ITP International Training Program



グレッグと7人の愉快な仲間の6日間

sakurama桜間 瑛

(北海道大学大学院文学研究科博士後期課程)


 まだ春と呼ぶには、寒さの残る3月はじめ、真駒内の北海道青少年会館に、自身2度目となる英語キャンプへと向かった。2008年以来、3年ぶりとなる参加となったが、坂の上の建物を目にすると、以前のキャンプの記憶がよみがえってきた。そして、講義室に入り、今回も授業を担当することとなった講師のグレッグを見たときに、いよいよ始まる、という覚悟もできた。


 2度目の参加とはいえ、第1回のキャンプと比べると、今回は大きく様相の異っていた。まず期間について、以前のキャンプは2週間弱という長丁場であったのに対して、今回は1週間弱と、半分の期間に集中することとなった。また参加者についても、日本各地から、18人もの参加者を得た1回目と比べると、今回はスラブ研究センターの関係者のみ7人という少数の構成となった。

 もっとも、こうした濃縮した構成になったことは、総じて充実した内容になることにつながったように思われる。確かに期間が短かったために、前回参加したときのように、CVの書き方などについての、細やかな指導を受ける機会に恵まれることはなかった。しかし、その分プレゼンテーションの練習に集中して取り組むことができた。



 さらに今回は、すでに旧知の間柄の少数のメンバーと臨めたことが、非常に心強いものであった。この6日間は、8時の朝食から、わずかな休息を何度かはさんで、おおよそ午後9時の最後の授業の終わりまで、実に半日以上の時間をともに過ごすこととなった。連日のハードなスケジュールで、大きな問題もなく過ごすことができたのは、気の置けない仲間と切磋琢磨しながら日々精進にいそしむことができたことによるであろう。

 実際、これはレッスン自体にもいい方向に作用した。初回のキャンプの際には、毎回メンバーを入れ替えながら3班に分かれて授業を受けた。結果、さまざまな人と交流することができたが、一人ひとりがお互いに理解を深めあう、というところにまでは達しづらかった。しかし今回は、毎回同じ面々とレッスンをともにし、そのプレゼンテーションの練習を共有することで、よりお互いのことを知ることができた。それは各回でお互いのプレゼンテーションを批評しあうという、授業形態にもいい影響を及ぼしたのではないかと思う。



 今回も前回と同じく、報告において、ペーパーを「読む」のではなく、自分の研究を「話す」ことが強調され、そのための訓練が積み重ねられた。以前のキャンプですでに練習を積み重ねていたとはいえ、やはり外国語でそれを実践することは、かなり難しく感じた。そうした中、グレッグが繰り返したのが、「聴衆とコミュニケートして」ということであった。そしてその言葉の意味は、練習を重ねるにつれて、身をもって理解できてきた。プレゼンテーションというのは、報告者と聴衆のコミュニケーションの場であって、一方的に「話す」だけではなく、聴衆の様子にも気を配り、わかりやすく、かつ自分をアピールするようにpresentationすることが必要なのだ。たとえ拙い言葉遣いであっても、聴衆の反応を見ながら、特に自分が重要と思うところを繰り返し語り聞かせることで、最も重要な、自分のアイデアを伝える、ということは十分に可能なのだ。



 また、今回のプレゼンテーションの準備では、前回とは違って、パワーポイントを用いたが、これもやはり聴衆とのコミュニケーションを重視しなくてはいけない、という点から新たな発見があった。これまでにも、(日本語ながら)何度かパワーポイントを用いたプレゼンテーションを行ったことはあった。その際にもっぱら気を使ったのは、いかにそこに情報を盛り込むか、ということであった。しかし、ここで注意を払うように言われたのは、パワーポイントを用いつつ、いかに自分が「話す」ことへの注意を持続させるか、ということであった。確かに、自分が聴衆の立場でいるときには、しばしば表示される内容の方に強い注意が向き、ともすると報告者の話していることに気が回らない、ということがままあった。そうした傾向も考慮して、パワーポイントのパネルづくりと話すペースとの配分を考えるように、という指摘は非常に新鮮であった。また、パワーポイントの1枚1枚のパネルにとらわれて、全体の流れがおろそかになってしまいがち、という指摘も、以前からうすうす感じてはいた問題で、改めて指摘をもらい、対策のヒントを得ることができたのは収穫であった。こうした指摘は、英語に限らず、日本語でのプレゼンテーションにおいても、十分に応用すべきことであろう。


 このような、様々な有益で実際的なアドバイスを、6日間にわたり懇切丁寧に教授してくれたグレッグには、本当に感謝の念にたえない。そして、6人の同志とタフな日々を生き残ったことは、かけがえのない財産に他ならない。今度は、どこかの国際会議の場で、この成果をお互いに披露し合える日が来ることを楽しみにしている。


[Update 11.04.15]

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