Eurasia Unit for Border Research (Japan)

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What's New Archives

2015.03.22

共催シンポジウム「アジア太平洋のボーダースタディーズを創る」が福岡で開催

共催シンポジウム「アジア太平洋のボーダースタディーズを創る」が福岡で開催

 2015年3月7-8日、九州大学アジア太平洋未来研究センター主催の国際シンポジウム「アジア太平洋のボーダースタディーズを創る」が福岡市で開催されました。オープニングセッションは80名を越える参加者があり、ABS事務局長のユッシ・レインとUBRJ代表の岩下明裕がこの新しいセンターの核となるボーダースタディーズのプロジェクトの始動を祝うとともに、アジア太平洋をフィールドとしたその成果への期待を表明しました。国境観光のセッションでは花松泰倫とセルゲイ・ゴルノフ、国際関係ではポール・リチャードソン、日本の境界地域ではテッド・ボイルと舛田佳弘が報告しましたが、グローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」の卒業生たちの、それぞれの成長ぶりが大いに目を引きました。なお、新センターのボーダースタィーズ・モジュールはゴルノフ、ボイルらが今後、牽引し、UBRJもこれを支えます。

(文責: 岩下明裕)

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2015.03.22

ABS(Association for Borderlands Studies)インド・アッサムで特別セッション開催

ABS(Association for Borderlands Studies)インド・アッサムで特別セッション開催


 本ユニットが深くかかわっているABS(Association for Borderlands Studies)ですが、4月のポートランドでの年次集会に先立ち、欧米とアジアの主要メンバーによるインドでのシンポジウム及びセミナーを3月2日から5日かけて連続開催しました。目玉はバングラディッシュやミャンマーに近いアッサムのグワハティでの80名の参加者を集めたシンポジウムで、現会長のマーチン・ヴァンダ・ベルデを始め、キャサリン・スタウト、ポール・ギャンサーらが報告し、インドの研究者と地域を越えたケーススタディを共有する意義を確認しました。3日と4日はバングラディシュとの国境を視察し、5日はデリーで著名なシンクタンク、政策研究センター及びネルー大学でセミナーを開きました。この一連の企画をインド側で引き受けた、ミルザ・ラフマン、ジャビン・ジェイコブ、クリシュンドラ・メーナはいずれもグローバルCOE「境界研究の拠点形成」サマースクールの同窓生であり、北海道の地で生まれたボーダースタディーズのネットワークがいまや世界を動かし始めていることを実感しました。

(文責: 岩下明裕)

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2015.02.13

GCOE企画・HBCフレックス制作の「知られざる国境」シリーズの無償リリースを開始

GCOE企画・HBCフレックス制作の「知られざる国境」シリーズの無償リリースを開始

 グローバルCOEプログラム「境界形成の拠点形成:スラブ・ユーラシアと世界」は昨年3月に終了しましたが、同プログラムでは我が国の国境地域の過去・現在・未来について映像と音声でリアルに迫る「知られざる国境」シリーズDVDを数多くリリースしてきました(HBCフレックス制作)。また、プロジェクトの枠内で行われた市民フォーラムや国際会議についても記録DVDを作成しております。その多くは、日本の国境地域の生きた現状を学ぶ格好の教材として活用されております。この度、在庫があるDVDにつきまして無償配布する運びとなりました。先着順とさせていただきますので、ご希望に添えない場合もございますが、ご関心のある方は特設サイトをご覧の上、サイトにあるアドレスまでご照会下さい。なお、送料につきましては申込者本人のご負担でお願いしております。

2015.02.12

地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ「ユーラシアにおける境界と環境・社会―学際的対話による包括的な「境界」知の獲得」開催される

地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ「ユーラシアにおける境界と環境・社会―学際的対話による包括的な「境界」知の獲得」開催される

    • ワークショップの趣旨・目的についてはこちらをご覧ください。


 2015年2月7日(土)、奈良女子大学にて、地域研究コンソーシアム次世代ワークショップ「ユーラシアにおける境界と環境・社会―学際的対話による包括的な「境界」知の獲得」が開催された(UBRJは共催)。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターUBRJ担当助教の地田が企画責任者となり、ユーラシア各地の境界と環境と社会の問題に取り組む8名の若手研究者が集い(1名欠席)、「境界」「環境」「社会」および境界の通時的な「変化」をキーワードに報告をし、各報告者が扱う事例のユーラシアというスケールでの一般化の可能性と各フィールドの位相的関係について議論を行った。東北アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、モンゴル、ウクライナ・ベラルーシというユーラシア内部の多様な地域について、自然地理学、人文地理学、文化人類学、土木工学、国際関係論、国際法学、歴史学という文理の壁を超えた多様なディシプリンを有する研究者による報告と議論はエキサイティングで知的刺激に満ちたものだった(なお、欠席した1名は水文学の専門家)。また、ワークショップのアドヴァイザーとして柳澤雅之先生(京都大学地域研究統合情報センター)にもご参加いただき、鋭い質問をいくつも投げかけていただいた。

 ワークショップの成果であるが、ユーラシア各地の境界・環境・社会の問題をプロセスとして通時的な変化を捉え、ボトムアップ型で境界の場所のロジックに着目しつつ、同時に、異なるスケールからこのような変化の意味を捉える。このような方法論上の共通見解がまず得られたと言える。また、ナショナルなレベルでの政治的な大きな変化が境域社会やそこでの環境、あるいは境界そのものに対しても影響をおよぼす場合もあれば、災害などの環境変化が境界の意味合いに影響をおよぼす場合、地形・気候帯などの境界と行政境界とのずれがなんらかの問題や影響を引き起こす場合など、複数のアプローチを複合する形でこの問題に取り組む必要があるという点についても参加者で共有できた。その中で、冷戦の終焉やソ連の崩壊、中国の改革開放、西部大開発、バングラデシュ独立といった大きな政治的なうねりがユーラシア各地での境界の透過性(permiability)を高め、人・モノの移動が活発になると同時に、そのことが境域(境界を跨いだ地域)の環境・社会に新たな影響・問題を引き起こしていること、または、沙漠化や洪水、原子力発電所事故といった災害が、他の社会的・政治的文脈と相まって、むしろ境界の透過性を弱める方向に働くこともあるということが分かった。
 全体として、各人の個別研究の精度を高めつつ、地域の壁もディシプリンの壁も取っ払った形で「境界」を軸に議論を展開するということは、我が国の境界研究そのものへの寄与というだけでなく、地域・分野の壁を取り払いつつ「地域」について語り得るという点で、我が国の地域研究に及ぼし得るインパクトを示したという点でも有意義だったと考えている。本ワークショップはあくまで「キックオフ」であり、今回のワークショップで得られた知見・理解をさらに発展させるべく、若手研究者のイニシアチブで科研プロジェクトなり雑誌の特集組織なりで共同研究を継続してゆきたいと考えている。
 本ワークショップを採択していただいた地域研究コンソーシアムにまず衷心よりの謝意を表すると共に、ワークショップ実施にあたりアドバイスをいただいた多くの先生方、報告者・来場者の皆様、そして、事務を司っていただいた京大地域研の二宮さち子さんに感謝したい。ありがとうございました。

(文責:地田 徹朗)


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2014.12.25

BRIT XIV plenary sessionsの様子が博物館展示・映像で公開中!

BRIT XIV plenary sessionsの様子が博物館展示・映像で公開中!

 2014年11月4日(火)から7日(金)にかけて、フランスのアラスとリール、ベルギーのモンスで行われたBorder Regions in Transition (BRIT) XIVでのプレナリー・セッションの様子が博物館展示・映像配信されています。オープニング・セッションと最終の総括セッションには、2012年に福岡・釜山で行われたBRIT XIIのコーディネーターを務めた岩下明裕・UBRJユニット代表が登壇し、熱い議論を交わしています。博物館展示・映像はこちらのページで公開中ですのでぜひご覧ください!

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2014.12.25

Eurasia Border Review Vol. 5, No. 2刊行!

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 境界研究ユニット(UBRJ)が刊行母体となっている英文査読誌「Eurasia Border Review (EBR)」の最新号であるVol. 5、No. 2が刊行されました。今号では、スラブ研究センター2013年度夏季国際シンポジウム参加者のアレクサンドル・セルグーニン(サンクトペテルブルグ大)とPerutti Jonniemi(東フィンランド大)の共著による北極圏開発をめぐるサブナショナルなアクターに関する論考、センターの野町素己准教授とやはりセンター2013年夏季国際シンポジウムの参加者だったトマス・カムセラ(英セントアンドリュース大)の共著による、西スラブ語群の少数言語であるカシューブ語とシレジア語の境界をめぐる問題についての論考、現在外国人研究員としてセンターに滞在しているセルゲイ・ゴルノフによるEU・ロシア間の国境観光についての論考などが収められています。全ての論文はpdf形式でEBR特設ページよりダウンロードが可能です。

2014.12.25

SRC・2014年度冬期国際シンポジウム「境界(ボーダー):ユーラシアで交差する動力」開催される!

スラブ・ユーラシア研究センター2014年度冬期国際シンポジウム「境界(ボーダー):ユーラシアで交差する動力」開催される!

 2014年12月4日(木)と5日(金)の二日間、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター大会議室にて、同センター2014年度冬期シンポジウム「境界ボーダー:ユーラシアで交差する動力」が開催された。境界研究ユニット(UBRJ)を中核としてセッションが組織され、2日間で89名(延べ133名)もの多数の方の来場をいただいた。初日には札幌アスペンホテルでレセプションが行われ、6日(土)には小樽・余市方面でのエクスカーションが行われ、センター関係者と参加者との親睦が図られた。
 「ボーダースタディーズにおける実践的意義」と題するセルゲイ・ゴルノフ(スラブ・ユーラシア研究センター外国人研究員)による基調報告を皮切りに、初日のセッション1では国境観光、セッション2では災害と移住者、二日目のセッション3では北極圏、セッション4ではロシアをめぐる国際関係、セッション6では戦間期ソ連外交をテーマとした報告が行われ、初日のセッション3では地域研究における境界の問題についてパネルディスカッションが行われた。シンポジウム全体で多様なテーマでのセッションを組むことで、我が国における境界研究の現段階を知る上で今般のシンポジウムは格好の場となり、同時に、今回のシンポジウムは我が国の境界研究の新たな一歩を示すことができた。それは、(政治)地理学的な境界研究「理論」と個々のフィールドでの問題解決の「実践」の問題とをいかに架橋するのかという問題関心が強く現れたことである。グローバルCOEプログラムの時代より、境界研究ネットワークJAPAN(JIBSN)を通じての活動など、スラブ・ユーラシア研究センターでの境界研究は強い「実践」性を有してきたわけであるが、ではそれを学術的な成果として世界に問うにあたっての壁をいかに突き破るのかについて課題も残されていた。今回のシンポジウムは「理論」の側面からこの問題を真摯に考える場となった。その意味で、我が国の政治地理学の第一人者である山崎孝史(大阪市立大学)氏によるモデレートの下で、ゴルノフ氏による前述のキーノートがなされたことは素晴らしいシンポジウムのキックオフとなった。ゴルノフ氏の基調報告は、世界の境界研究「理論」のトレンドとその「実践」への応用可能性について真面目に問うと共に、その現状での限界も示した点が重要である。同時に、優れた「理論」と優れた「実践」を行うためには、地域研究としての境域現象や、人やモノ、そして環境面での越境現象について良質な「記述・分析」研究が欠かせない。このような境界研究の方向性や方法論の問題、さらには個々のスピーカーのフィールドでの境界問題の現状と比較可能性についてセッション3のラウンドテーブルでは集中的に議論がなされた。セッション1・2・4・5でも「理論」「実践」「記述・分析」の三者関係をどうするのかという問題関心は程度の差はあれ引き継がれていたように思う。今般の冬期国際シンポジウムを足掛かりとして、UBRJが主導する境界研究が今後どのような展開を示すのか、乞うご期待である。
 最後に、寒い中、道内外からシンポジウムにお越しいただき、活発にディスカッションにご参加いただいた皆様、シンポジウムの成功にご協力いただいた司会・報告者・討論者・スタッフの方々に心より感謝申し上げます。

(文責:地田 徹朗)


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2014.12.03

Call for Papers: 57th ABS Annual Conference in Portland (deadline extended!) [募集終了しました]

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(ABS) Annual Conference
in Portland


 すでに「イベント情報」で公開しておりますが、北米発祥のボーダースタディーズの国際学会であるAssociation for Borderlands Studies (ABS)の第57回年次大会が、2015年4月8日から11日まで、アメリカ・オレゴン州ポートランド市で開催されます。次回の大会は、"
Border Studies and the New World (Dis)order: Relating Theories and Practice"というタイトルの下で行われます。ABSの副会長を務める岩下明裕・UBRJユニットリーダーがプログラム委員会を率いており、日本を筆頭とするアジア諸国からの数多くの参加が期待されております。ペーパープロポーサルの締切は本年12月15日(月)まで延長されましたので、ふるってご応募ください。右の画像からCall for paperのpdfがダウンロード可能です。

 ABSオフィシャルページは
こちらです。

2014.12.03

「日本の境界地域論」プロジェクト研究会(11/26)開催される

「日本の境界地域論」プロジェクト研究会(11/26)開催される

 2014年11月26日(水)、中京大学名古屋キャンパス9号館1階・第3会議室にて中京大学社会科学研究所「日本の境界地域論」プロジェクト研究会を開催しました。今回の研究会では、本プロジェクトメンバーである中京大学総合政策学部教授の佐道明広氏の著した『沖縄現代政治史』(吉田書店、2014年)に対する大阪市立大学教授の山﨑孝史氏の書評をもとに議論しました。なお、山﨑氏は科学研究費助成事業(科学研究費補助金)基盤研究(A)「ボーダースタディーズによる国際関係研究の再構築」のメンバーとして、また共催団体である北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター境界研究ユニット(UBRJ)を代表して北海道大学教授(UBRJユニットリーダー)の岩下明裕氏も参加しました。

 本研究会において、『近年の中国脅威論をはじめとする安全保障問題に関して「沖縄」と「本土」の言説における溝が拡大している』『近年巷で言われている日本の島嶼防衛論は時代錯誤で第2次世界大戦中の日本軍の戦略を彷彿させる』といった佐道氏の主張には参加者全員が同意しました。一方、『「国際都市形成構想」が実現に至った場合グローバル経済下で成功したのか』、『与那国町に石垣市・竹富町も加えた「八重山」の視点からの分析が必要ではないか』、『沖縄県や与那国町に対する利益配分の観点からの政治分析が必要ではないか』、『与那国町におけるマンパワーの問題にもっと言及すべきではないか』といった参加者の指摘に関しては、佐道氏との間で活発な議論も展開されました。

 本研究会を通じて、『研究者として「現地」との距離をいかに保つべきか』を改めて考えましたが、本プロジェクトメンバー以外の方も加わったことで沖縄をめぐる諸問題を考える上でより有意義な時間を過ごすことができました。本プロジェクトは今年度で終了しましたが、来年度より新たに開始されるプロジェクトでも引き続き国境問題をテーマに考察する予定です。そこで最後に改めて今回の本プロジェクト研究会にご協力いただいたUBRJ及び科学研究費助成事業(科学研究費補助金)基盤研究(A)「ボーダースタディーズによる国際関係研究の再構築」の関係者の皆様に心から感謝の言葉を申し上げます。(文責:古川浩司[中京大学])

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2014.11.18

JIBSN竹富セミナー参加記

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 2014年11月14日(金)、沖縄県竹富町西表島にある中野地区地域活性化施設(わいわいホール)にて、毎年恒例となっている境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)竹富セミナーが境界研究ユニット共催の下で開催された。JIBSNメンバーは多くの境界自治体や境界問題に携わる研究者、実務者から構成されており、今回の竹富セミナーは西表島という空港のない離島での開催だったにもかかわらず、北は稚内、東は根室、西は五島・対馬・与那国の各自治体からの参加があり、日本全国からの研究者・実務者、竹富町の一般市民や地元紙の記者などを含め総勢58名の参加があり、大盛会となった。
 セミナーでは、冒頭、川満栄長・竹富町長より歓迎のご挨拶があり、所用により参加できなかった財部能成・対馬市長/JIBSN代表幹事に代わり、小島和美・対馬市役所総合政策部政策企画課長が挨拶文を代読した。そこでは、JIBSNのネットワークを生かして国会に呼びかけてきた国境離島新法の年明けの審議入りの見通しについても説明があった(ただし、セミナー終了後、衆議院解散に向けた動きが本格化し、事態は流動的である)。
 セミナーは二部構成からなり、第一部は「日本の国境観光を拓く」と題し、3名による報告が行われた。UBRJでも日本学術振興会実社会プログラム「国境観光:地域を創るボーダースタディーズ」を軸として、中心的に取り組んでいる分野についてである。まず、島田龍(九州経済調査会)により、日本の国境観光のキックオフの役割を果たした対馬・釜山モニターツアーの総括がなされ、現在では花松泰倫(九大・持続可能な社会のための決断科学センター)らと共に、対馬での一泊を含むモニターツアー第二弾が企画されているとの報告があった。また、東京のリタイア層をターゲットにANAセールスとのタッグで、東京→八重山→台湾の国境観光ツアーも企画中とのことである。次に、大浜一郎・八重山経済人会議代表幹事は、石垣市との台湾の交流の歴史を紐解きつつ(石垣市は中華民国蘇澳鎮(すおうちん)と姉妹都市である)、石垣=台北直行便の重要性について力説した。そして、国境観光ツアー実現のために、中華航空をも説得し、夏季のみの季節便を冬期にまで延長することに成功したという。大浜氏は、八重山の自然・治安・公衆衛生のよさに鑑みれば、台湾からの旅行客受け入れのポテンシャルは大きく、国境観光をめぐって民間が主導してしっかり取り組み、行政がバックアップをしてゆくことの重要性を説いた。第一部最後に、高田喜博(北海道国際交流・協力総合センター)が登壇し、国境地域というデメリットをメリットに変え得る、地域振興手段としての国境観光の意義について説明し、現在夏季のみ運行されているハートランドフェリーによる稚内=コルサコフ航路の稚内だけでなく北海道全体にとっての重要性について説明した。右航路は、国境観光というだけでなく、フェリーを利用した経済交流のツールともなっており、2015年を最後に航路廃止の意向が示されていることに遺憾の意が表され、道庁を巻き込んで航路維持を訴えていくべきだと主張した。そして、国境を挟む地域と地域を「広域観光連携」という手法でつなぎ、「国境観光」という統一イメージやブランド化、共通するツールの共同開発などの必要性を力説した。その中で、独バルトキルヒでの「ゲストカード」の試みなどが紹介された。このカードを購入することで様々なサービスを割引きで受けられるといい、このような共通のツールを日本の境界自治体が共同で開発・導入すること可能性を示した。
R0014886.JPG 第二部は、「日本の国境環境政策を紡ぐ―海岸漂着ごみ対策を中心に―」と題し、2名による報告がなされた。大城正明(NPO法人 南の島々(ふるさと)守り隊)は、西表島の北に位置する小島、鳩間島での漂流発泡スチロールごみのスチレン油への精製についての社会実験の成果について報告をした。現在では、西表島で家庭ごみの中の発泡スチロールを集めて上原港から鳩間島まで運び、スチレン油に精製する広域社会実験も行われているという。新たな島のエネルギー源として期待されているが、NPOや自治体だけでの取り組みには限界があり、グリーンニューディール基金など財政的支援措置の継続の必要性が訴えられた。次に、前述の小島和美・対馬市役所課長が登壇し、平成21年度までは不十分だった海洋ごみ処理に関する国の補助金が、平成22年度以降、グリーンニューディール基金により大幅に増額され、それに伴い、海洋ごみの処理量も大幅に増えたという現状について説明があった。現在、対馬に漂着する海洋ごみの半分は韓国起源で、次が中国起源だという。しかし、岩がちの地形から陸域から海岸に到達して回収できるごみの量は多くなく、過疎化の進展によるマンパワー不足、ごみの量の膨大さ、分別の困難さ、海洋ごみは塩分を含むため処理の難しさなどが指摘された。また、大型焼却施設や最終処分場が島内になく、輸送コストが大きくかさむことが最も大きな問題であるとの紹介がなされ、国の責任でのこれら処理施設の建設の必要性が訴えられた。また、「日韓ビーチクリーンアップ事業」や「日韓海岸清掃フェスタ」の開催など、ごみの出処である韓国をインボルブする努力が既に行われているとのことである。対馬市は、海洋ごみ問題は恒久的な課題であり、行政・市民一体となって取り組んでゆくとのことである。
 今回のセミナーで、国境観光の発展と国内での定着に向けて着々と歩が進められている様子が分かった一方で、海洋漂着ゴミ問題については対策に一定の進展がみられつつも、その限界についても詳らかになった。将来的には、海洋ごみ問題の専門家や国レベルの実務家を交えて、日本のゲートウェイたる国境離島から越境海洋ごみ対策のモデルケースを構築するような取り組みの必要性を感じた。
 セミナー後の懇親会では、西表島祖納(そのう)集落の方々による、手作りの島料理と郷土芸能によりもてなされた。また、翌日の西表島巡検を含め、大原港から移動するバス車内では、竹富町役場の勝連松一・企画財政課長より、西表島の歴史と現状、各集落の特長などについてたいへん丁寧なご説明をいただいた。そして、企画財政課の小濱啓由さんにはセミナー組織とロジ統括の労をお取りいただいた。初めて訪れて驚いたのは、西表島や竹富島を含め、観光地化された島々はものすごく元気なことである。今後の竹富町の発展を心より祈念させていただくと共に、今回のJIBSNセミナー成功に向けてご尽力いただいた竹富町の皆さまに心から感謝の言葉を申し上げたい。(文責:地田 徹朗)
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