学会との違いが印象的であった。ヨーロッパの学界が中心だとはいえ、まずアメリカ人研究者の参加が(私の予想よりもというだけだが)少なく、使われる英語のバリエーションも豊富であったこと。そのことと関係があるかどうかは分からないが、質疑応答も、パネルの運営(時間配分など)も若干マイルドであるような気がした。 設備の話になるが、どの部屋でもパワーポイントが使えて、準備室で一括してファイルをアップしてもらえるというシステムには感激した。というのも、実は、私自身が、自分の報告の前に他の方々の報告を聞きながら、これはパワーポイントがあった方が絶対的に親切だと思うに至り、前々日の夜に急いで作成したという経緯があったからである。利用申請を大会の随分前にしておかないとPCとプロジェクターが設置された部屋をあてがってもらえない会場では、これはできないし、先だって参加した某学会でソフトの互換性の問題が生じて慌てふためいたという個人的経験からも、今回の集中管理のシステムはとても有難かった。それに、報告直前になって報告時間を5分近く削れないかと司会者に頼まれ、急遽その場で対応することを余儀なくされたのだが、その際にもパワーポイントの画面があったことが聞く側には大いに助けになったことと思う 最後に、どんなに大きな場に出て経験を積みたいと思っても、国際学会への参加には相応の費用がかかる。特に、定職や自分の研究費を持たない研究者にとっては、ITPが与えてくれるような機会は本当に有難いものである。ここに改めて感謝の気持ちを記したい。 |
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