公開講座
センターでは1986年以降、札幌市教育委員会や地域研究コンソーシアムの後援を得ながら、 札幌地域の社会人を対象にした公開講座を毎年1回開催してきました。新型コロナウイルス感染症の流行により中止となった2020年度以降は、オンラインあるいはハイブリッド形式での開催となり、地域を問わずアクセスが可能な講座となっています。
今年度は以下の要綱で実施致します。
2024年度 公開講座「シルクロード――交差する時間・空間・ディシプリン」
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シルクロードとは何か。東西南北の空間、過去と現在の時間、文系・理系の学問分野/ディシプリンが重なり合う6つの交差点を渡る旅のなかで、その答えを探す。
期間 2024年10月21日(月)~11月11日(月)
主催 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター(SRC) 後援 地域研究コンソーシアム
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シルクロードと聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。砂漠とオアシスのコントラストをゆく古代の隊商キャラバンでしょうか。莫大な資本投下のもとで敷かれた現代の鉄道なり道路でしょうか。緩やかなヨーヨー・マのチェロの音色も、急ピッチで進む一帯一路の現場で立てられる金属音もみな、シルクロード・アンサンブルの旋律の一部でしょう。ただし、今回我々が旅するシルクロードは、古代の「ロマン」や現代の「大国」に尽きるものではありません。むしろ、そのあいだに位置する6つの交差点をめぐることで、この道が何を交わらせてきたのか、線ではなく、線と線とが結ぶ点からシルクロードを考える、そんな試みをしてみたいと思います。 旅はまず、20世紀初頭、独・露・英のシルクロード探検隊から始まります。ユーラシアの交差路で彼らが残した古写真の数々は、この道の過去と現在とを交差させるものでもあります。そしてもちろんこの交差路は時代を超えて人々が行き交う道でもありました。中国系ムスリムを中心に形成された民族集団であるドゥンガン人は、彼らの祖先がかつて来た道をさかのぼり、19世紀後半から20世紀中葉にかけて中央アジアへと還るのです。シルクロードが交差させているのは、空間はもちろん時間にも留まりません。この道をめぐって学問分野/ディシプリンも交差します。14世紀中葉にヨーロッパ人口の3割を消失させたとする「黒死病」ですが、歴史学と古遺伝学の交差は、このパンデミックがシルクロードを伝ってのものだったことを示しています。そしてシルクロードは東西だけでなく南北にも伸び、この北海道を含む、北東アジアにも通じていました。放射性炭素年代測定が15世紀初頭のものだと示した蝦夷錦は、この事実を我々に伝える確かな証拠なのです。戦後の国民的作家井上靖は、シルクロードにおける民族の興亡を描きました。1965年のソ連への旅において育まれた小説のなかで、滅亡した古代都市は戦後日本と交差します。こうして日本に帰ってきた我々が最後に見るのが、今年日本との国交樹立100周年を迎えたトルコです。トルコ独立戦争のさなか、日本政府より派遣された内田定槌はシルクロードのもうひとつの端でアジアの連帯を模索するのです。 以上が、本公開講座で皆さんと訪れる6つの交差点のほんの入り口の部分です。この旅の先で、シルクロードとは何なのか、一緒に考えてみませんか。 (※講演のタイトルが登録ページへのリンクになっております。登録ページでは、それぞれの講演の要旨もご覧いただけます。)
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