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What's New Archives
2018年9月25-28日
第4回世界社会科学フォーラム(WSSF)開催のお知らせ@福岡
世界社会科学フォーラムは国際社会科学協議会の旗艦事業として3年に1度開催されています。国際社会科学協議会は、1952年にユネスコによって創設された非政府組織です。4回目となる今年は、本協議会初のアジアでの開催となります。九州大学がホストを務める本大会には、境界研究ユニットUBRJ(代表:岩下明裕)も参画し、大会の運営に貢献させていただいております。
開催期間:2018年9月25(火)-28日(金)
会場:福岡国際会議場 福岡県福岡市博多区石城町2番1号
参加費:30000円 ※ (学生:30000円 一般:50000円)詳しくはWSSFホームページ参照
第4回世界社会科学フォーラム(WSSF)HP
http://www.wssf2018.org/index.html
本大会は「持続可能な未来のための生存・安全の確保」をメインテーマに掲げ、パーサ・ダスグプタ氏(英ケンブリッジ大学経済学部フランク・ラムゼイ名誉教授)をはじめとして、世界的に著名な人文科学者、社会科学者の登壇が予定されています。UBRJ関係者による報告の要旨は以下からご覧いただけます。
UBRJ関係者による報告のタイムテーブルと要旨
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/ubrj/WSSF/
参加登録は8月31日までと迫っておりますが、御来聴をお待ちしております。
(文責:斎藤慶子)
2018年7月22-25日
国際政治学会(IPSA)でボーダースタディーズ
2018年7月22日からオーストラリアのブリスベンで国際政治学会(IPSA)の大会が行われました。この学会に参加したのは初めてですが、新学術領域研究「グローバル関係学」(代表:酒井啓子)が組織したパネルで「今日のボーダースタディーズ」について報告しました(岩下は九州大学から本研究に公募研究として参画)。
折から、ウィーンとブタペストでボーダースタディーズの世界大会(ABS)が開催されたばかりということもあり、パン・ヨーロッパ・ピクニック(1989年)の写真を紹介しながら、ハンガリー国境の各方面(対オーストリア、スロバキア、ルーマニア、セルビアなど)の時代変化と透過性についても触れました。これに加えて、アメリカ・メキシコ及びメキシコ・グアテマラ国境の透過性の比較、中露国境の元係争地ヘイシャーズ島でのボーダーツーリズムの展開など、昨年のフィールドワークの成果も重層的に紹介しました。
今回の大会のタイトルは「ボーダーとマージン」。ボーダーに関する報告は多かったのですが、その大半がボーダースタディーズの蓄積を踏まえず、タイトル通り、ボーダー=「マージン」を前提とした発想に立っているようで、私たちの仕事を様々な会合でアピールしていく意味を改めて確認する機会となりました。
今回のパネルを組織された酒井啓子さんには、初めてのオーストラリア訪問の機会を与えてくださったことに感謝申し上げます。
(岩下明裕)
2018年7月24日
北大総合博物館「国境観光」展示リニューアルのお知らせ
境界研究ユニット(UBRJ)は、北海道大学総合博物館(2階スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニットのブース)にて行っている展示内容を大々的にリニューアルしました。
メインコンテンツは、稚内市在住の写真家(兼学芸員)斉藤マサヨシ氏による対馬と釜山の風景写真です。これは、2017年11月10日~14日に行われた「対馬釜山・国境観光ツアー」の催行中に撮影されました。ツアー中、抜けるような青空のお天気に恵まれ、お写真もたいへん色鮮やかで見入ってしまいます。対馬の石垣のグラデーションや、釜山の市場のサイケデリックな売り子さんと鮮魚の組み合わせなど、目を奪われることでしょう。
入って右側の壁には、富山、北海道、福岡、という、それぞれ日本の国境地帯を代表する地域を中心にしたユニークな地図を展示しました。新しい視点から見ることで、隣国との意外な近さに気づかされることでしょう。
岩下明裕・ユニットリーダーが監修した解説パネルは「現代のボーダーツーリズム」、「稚内・サハリン」をテーマとしています。
ミニ・コーナーでは、日露交流活動に尽力されてきた小林邦弘氏ご寄贈の絵画を継続して飾らせていただいております。
総合博物館は、月曜を除く毎日10時から17時まで(6~10月の金曜は21時まで)開館しております。ぜひお立ち寄りください。
https://www.museum.hokudai.ac.jp/
2018年7月14日
【参加レポート】Association for Border Land Studies 第2回世界大会 (斎藤)
ボーダースタディーズの世界大会がウィーンで2018年7月10~12日、続いてブタプストで7月13~14日の日程で行われました。筆者は、ウィーン大学法律学部を擁するJuridicumにおいて行われた初日の8時45分開始の第1パネルで報告を行いました。
パネルのテーマは「Precarious Borders」。文化を扱ったトピックが集まったグループになりました。第1報告者はコロンビア大学のザン・ホルトという若い研究者で、「Walling off the Abject: Żuławski’s Possession as Border Horror」と題してアンジェイ・ズラウスキー監督の映画『ポゼッション』に現れる、ボーダーの表象について美学的な読み解きをする報告が行われました。『ポゼッション』に表されているボーダーとは、壁によって二項対立を創出し相手方を排除しようとするものではなく、ボーダーそのものがAbjectであり、排除されるべき対象なのだというユニークな見解を述べていました。
筆者は第2報告者として「Borders in musical arts: a comparison of the cases of the Tchaikovsky Memorial Tokyo Ballet School and the West-Eastern Divan orchestra」(当初の予定題目から変更)において、冷戦構造を背景にしたチャイコフスキー記念東京バレエ学校(1960-1964)の設立の経緯と、1999年に創立され現在も活躍中のウエスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラの事例を比較し、音楽芸術がボーダー地域において果たす役割について考察しました。ダニエル・バレエボイムが率いるディヴァン・オーケストラの事例に取り組むことになったのは、パネルのオーガナイザーであるシルヴィア・ミエシュコウスキ女史(ウィーン大学)の提案によるもので、本来はバレエ史を専門としている筆者にとっては新しい挑戦になりました。報告後には、親米体制の中でソヴィエト・バレエが日本で熱狂的に受け入れられた理由についての質問がなされ、改めて考えるきっかけとなりました。
第3報告者のライデン大学のマチュー・ロンゴは近刊自著『The Politics of Borders: Sovereignty, Security, and the Citizen after 9/11』の紹介を行い、第4報告のラナ・マックドネル、サンタ・バラザ(両者ともテキサスA&M大学キングスヴィル校)は、「Texas Borderlands: The Iconography of Resistance to Assimilation and Narratives of Mothers Behind Bars」と題して、自身が少数民族の末裔であり、画家、活動家であるというバラザの画業について報告しました。抵抗の女戦士たちを扱った色鮮やかな作品の数々は、心に強く訴えるものがあり、これらのコピーは会場ロビーにも展示されていました。
2018年7月14日
ABS第2回世界大会、終了。
2018年7月10日にウィーン大学で始まったボーダースタディーズの国際学会Association for Borderlands Studiesの世界大会が7月14日にブタペストで無事終わりました。初日の模様はすでにお伝えしましたが、2日目の11日はエドワード・ボイル(九州大学)、ミズラ・ラフマン(インド工科大学)らの司会で引き続きアジア・ボーダースタディーズのセッションが組まれました。センターからは加藤美保子がロシアの主権をめぐる問題を報告しました。またこの日の最終セッションでは、ジャナジャイ・トリパティ(南アジア大)、クリシュネンドラ・メーナ(JNU)など北大GCOE時代のボーダースタディーズ・サマースクールの卒業生たちが南アジアにかかわるボーダーのセッションを作り、好評でした。
翌13日はボーダー関連学会で定番の、国境を越えたフィールドワークが実施されました。3つのグループに分かれてハンガリー入りをしましたが、もっとも人気があったのが、1989年にパン・ヨーロッパ・ピクニックが行われた現地の視察でした。これは「ベルリンの壁」崩壊を引き起こしたことで知られる、ハンガリー・オーストリア国境開放に関わるイベントですが、当時のピクニック組織者による現地解説は、どのようにして社会主義体制下の厳しい国境管理に風穴を開けたのかをめぐるエピソード満載で、臨場感溢れるものでした。また、冷戦期のハンガリー国境の「要塞化」の変遷、さらには現在の対セルビア国境のフェンス施設の現状についての解説などもあり、今回のフィールドワークはボーダースタディーズのみならず、ポスト社会主義研究や国際関係を包括した中身の濃い内容となりました。
14日はブタペストの街中にある中欧大学に会場を移し、大会が続けられました。その中の一つとして、欧州と北東アジアを結ぶボーダーツーリズムのセッションが組織され、ツアー研究の学問的可能性を、中露国境、中欧国境から南欧カタロニア、北欧デンマーク・ドイツ国境といった多岐にわたる事例をもとに、タイムライン、透過性、社会構築などの観点から議論しました。15日午前で大会は終了し、無事、散会となりましたが、11日のウィーンのタウンホールでのレセプションではボーダースタディーズの更なる展開について大いに語られたようです。
(岩下明裕)
注記)なお、今回の世界大会でのいくつかのセッションの成果は、2018年9月に九州大学がホストを務め、福岡で開催されるWSSF(世界社会科学フォーラム)大会のボーダースタディーズ・セッションで報告される予定です。
2018年7月10日
Association for Border Land Studies 第2回世界大会始まる
第1回のフィンランド・ロシア大会に続く、ボーダースタディーズの世界大会がウィーンで始まりました。会議はウィーンで2日間、ハンガリー国境地域でのフィールドワークを挟んでブタペストでさらに2日間続きます。2018年7月10日午後からオープニングセレモニーが執り行われましたが、朝から9つのセッションが並行して始まりました。なかでもウィーンの2日間ではアジアをテーマとしたセッションが全日行われます。これはエドワード・ボイル(九州大)、ジャナジャイ・トリパティ(南アジア大)、ジョナサン・ブル(北海道大)らが組織したもので、中国、韓国、インドなどから多数の報告者が参加しています。なかでも日本の研究者のプレゼンスも大きく、本ユニットや九州大学のボーダースタディーズ・モジュール、そしてABS日本チャプターの関係者らが存在感をみせています(初日の報告者は、斎藤慶子、川久保文紀、池直美、古川浩司ら)。Eurasia Border Review誌最新号や9月に九州大学が主催して開く社会科学フォーラム(WSSF)でのボーダー関連セッションにも注目が集まっています。
(岩下明裕)
2018年5月9日
【公募】境界研究・専門嘱託員の募集(平成30年度:沖縄県与那国町)
境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)は、平成26年度から地方自治体の協力を得て、境界地域の研究と実務を結ぶ事業の一環として、境界研究を志す若手研究者(大学院修士課程修了者、ポスドクなど)が、日本の境界地域でそれぞれの境界問題に関わる実務について現地で活動するとともに、その成果を世界に発信する事業を続けています。平成30年度の沖縄県与那国町での募集が始まりました。
詳細はこちらからご覧ください。
(文責:斎藤慶子)
2018年4月23日
ザ・ボーダーツーリズム:小林邦弘画伯の絵画展示始まる
2018年4月24日より、北大総合博物館2Fの本ユニット「国境観光」展示コーナーで、根室在住の小林邦弘画伯の絵が公開されます。小林画伯はソ連のゴルバチョフ時代から根室の地で北方領土問題をウォッチされ続けるとともに、現地ロシア人との交流事業にも長年関わってこられました。また近年は対馬、小笠原、竹富などのボーダーツーリズムにも積極的に参加され、国境地域の現場の絵を描き続けておられます。小林画伯の絵は、国境観光の日本で初めての書籍とも言える『ボーダーツーリズム:観光で地域を創る』(北海道大学出版会)の表紙にもなりました。このたび書籍の出版を記念して、画伯から寄贈いただい描きおろしの絵を、画伯のこれまでの活動の歩みとともに博物館で展示しています。ボーダーツーリズムに関心をお持ちのみなさま、どうぞ一度、足をお運びください。
(岩下明裕)
2018年4月17日
【参加レポート】2018年ABSサンアントニオ大会終了
2018年4月4日から7日まで、Association for Borderlands Studiesの年次大会が米国サンアントニオで開催されました。今回は新年度早々の開催となったため、日本からの参加者は少なく、本ユニットからは池直美講師と岩下が参加しました。ただし、最新号のEurasia Border Reviewがボーダーとジェンダースタディーズの特集を組んでおり、ABS関係者が多数投稿していたため、そのお披露目も含めて大会は盛り上がりました。
最終日の土曜日には、日本のこれまでのボーダーツーリズムの実践と研究の成果について報告もなされましたが、同日午後のセッションでは、メキシコ自治工科大学のウリセス・グラナドス教授が本ユニットとの協力で実施したメキシコ・グアテマラ国境の透過性の現状について最新のレポートを行いました。現在、トランプ大統領は対メキシコ国境に壁を作り、南からの人の流入をメキシコの財政負担でまかなうよう要請しています。しかし実態は、ほぼ統制不能なメキシコ・グアテマラ国境を越え米国に向かう移民の流れを抑えているのは「バッフアー」としてのメキシコであり、むしろトランプ大統領の方がメキシコにその代価を払うべきではないかという意見も出ました。なおグラナドス教授のレポートはKUBSのBorder Bites最新号に掲載されています。
4月19日にはABSの次期会長に選出され、カナダでBorders in Globalization (BIG)のプロジェクトを主宰するエマニュエル・ブルネイ=ジェイ教授(ビクトリア大)が来北され、ユニットでのセミナーやBIGの特別シンポジウムが実施されます。
(岩下明裕)
2018年4月9日
Eurasia Border Review 8(1) 刊行
境界研究ユニット(UBRJ)が刊行する英文学術誌であるEurasia Border ReviewのVol. 8, No. 1が刊行されました。すべての論考がこちらのウェブページからダウンロード可能です。
2018年4月5日
和文査読誌『境界研究』8号の刊行
UBRJが刊行・編集を行っている和文査読誌『境界研究』8号が刊行されました。論文3本、資料紹介1本、書評3本の他に、今号から新たに加わった種別「ディスカッション」から1本が収められています。ディスカッションは、「萌芽的な内容であっても、既存の境界研究・理論に対する批判的・挑戦的な内容を含む論稿」を対象としています。崔紗華氏による、東京都立朝鮮人学校の廃止をめぐる事例について新たな視点をもたらす意欲的な論考に始まり、松本和久氏による初期満ソ国境の紛争についての詳細な調査結果も報告されています。充実した内容の、厚い一冊となっております。こちらからすべての論文のダウンロードが可能です。
なお、『境界研究』は次号9号の論文・書評の投稿を募集しております。ご関心のある方は編集部(saitok[at]slav.hokudai.ac.jp)にご連絡ください([at]を@に置き換えてください)。
[論文]
崔 紗華 「東京都立朝鮮人学校の廃止と私立各種学校化:居住国と出身社会の狭間で」
松本和久 「初期満ソ国境紛争の発生と展開(1935‒1937):国境委員会設置交渉から武力処理思想へ」
斎藤慶子 「バレエと政治:チャイコフスキー記念東京バレエ学校(1960‒1964)と冷戦期のソ連の文化外交」
[ディスカッション]
前田幸男 「気候変動問題から見る「惑星政治」の生成:「人新世」時代に対応するための理論的諸前提の問い直し」
[資料紹介]
ゾーレン・ウルバンスキー、斎藤祥平(郡司 憶人訳)
「帝国のあいだで、スクリーンの上で:中露国境河川流域におけるロシア・コサック」
[資料紹介]
樽本英樹 「ジョゼフ・カレンズ著、横濱 竜也 訳『不法移民はいつ<不法>でなくなるのか』」
高橋美野梨 「屋良朝博、川名晋史、齊藤孝祐、野添文彬、山本章子著『沖縄と海兵隊:駐留の歴史的展開』」
竹内雅俊 「岩下明裕編著『ボーダーツーリズム:観光で地域をつくる』